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思い違い(啓太サイド)





「伊藤くん?お願いがあります。」
 明日は、土曜日でお休み。会計部の仕事も急ぎのものはないから、お休みなので今晩はゆっくりとすごしませんか?消灯時間過ぎにお部屋にうかがってもいいですか?・・・そういうメールが携帯に届いたのは、部屋で夕食を和希と食べてる時だった。
「・・あの?」
 お待ちしてます。の返事を出して、俺が溜息ついたのを、和希は不思議そうにみていた。七条臣さん。それがメールの差出人で、俺の恋人だって、当然和希は気が付いていたはずだから、なんで溜息なの?という顔だった。
「いいですか?」
 そうして、篠宮さんの点呼が終わり、ドキドキして、待っていた俺に、優しい笑顔を浮かべ、七条さん、いや、臣さんが部屋に現れて、ドアを閉めるのももどかしく、俺を抱き締めた後そう言った。
「chu。」
 俺が腕の中で、首を傾げたままでいると、突然今度は、唇をふさがれた。
「???」
 お願い・・なんだろう。
 そう考えながら、それでも久しぶりの口付けに、俺の脳みそは簡単に溶け始め、そうして甘い舌の動きに、ひざに力が入らなくなってしまった。
「・・・・ん・・・。」
 カクン、身体を支えられなくなった俺は、臣さんに体重をあずけてしまう。
「・・・ベッドに行きましょうか?」
「・・・・。」
 恥ずかしくて、返事も出来ない。
「伊藤君?」
 逢ったばかりで、キスされただけで、俺はこんなに情けなく反応してしまう。
「ベッド嫌ですか?」
 黙って首を振る。
「・・・歩けません。」
 だまったままでいて、臣さんを拒絶してると、思われるのが嫌で、俺は、恥ずかしい言葉を口にする。
「キスしただけですよ?」
 なんとなく感情のこもってないような、口調に、俺は身体をビクンとすくませ、目をぎゅっとつぶる。
 呆れられてしまった?俺があんまりにも・・・・。
「臣さん・・・。」
 でも・・・久しぶりに、大好きな恋人の腕の中で、甘い口付けを受けて、それで何も感じないなんて、俺には無理だよ。臣さん・・・わかって。
「くす、伊藤君は、感じやすいですね。」
 その笑いは、肯定の笑いなんだろうか?そんな俺を受け入れる・・そんな笑い?
 それとも軽蔑の笑いなんだろうか?
「ごめんなさい。俺、俺・・・。」
 恐くて顔が見られない。だって、だって、ずっと・・。
「久しぶりでしたからね、伊藤君の身体が、早く欲しがっても、ちっとも変じゃありませんよ。」
 肯定?そうとっていい?
「臣さん。」
「さ、」
 不意に、身体が宙に浮いてしまう。
「え?」
 抱っこされ、ベッドに静かに下ろされる。
「・・・伊藤君、お願いがあります。」
「はい。」
 何だって聞く。俺。嫌われたくない。
「君のその可愛いお口で、僕のをしゃぶってくれませんか?」
「え?」
 臣さん、今なんて言ったんだろう?
