ヴァレンタイン・キス






寒風吹きすさぶ2月初めの夕方。
恒例となるつつある毎日のお散歩をする中嶋と啓太の姿を商店街の人々は
ほほえましい思いで見ていた。
景色を真っ赤に染める太陽は、仲良く手を繋いでゆっくり歩く二人の影を長くする。
時折啓太が隣に視線を上げると中嶋は必ず気がついて小さな笑みを口元に浮かべてくれる、
それが啓太をポカポカと暖かくしてくれ、幸せな気持ちにさせてくれるのだ。

商店街の中ほどまで歩くと前方に洋菓子店が見えてきた。
ふいに立ち止まった啓太に気がつき中嶋も足を止める。
一心に洋菓子店を見る啓太。何か欲しいものでもあるのかと思った中嶋が声をかけると小さな手で
あるものを指差す。
「ヒデ君、あれなあに?」
中嶋が視線を向けるとそこには洋菓子店のウインドゥにポップと共に飾られたハート型のチョコケーキ。
「ああ、二月だからヴァレンタインだろう」
「ばれん・・・?」
上手くいえない啓太が首を傾げるのをいとおしそうに眺めた中嶋は小さな体を抱き上げ視線を合わせると
「2月14日は何の日だ?」
「ヒデ君にちゅーする日」
律儀に中嶋が教えた通りのことを言う啓太に苦笑しながら柔らかい頬に音を立ててキスをする。
「そうだな、だがそれは啓太だけでほかの人は好きな人にプレゼントやチョコを上げるんだ」
「ふーん、そっか・・・」
納得しつつも離れない啓太の視線。
中嶋はそんな啓太を抱いたまま店に足を向ける。
「だから俺から啓太に買う分には構わないだろう?」
「ヒデ君!」
喜びを体で表現する啓太に中嶋も満足そうに笑うのだった。


「ありがとうございました!」
アルバイト店員の明るい声に送られて店を後にした二人は、再び夕焼けの中ゆっくりとした足取りで
歩いていく。
「ちなみに啓太、2月3日は何の日か知ってるか?」
急に聞かれた啓太は首をかしげ少し考えた後元気に言った。
「お豆食べる日!」
相変わらず食べることが念頭にある啓太の将来を心配しつつ、
「そうだな、それもあるが・・・メインは丹羽に豆を投げることだぞ」
「哲くんに?」
「ああ、丹羽に豆を投げて悪いものを家から追い出すんだ」
「そっかあ、わかった!啓太頑張る!」
「俺も一緒にやってやるからな」
癖のある髪を大きな手で撫でられる啓太はもちろん中嶋の嘘は気が付かない。
ただ大好きなヒデ君と一緒にイベントを行えることが嬉しくて張り切って豆を投げるだろう。


丹羽の運命やいかに・・・




2006年2月5日
え〜っと丹羽落ちです。
ほのぼのしてますか?




                               〜 あなたのななめ45° ブー子さま 〜



いずみんから一言。

あー。ラプラプ。可愛いなあ(うっとり)。
ちびと一緒だったら、ひでくんだってチョコレートのケーキを食べるに違いない。
そりゃまあ、ほんのちょっとでしょうけど。
それにしても王様は不憫だな……。


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