１３年お正月　side Hide

（鈴菱和希プライベート新年飲み会）

西園寺「……」
丹羽「……」
七条「……」
和希「……」
篠宮「……今年もまたため息ではじまるのか？」
成瀬「本当に。僕たちの方がため息をつきたいくらいですよ」
篠宮「毎年毎年、まるで正月の恒例行事じゃないか」
成瀬「全然楽しくもおめでたくもないですけどね」
篠宮「で？今年は何故なんだ？」
成瀬「今日のこの日のため息といえば、アレに決まっているでしょう(苦笑)」
篠宮「年賀状か……。しかし今年はただ微笑ましいだけの図柄だったはずだが」
岩井「俺にも……そう見えたが……」
成瀬「ところが、今年は最低最悪な図柄だったようですよ」
岩井「……？手袋をはめた手でヘビを作って、それをふたりでハート型にくっつけたあの図柄の
　　　　どこが最悪なのだろうか……」
篠宮「まぁ……。伊藤はともかく中嶋の腕がごつすぎて、ヘビとかハートとかいうよりはむしろフラ
　　　　ミンゴみたいではあったが」
成瀬「僕にはそれが、ご愛嬌に見えたんですけどね……」

西園寺「……はぁ…」
七条「……(凶悪に無言・笑)……」
丹羽「……がるるる……」
和希「王様、唸っても吠えても、見てしまったものはもう知らなかった頃の自分に戻れないんです」
七条「そうですよ。僕たちは伊藤くんを知ってしまった。もう知らなかったことにはできません。なの
　　　　にその伊藤くんがあんな……(さめざめ)」
西園寺「今までも中嶋からの年賀状(敢えて『啓太から』とは言わない・笑)は、わたしたちへの挑戦
　　　　だと思ってきたが」
丹羽「ああ。今年はまるで年賀状で顔をはたかれた気分だぜ」
七条「しかも今年はやり方が巧妙になっています」
西園寺「一見しただけでは微笑ましいだけの図柄にしか見えないなんて、手がこんでいる」
七条「伊藤くんひとりでやってくれてたら、本当に微笑ましかったんですよ？でも」
西園寺「まったく。中嶋が絡むとロクなことがない」
和希「俺はあんな年賀状が見たくて中嶋に啓太を託した訳じゃない」
七条「おや？それでは今年の年賀状に使用された白ヘビの手袋は理事長の作品ではないと？」
和希「当たり前でしょう？　あれは布製ですよ。おそらくはウェディングドレス用のロンググローブを
　　　　加工したんだと思います」
丹羽「あぁ……。そういや肘くらいまであったな」
和希「俺が作ったのはマフラーですよ。ロングにして中嶋とふたりで巻かれても嫌だと思ったんで、
　　　　長さは普通にしたんですけど」
西園寺「まさかと思うが、遠藤。ヘビのマフラーじゃないだろうな？」
和希「もちろんヘビですけど？」
丹羽「おいおい。首にヘビが巻き付くのか(汗)」
七条「なるほど。世界を代表する企業の経営をしようと思ったら、我々と同じ感覚では駄目だという
　　　　ことなんですね」
和希「変ですか？白ヘビのマフラー。ちゃんと口の中は淡いピンクにして、舌もつけたんですよ？」
丹羽「いや。変なのはきっとマフラーじゃなくて、それを変と思わないおまえの方だと思う……」
和希「……首にリボン結んで可愛いのに……(ぶつぶつ)」
成瀬「そのリボンはちゃんと編みこみで作ったんだよね」
丹羽「見てたんなら止めてやれや」
成瀬「でも僕、和希至上主義だから(爽笑)」
西園寺「その爽やかな笑いが、何故か臣の黒い笑いと重なるな」
篠宮「おい成瀬。目的を忘れるな」
成瀬「あ、そうでした」
和希「どうかしましたか？」
成瀬「啓太たちがまだ来てないんだよ」
篠宮「もう３０分も遅れているんだ。中嶋は遅刻する男じゃない」← いい加減うんざりしてたので
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　強引に話題を変えた(笑)
七条「……そこでそんな名前が出るのは少々不愉快です」
西園寺「そのくらい聞き流せ。篠宮は中嶋が啓太の専属運転手だと言っているんだ」
成瀬「……(汗)……」
岩井「海野先生もまだだ……」
和希「たしかにおかしいですね」
西園寺「臣、まさか……」
七条「(肩をすくめて)別に何もしていませんよ？僕はただほんのちょっと、人でなしさんのいないと
　　　　ころで話をしたかっただけなので」
丹羽「……おまえの場合、前例ありまくりだからなあ」
七条「これは心外ですね。伊藤くんならもうそろそろ来る頃だと思いますが」