「僕のこれです。」
 俺の右手をつかみ、そっと自分の前に持ってくると、なでさせる。
「え・・・。」
 それって・・・。
「嫌ですか?」
「・・・。」
 無言で首を横に振る。
「お願いできますか?」
「はい。」
 静かな口調に、俺はそれだけをやっと言葉にして、返事をかえす。
「・・・。」
 なんだか、力の旨く入らない身体を床に滑らせ、ベッドに向かって座り込む。
「・・・。」
 ベッドの端に座った臣さんは、足を広げ、俺をその間に入れてくれた。
「さ、伊藤君」
 その言葉に俺は、ゴクンとつばを飲み込んで。恐る恐る臣さんのズボンのファスナーを開いて、その大きなものを取りだした。
「・・・伊藤君始めてですか?」
「俺・・・臣さんが初めてです。それは、臣さんだって、知ってるはずです。なのに・・そんな聞き方は酷いです。」
「・・・すみません。でも君の口から、初めてだって聞きたかったんです。」
 何を疑っているのだろう。・・・俺の心なんだろうか。
 だとしたら、哀しすぎる。俺、凄く凄く好きなのに。
「初めてです。」
 心を隠し、俺は素直にそう返事をする。
「じゃ、僕が言うとおりにしてください。やり方わからないですよね。」
「はい。」
 どうしよう、だんだん哀しくなってきちゃったよ。俺、どうしよう。
「さ、お口をあけて、まず先端を・・。」
「・・・。」
 泣きそうだ、俺。
「・・・・。」
 それでも、大きく口を開け、そうして先端を口に含む。
「そう、そうやって、舌先で舐めてください。」
「・・・。」
 臣さんの・・・そう思うだけで、俺の中が熱くなる。たとえ、俺の心が、ものすごく哀しくなってても、熱くなってしまう。
 臣さんは、きっと気が付いてない。俺がどのくらい臣さんのこと、好きなのか、臣さんが居なきゃ駄目って思ってるのか。
「そう、上手ですよ。伊藤君。」
 哀しくてしかたない。褒められても、俺の体が、興奮に熱を持ってきていても、それでも、哀しくて仕方ない。
 臣さんが、名前を呼んでくれないから・・・。
「もっと奥までしゃぶって、咥えてください。」
「ん・・・・ううん・・・あ・・。」
 俺は夢中で愛しい人のものを味わっていた。
初めてで、きっと全然よくないのは、わかってる。だって、付き合いだして三ヶ月、俺は、こんな事させられた事がないんだから、今まで、臣さんは一度だって『して欲しい』って言った事が、なかったんだ。
 なのに、今日になって突然、そんな事を・・・。
「臣さん・・・・。」
 思い当たる事があって、俺は、口を離し、見上げる。
「・・・・。」
 顔を上げた一瞬だけ、臣さんの表情が違っていた。
「なんですか?」
 今は、笑顔だ、でも・・さっきは確かに違っていた。
 どうしてそんな顔してたの?凄く嫌そうな、辛そうな・・・。
「・・・まさか・・・。」
 言おうとしていた言葉とは、全く違う事を俺は、言葉にしようとしていた。
「臣さん、俺のこと、怒ってるの?」
「いいえ?どうしてそんな事をいうんですか?伊藤君。」
「・・・だって・・・ごめんなさい、なんでもないんです。」
 考えたくない。俺は再び、しゃぶるのに専念し始めた。
「・・・僕は、怒ってませんよ。伊藤君。・・・ん・・・そうです、もっと。」
 感じてるの?本当に?でも、なにも変化がない。
「伊藤君。」
 どうして、名前で呼んでくれないの?
いつだって、二人きりのときは、名前を呼んでくれた。啓太って。
臣さんは、西園寺さん以外の人間を呼ぶときは、全部苗字なんだ。○○クンとか、○○さんとか、敬称までちゃんとつけて、だから俺は、臣さんが、俺を名前で呼びたいって言ってくれた時、すごくうれしかったんだ。俺にも、名前で呼んでくださいって言ってくれて、本当にうれしかったんだ。
「伊藤くん。そう・・もっともっと・・・。」
 声だけが、感じてるように、かすれていく。だけど、俺がくわえてるものは、一向に反応を示さない。
「・・・。」
 哀しくて、哀しくて、俺は必死に舌をうごかしながら、涙を流していた。
『啓太』って臣さんに呼ばれるのは、いつだって特別な事だった。
