094 ENDLESS




 あ……、っと。ごめんなさい。起こしてしまいましたか。僕の身体、冷たかったですね。
 今日はすごく寒いんですよ。ちょっとベランダに出てみたら、空気が凍りついているようでした。
 風はないのに冷え込んでいて。外はたぶん氷点下です。
 石川の家ならともかく、ここは温かい土地なのにね。
 こんな寒さははじめてですよ。まるで氷河期に逆戻りしたみたい。
 池なんて凍ってしまってるかもしれませんね。

 でもね、伊藤くん。寒さって、神様が恋人たちにくださったプレゼントだと思いませんか?
 こうやってお互いを抱きしめあって、温めあって、そっとすごせと言ってくれてるんですよ。
 だから……。ねえ、伊藤くん。
 今日はこうしてベッドの中ですごしませんか?
 ただそっと抱き合って。ときどきおしゃべりして。
 そうだ。部屋の暖房も切ってしまいましょう。
 その方が寒さを感じられますから。
 そうしたら伊藤くんの温もりを、もっともっと感じられますから。
 動かないなら、そんなにお腹もすかないでしょう?
 だったら夕方まで。いっそ夜まで。できれば明日の朝まで。
 こうしていませんか。
 ことばで伝えられないなんて、いくらでもあります。
 でもこんな時間を過ごせたら、そのうちのひとつでもふたつでも伝わるような気がするから。

 石川の家では大嫌いだった寒さが、ここでは神の恵みとして受け入れられる。
 不思議ですね。
 これはきっと、伊藤くんに会えたからだと思います。
 誰かを愛したら、
 その人のことを考えるだけで、体の中が暖かくなってくるんです。
 寒さなんて気にならなくなるくらいに。
 そんなことさえ僕は知らなかった。
 伊藤くんに出会えなければ、きっと知らずに死んでいたでしょう。
 それがどんな不幸なことか気づきもせずに。

 ああ……。伊藤くんが温かい。
 伊藤くんが全身で温めようとしてくれているのがうれしい。
 伊藤くんがどんなに僕を思ってくれているか。
 ちゃんと。そう、ちゃんと伝わってますよ。
 だから今日は。
 こうして、ちょっと伝えあって。
 ちょっと分かりあって。
 ちょっと眠って。
 ちょっとおしゃべりして。
 それをエンドレスで繰り返すんです。
 とても幸せな1日になると思いませんか?
 今日はお互いの温かさに感謝する日にしましょう。

 ―― ありがとう、伊藤くん。
             僕の傍にいてくれて ----






いずみんから一言。

『伊藤くんに会えたからだと思います』
うちのパソコンと来たら、これを
『伊藤くんに合えた身体と思います』
と変換してくれました。
しばしモニタを凝視してしまいました(苦笑)。

ところでこの話。
元ネタは『ウィンターヘヴン』 の 『冬にまつわる20の質問!』から。
『冬を乗り切るためのアドバイス』として、七条クンは
『寒いなあと思いながら、ベッドの中にいるのが好きなんですよね。
ですから僕と一緒にベッドに入りませんか?』
と、答えてるんですね。
今年の冬は思いっきり寒かったので、それを思い出して書いてみました。
で、このコメントを書くのにウィンターヘヴンを読んでみたら、
『冬の必需品は?』という別の質問に『電気毛布』とありました。
成り立たへんやん(汗)と、思いつつ。



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