　　　ぷるるるるんるんぷるるるる～ん

成瀬「電話だよ、和希」
和希「あ、有難うございます。啓太だな」
成瀬「遅れてる連絡かな」
和希「そうかも。……もしもし？　啓太、どうかし……うあっ！」
中嶋『遠藤！　貴様どういうつもりだ！』
丹羽「うひゃ～。何か怒ってんぜ。ここまで聞こえる」
西園寺「啓太がらみだな、あの怒鳴り声は」
篠宮「うむ。伊藤の携帯を使っているあたりからも察せられる」
岩井「しかし何を……」
和希「ち、ちょっと待……」
中嶋『ほう？　待てと言うか。ならこれを聞いてみろ』
和希「？」
啓太『（やだ！　も絶対にやだーーっ(泣)）』
中嶋『（もう大丈夫だと言っただろう。ほら、丹羽も篠宮も待ってるぞ）』
啓太『（だめっ。やなものはや！　怖いものは怖いんですっ！）』
和希「……啓太？どうした？　何が怖いんだ？」
西園寺「啓太は何を言ってるんだ？」
和希「わかりません。ただ『怖い、嫌だ』の繰り返しで……(困惑)」
七条「…………」
中嶋『(じゃあ帰るぞ。早くクルマに乗れ)』
啓太『(クルマに着く途中にもいたらどうするんです～！)』
中嶋『（新年会には行きたくない。帰ろうとすると動くのが怖い。どうしたいんだ）』
啓太『(そんなこと言ったってーっ（号泣）)』
七条「…………」
和希「啓太？　おい、啓太！」
丹羽「奴らの現在地は分かるか？」
西園寺「どうかな。おそらくこの近辺だとは思うが」
和希「何が怖いんだ？　お兄ちゃんに言ってみろ」
啓太『（え？　何？　和希がいるの？）』
中嶋『(そうだ。出るか？)』
啓太『(出る。貸してください！)……もしもし和希？』
和希「うん。どうしたんだ？　無事か？」
啓太『あのさ、俺。長いのも太いのも鎌首もちあげてるのも、大っ嫌いだからなっ！』
和希「……はい？……」
成瀬「な、なんかいきなり怒られちゃったね(汗)」
岩井「……長い……？」
西園寺「太い？」
丹羽「鎌首もたげ……ぶっ！」
成瀬「今な～にか想像しちゃった？(苦笑)」
篠宮「何を想像したか知らんが、イケナイものなら的外れだ」
丹羽「あ、いや。その……(汗)」
篠宮「そういうモノなら伊藤は見慣れているだろうが」
成瀬「なにしろ相手が中嶋さんだものね(苦笑)」
丹羽「……(ぶっ！)……」
岩井「……してたな……」
西園寺「ああ」
七条「……」
啓太『あんなのがいるなんて聞いてなかったからなっ！』
和希「け」
啓太『(ガシャン！……ツーツーツー……)』
和希「啓太！いるって何が！」
西園寺「おい。丹羽をいじっている場合じゃない」
和希「啓太！　啓太！！」