 図書室で、周りの目を盗んで、キスするときみたいに、名前を呼ばれるたびにドキドキした。
 すごく優しい口調で、いつも臣さんは俺を呼ぶから、俺は、うれしくてその度に、すっごく笑顔で返事をしてた。それが面白いって、臣さんは、俺の名前を連呼して、遊んだりもしてた。
『啓太。』『はい、臣さん。』『啓太』『はい。』『けーいた』『はい。ふふ。』
何度呼ばれても、俺はうれしいから、その度に返事を返し、臣さんの名前を繰り返した。
「伊藤君?」
 泣いている俺に気が付いたんだろう。臣さんが不審そうに俺を呼んだ。
「どうして泣いてるんですか?ね、伊藤君。」
 行為を中断させられ、俺は臣さんのひざに抱っこされる。
「泣いてません。」
 言えない。名前を呼んでもらえないのが淋しいなんて。臣さんを怒らせてるかもしれないから、恐くて泣いてるなんて。言えない。
「伊藤君。泣かないで。そんなに嫌でした?辛かったですか?」
 優しく、涙を舐めてくれながら、臣さんはそんな事を聞いてくるから、俺は無言で首をふる。
「・・・無理をさせてしまった?」
「違います。」
 俺は、必死にいう。
「無理なんかじゃありません。俺、俺・・・ずっとしたいって・・。」
 恥ずかしい言葉。だけどそれは本心だった。
「え?」
「臣さん、怒ってるの?それとも俺が嫌いになった?」
「怒ってませんよ。嫌いになってもいませんよ。」
「・・・・じゃあ、どうして名前で呼んでくれないんですか?」
 言うつもりのなかった言葉を口にする。
 だってそうしないと、臣さんは、俺がするのが嫌なんだって誤解をしたままだ。俺が悲しい理由はそんなんじゃないのに。
「・・え?」
「臣さん、俺のことが大好きだから、名前で呼びたいって、前にそう言ってくれたのに、二人っきりの時は、名前で呼びたいって。俺凄くうれしかったのに。なのに、どうして?どうして・・俺のこと怒ってるなら、謝るから、俺のこと、嫌いにならないで。」
 臣さんに、もういらないって言われたら、俺悲しくて死んじゃうよ。
 必死に、臣さんのシャツにしがみついて、俺は許しを請う。
「・・・・。」
「・・・・すみません。少し意地悪がすぎました。」
「意地悪?」
「ええ、一週間もほって置かれて、淋しかったので。」
「・・・それで?」
「ええ、啓太は僕がいなくても、平気なのかなって。だから、意地悪。」
「・・・・・ひどいです。」
「ええ、酷いですね。怒りましたか?」
 でも、その原因は俺のせいだ。だったら、意地悪されても文句も言えない。
「でも、逢えない原因は、俺のほうだったし、だから、もういいです。」
「・・・ふふ、啓太。」
「はい。臣さん。・・・臣さん。良かった。」
 俺は、やっと笑う事ができた。そして、見た目よりもずっとしっかりと筋肉のついた背中に腕をまわす。
「臣さん・・・。」
「ね、啓太?さっきのは本当ですか?」
「え?」
「したかったって。」
「・・・・・・本当です。」
突然言われて、俺は、耳まで赤くなる。
「どうして?」
 不思議そうに聞かれて、俺は、もう穴があったら入りたい、なくてもいますぐ掘って入りたいって気持ちになる。
「聞かないでください。恥ずかしいじゃないですか。」
「だって・・。」
「・・・気持ちよくなって欲しかったんです。臣さんに。・・・それにそれに・・雑誌にだって・・・。」
「雑誌?」
 あ、しまった。
「雑誌って?何を見たんです?」
「・・・えっと、S○A・・です。週刊誌?」
「・・・随分エッチなのみてますね。」
「たまたま、コンビニで見つけて。それで・・・。」
 彼女にして欲しい、エッチな事50って書いてある表紙が目に付いたんだ。
「それで?」
「・・・・・。」
 それを、見たら、女の子とのセックスの、超エッチな事が、たくさん書いてあって、俺、なにも、そういうことした事なくて、だから悩んで・・・・。
「臣さんは優しいから、俺が、あんまりなれてないし、恥ずかしがるから、だから・・気を使ってたのかなって。書いてあること、なにも俺したことないし、臣さんがそういうことしてって、言った事もないし。だから、なんか落ち込んじゃって。俺・・・。」
