048 SO SWEET |
寝返りをうとうとして、背中から抱き取られているのに気がついた。 中嶋さん……。また俺のベッドに入ってきたんだ。 なんとか同じ大学にすべりこんで、ふたりで暮らし始めてから、もう1ヶ月近くになった。だけど司法試験に大学2年で合格しちゃった中嶋さんは勉強が忙しくて、いつも一時、二時まで机に向かっている。そんなときは邪魔をしないように、先に自分の部屋で寝るんだけど。気がつくとこうして中嶋さんが一緒に寝ているんだ。 俺、こういうのがすごく好きだ。 激しく抱いてくれる中嶋さんももちろん好きなんだけど、そればっかりだとなんだか「身体だけの関係」みたいな気がして。だから初めて中嶋さんがこうやって寝ているのに気がついたとき、俺は自分と中嶋さんが本物になれたって思って、すごくうれしかった。そして心の底から温かい気持ちになれた。いうと鼻で笑うから、中嶋さんにはいってないけど。 中嶋さんを起こさないように、そうっと寝返りをうつ。中嶋さんの匂いが胸一杯に広がった。 ああ。俺、中嶋さんと一緒にいるんだなあ……。 残念ながら俺も二年の間に成長してしまって、出会った頃みたいに、中嶋さんの腕の中にすっぽりっていう訳にはいかなくなってしまったけど。 でもこうやって、中嶋さんの胸に顔をうずめて、この暖かくて気持ちのいい場所にいられることの幸せをかみしめることはできる。 中嶋さん。俺、幸せです。 与えてもらうばっかりで、ほとんど何の役にも立っていない俺だけど。こうして抱いてくれてる、ってことは、俺、ここにいていいってことですよね? あ……っ、と。中嶋さんの腕に力が入って……。思いっきり抱き寄せられた。規則正しく動く胸がはっきりと頬に感じられる。よかった。起こしちゃったかと思った。ほっと息を吐いて、俺もそろそろと伸ばした腕で、中嶋さんを抱いてみる。 聞こえたのかな。俺の心の声が。それで抱き寄せてくれたのだったらうれしいな。 中嶋さんと俺。甘い恋人同士にはなれないって思ってたけど、そんなことない。今、もう十分すぎるくらいに甘いよ。こうやってどこよりも安心できる場所で眠りにつけるなら。俺はもう何もいらない。 だから。これだけいわせて。恥ずかしくて起きてるときにはいえないから。今のうちに、一言だけ。 「ありがとう。……英明、さん」 ―― SO SWEET , SWEET TIMES ―― |
いずみんから一言。 先日、茶道の点初式(初釜といっていいのは裏千家では宗家のみなのです)で、今から?年後に 中嶋と啓太が死ぬという話を、それも2パターンも思いついてしまい、思わず涙ぐんで隣にいたお嬢 ちゃんに不審がられてしまいました〃 これはいってみればその反動。思いっきり幸せな啓太くんを書いてみました。 このふたり、実はパジャマを分け合って着ている、って思ってるんですが(笑)。 どう思います? |