　ぴんぽん。ぴん、ぽ～ん

丹羽「ったく誰だよ。取り込み中に」
篠宮「海野先生だろう」
成瀬「いけない。すっかり忘れてた(汗)」
丹羽「遅刻常習ったって、ちょっと遅かったからな」
篠宮「中嶋と一緒に来たみたいなタイミングだな」
岩井「そう言われれば……」
七条「……」
西園寺「……臣？　どうかし……」
成瀬「うあーっ！」
丹羽「どうした、成瀬っ！」
成瀬「あ、あの……」
和希「テロ？　すぐに特殊部隊をっ！」
西園寺「状況確認が先だ！」
和希「派遣要請が先ですっ。到着までに３分半、展開するのに１分半もかかるんですよっ。その間
　　　　に成瀬さんに何かあったらどうするんですっ！」
丹羽「３分半で来るのかよ（汗）」
篠宮「権力の濫用はやめておけ。本当のテロの時に来てくれなくなるぞ」
和希「じゃあどうしろと言うんです！」
成瀬「ダメです、海野先生っ。そっちは……」
岩井「……海野先生？」
海野「みんなごめんね～。遅くなっちゃった」
西園寺「な、なんだ。アレは」
七条「……(汗)」
丹羽「う、海野ちゃん。その首に巻いてるのは……」
海野「え～。これ～？」
和希「何だろう。俺には大蛇に見える。仕事のしすぎか」
海野「アミメニシキヘビだよ。長さは５～６メートルってとこかなぁ。どこの生まれか分からないから
　　　　正確なことは言えないけど、もうちょっと長くなると思うよ？」
西園寺「先生。長さも長さですが、そんなもの首に巻いて重くありませんか」
海野「う～ん。でもまだ１００キロはないみたいだからねぇ」
丹羽「ひゃく……(汗)」
海野「アナコンダと違って、やっぱりニシキヘビはスリムなんだね(にこやか～)」
和希「いや！問題はそこじゃないでしょう！」
西園寺「はっ！そうだ。わたしとしたことが、ついニシキヘビのインパクトに惑わされていた」
和希「海野先生！そのヘビは何なんですか！何でこんなとこに連れて来るんです！」
海野「エレベーターにいたからだよ？」←あっさり(笑)
和希「エレベーター、って……。まさかここの？……(汗)」
海野「僕のクルマ車検に出してて乗れないから、中嶋くんたちに便乗させてもらったんだ。それで
　　　　駐車場から上がろうとしたらこの子がいて……。伊藤くんは怖がっちゃうし、この子はこの子
　　　　で弱ってしまってるし。それで僕だけ先にこの子を連れて上がって来た、という訳」
丹羽「た、確かに太くて長くて鎌首をもたげてるな(汗)」
海野「ケースごとだと重くて持てなかったから、この子だけ出して連れて来ちゃった」
成瀬「き、来ちゃった、って(汗)。危険じゃないですか(滝汗)」
海野「うーん。さっきも言ったけど弱ってるんだよ。ニシキヘビにとって今日の寒さは過酷すぎる。
　　　　飼うならちゃんと部屋の中で、温度管理もしてあげないといけないよ。日本より暖かい地域
　　　　の生き物だからね」
和希「いえ、飼いませんから。誰だ！そんなモンひとんちのエレベーターに置いたのはっ(怒)」
七条「……」
西園寺「……臣？さっきから気になってたんだが……。ずいぶん静かだな」
七条「僕は本来、物静かな人間ですから(筋肉笑)」
西園寺「何か企んでいる時に似ているが？」
七条「それは郁。邪推というものです」
成瀬「でも毎年、啓太と中嶋さんにちょっかいは出してるよね？」
篠宮「うむ。疑うつもりも糾弾するつもりもないが、ヘビを置いたのは七条ではないのか？ないなら
　　　　はっきり否定してくれ」
七条「……ふっ。計画は完璧だったはずなのに、どこから綻びてしまったんでしょう」