「・・・・雑誌買ったのって、もしかして。土曜日?」
「・・・はい。」
 会計部の二人が、そろって学校の用事で出かけていて、俺は暇をもてあまし、一人で、町にでたんだ。そして、雑誌をなにげなく買って、寮に帰って読んで、そうして落ち込んだ。
「・・・じゃあ、もしかして、一週間忙しいからって言ってたのは?」
「嘘です。」
 レポートとか、課題はあったけど、でもそんなに、逢えないとかいうレベルの問題じゃなかった。
「なんだか、顔見るの辛くて。俺、雑誌にあるみたいに、ウザイ子なのかなって。そういう事考えてたら、悲しくなっちゃって。」
「ウザイ?」
「おまけで載ってたんです。彼女のここが嫌!!って項目。俺、凄く当てはまってて、だって、俺、すぐに泣くし、逢いたいって騒ぐし、仕事してる時まで、そばにくっついてるし。」
「それは、別に嫌な事じゃないですよ。泣かれるのは困りますけどね。」
「え?」
「キスして、慰めてさしあげたくなりますから。それに、啓太の泣き顔はとっても可愛らしくて。とても他の人に見せたくないので。出来たら、泣くのは僕の前だけにして欲しいですね。」
「・・(゜o゜//)」
 そんな言い方されたら、恥ずかしい。
「・・俺、考えるのむいてないみたいです。馬鹿だから。それに、俺、凄く我儘なんです。自分で言ったのに、忙しいから、放課後も、夜も逢えませんって言ったの、俺のほうなのに。」
「え?」
「なのに、本当に臣さんに逢えないと、なんだか、臣さんが俺の事避けてるような気分になっちゃって。だって、だって、メールも電話も・・・。」
「たしかに、してませんでしたね。」
「だから、なんか臣さん、俺のこと本当は必要ないのかなって。逢えないって言われたら、それだけで、気にもしないで、俺のことほって置けちゃうのかって。臣さんは何も悪くないのに、そんな風に思っちゃった。」
「啓太。」
「それで、臣さんが、楽しそうにしてるの見るのが辛くって、ご飯、和希に持ってきてもらったりして。」
「ふうん?理事長に?」
「はい。」
「詮索されませんでしたか?」
「されました。」
「なんて答えたんですか?」
「・・・最近、学生会に顔出してないから、中嶋さんとかに逢うと困るって。」
「ふうん?」
「和希・・それ聞いて苦笑いしてたし、本当の理由はたぶんわかってたのかもしれないけど。あいつは俺のお兄ちゃんだから。」
「お兄ちゃんねえ。」
「うん、お兄ちゃんなんです。だって、俺の悩みとかいつも親身になってくれて、でも、さすがに、今回の事は相談できなかったけど。」
「・・・相談。」
「・・・だって、臣さんとのエッチについて悩んでるなんて、さすがに・・。」
 言えない。でも、西園寺さんにはなんとなく話しちゃったけど。
「それ、誰にも言ってないですよね。」
「え?あ・・・西園寺さんには・・あの・・。」
「郁に?相談したんですか?」
「・・・さすがに、エッチなほうは聞けないので、あの・・ウザイって事については聞きました。・・その・・俺のこと、そう思ってるかなって。」
「僕が?」
「はい。」
「・・・・・で?郁はなんて答えたんです?」
「相談されてるのか、惚気を聞いてるのか、よく分からないけど。って。」
「それで?」
「・・気に入らないなら、そう言うだろうって。」
「・・そうですね。いいますよ僕ははっきりと。」
「本当に?」
「ええ。気分が悪いのは嫌ですし。それが本人の為に良くないなって思えば、はっきりとそういいます。たとえ恨まれてもね。」
「・・・だから、中嶋さんにいつもはっきり言ってるんですか?」
「・・・・くす。それは違います。嫌いなんですだから、言うんです。」
「でも、いつもとっても楽しそうですよ。・・・俺、嫌なん・・あ。」
「え?」
「ごめんなさい。俺。」
 言うつもりなかったのにぃ。俺馬鹿だ。
「啓太?」
「ごめんなさい。なんか、いつも二人が言い合いしてるの見てると、嫉妬しちゃうんです。だって、俺が隣にいようが関係なく、二人の世界になっちゃうし、なんか俺と話してるよりも、うれしそうなんだもん。」