和希「あんた何の怨みがあって(泣))」
七条「もちろん人でなしさんへの嫌がらせですよ」
和希「うち専用のエレベーターにヘビ置いて、それのどこが中嶋さんへの嫌がらせ何ですかっ」
丹羽「どうせ中嶋がヘビに平気なとこでも見せて、啓太に『そんな中嶋さんが信じられなくなった』と
　　　　でも言わせるつもりだったんじゃないのか？」
七条「……(筋肉笑)……」
篠宮「つもりだったようだな(タメイキ)」
西園寺「それで啓太が帰ってしまったら意味がないだろう(タメイキ)」
和希「溺れるような策をたてないでくださいよ」
成瀬「久しぶりに啓太に会えると思ってたのにね」
丹羽「いらんことしやがってよ」
岩井「啓太の顔を……見たかったんだが……」
七条「……どうやら形勢不利になってきたようですね。伊藤くんも来ないようだし、ここで失礼すると
　　　　しましょうか」
丹羽「誰の所為だよ」
七条「お詫びにあのヘビは置いていきましょう(爽笑)」
和希「い・り・ま・せ・ん！　帰るんならヘビを連れて帰ってください。あんなのがいたら啓太がよりつ
　　　　かなくなる」
七条「それは困ります。だって僕はあんなヘビを飼う許可をもらってませんから」
和希「許可？」
篠宮「そう言えば危険な動物を飼うには許可が要ったな」
和希「……待てよ。年明けすぐの会合で都知事に会ったとき、『鈴菱さんは多彩な趣味をお持ちな
　　　　んですな』って言われたんだよ。今の今まで編物のことだと思ってたんだけど……（冷汗）」
七条「ええ。特定生物飼育許可から購入まで、すべてにおいて『鈴菱和希』の名前でやっておきま
　　　　したよ(にっこり)」
西園寺「現金決済だとクレジットカードも必要ないからな(タメイキ)」
和希「あああ……！　俺がヘビ好きに思われてるなんて……！」
丹羽「あ～。そりゃ痛いな」
篠宮「企業イメージが悪くならなければいいんだが」
西園寺「心配するな。株価までは下がらん」
和希「俺のビジネスキャリアが～っ(悲鳴)」
七条「では。ヘビをよろしくお願いしますよ？」
和希「待て！手ぶらで帰るな、七条～っ！」
丹羽「ま、まぁ……。俺と篠宮でケース回収してきてやるから。あとは動物園にでも寄付しろや」
成瀬「うん。もうほかに方法はないよ。そうしよう？」
丹羽「ヘビ年だけにヘビーな幕開け、なんつってな(笑)」

だがそんな丹羽のオヤジなギャグに笑う気力は、もう誰にも残っていなかったのだった……(汗)。

オマケ
成瀬「行き先が決まるまでは海野先生に面倒みてもらう方がいいね」
和希「そうですね。伝手もあるでしょうし」
丹羽「ところで海野ちゃんは？ずいぶん静かだ」
篠宮「卓人もいない。何処へ……」
西園寺「いや。何か声が聞こえるぞ？」
成瀬「バスルームからだ」
岩井『……海野先生、今度は尻尾の方から模様を見せてください……』
海野『うん。……こんな感じでいい？』
岩井『……ええ……』
海野『ここは暖かくていいね。アミちゃんもすっかり元気になったし』
篠宮「アミちゃん……？」
西園寺「アミメニシキヘビだからか……？」
丹羽「しかも暖かいって」
成瀬「浴室暖房をいれたんだ（汗）」
和希「勝手にうちの風呂場を動物園にするなよ……（タメイキ）。業者を呼んで掃除させるまでホテ
　　　　ル住まいにしなきゃ……（諦涙）」
海野『あは。あはははは。アミちゃんは甘えん坊さんだなあ。あはははは』
和希・成瀬・西園寺・丹羽・篠宮「（海野先生最強……（汗））」