 イキイキしてるっていうか、頭のいい人同士の会話だから、話してても、楽しいのかもって。二人が仲が悪いなんて、嘘なんじゃないかって。思う。
「うれしいなんて事、絶対ありませんから。」
「でも。」
「それは勘違いですよ。啓太。」
「でもぉ。」
「全く、あなたという人は、本当に面白い人ですね。」
 ぎゅっと抱き締めて、頬をすりよせてくれる。
「・・・。」
 ああ、安心する。この人の腕の中は、安心する。
「大好きです。」
「僕もですよ。だから、変な雑誌に惑わされて、僕を避けたりしないでくださいね。君に意味も無くさけられたら、僕は悲しみのあまり死んでしまう。」
「・・・臣さん。」
「僕はあなたに、気を使っていろんなことをさせなかったのではないのですよ。ただ、少しずつ、あなたに色々な事を教えていくのが楽しみで、ただ、それだけなんです。ふふ。」
「・・・じゃあ、なんで今日は?」
「・・・内緒です。」
「ずるい。」
「ふふ。愛してます。啓太。」
「・・・じゃあ、もう一回してもいいですか?」
「え?」
「あの・・・俺の・・口で。」
「お願いしてもいいんですか?」
「・・下手すぎて、気持ちよくないとは思うけど。」
「くす。気持ちよかったですよ?凄く。」
「でも。」
 さっき全然、反応がなかった。
「・・・?ああ。さっきは我慢してましたから。」
「我慢?」
「ええ、我慢。じゃないと、啓太って呼びそうだったから。」
 我慢してまで、俺に意地悪しなくてもいいと思うけど。・・・え?ああいうのって我慢できるものなのか?え?
「してくれますか?」
「はい。」
 するんと、床にすべり落ちると。今度は、ズボンを脱いで、俺を誘ってくれた。綺麗な白い足。綺麗に筋肉の付いた太ももは、すべすべしてて、触ると凄く気持ちがいいんだ。俺はついツルンと太ももを撫でてしまう。
「・・・・くすぐったいですよ。」
「だって・・。ペロ。」
 つい、いたずら心で、太ももの内側、足の付け根近くをなめてしまう。
「こーら。」
「ふふ、俺だけの特権です。」
 そう、女王様だって触れない。俺だけの特権。
「特権?」
「はい、恋人の特権。」
 そう思っていいですよね。臣さん。
「ふふ、そうですね。特権です。」
「じゃ、おじゃまします。」
 変な挨拶をしつつ。ぱくりと咥える。
「・・ん・・・・んん・・・。」
 さっきとは全然気分が違う。
「・・・・。」
 アイスキャンディを食べるみたいに、舌先で舐め上げて、そうして先端を吸う。舌先を尖らせ、先端をつついて、そして、舐める。
「ん・・・・啓太・・・。」
 だんだん、熱く熱を帯びてくるそれを含み、俺は、夢中でしゃぶりついていた。俺の大切な人。俺だけの美しい人。
「・・・・あ・・・啓太。」
 さっきとは、違う、臣さんの声。甘いような、切ないような、声に、俺は自分のほうが熱くなってきてしまう。ああ・・・俺・・・。
 臣さんの長い指が、俺の髪に絡んで、そしてじれるように、両手が俺の髪をかき乱している。感じてる?ねえ、臣さん。俺に感じてる?
「ん・・・んん・・・。」
 苦しくなって、しゃぶりながら、自分もズボンを脱いで、そうして、奉仕を続ける。じわじわと出てくる、物を舐め上げ、飲み込みながら、俺は、うっとりと、その行為を続けた。
「啓太。顔・・・見せて。」
「・・・・・む・・ん・・。」
 先端をしゃぶりながら、無理に顔を上げる。
「・・可愛いですよ。啓太。僕の・・・ああ・・・・。」
 さっきとは全然違う。臣さんの顔も違う。・・・俺は、恥ずかしいけど、それよりも、うれしくて、その口の中にダイレクトに伝わる反応に、夢中になった。
「ん・・・・はあ・・・・もう。駄目です。」
「・・・・・んん・・・・。」
「あなたを汚してしまう。離して。」
 無理に身体を離されて、俺は、おもちゃを取り上げられた子供のように、泣きたくなってしまう。
「・・・よくなかった?俺・・・。」
「いいえ、良すぎるから困るんです。君の顔を汚したりしたくないから。」
「いいんです。してください。」
 だって、俺はいつも、いつも臣さんの口ではててる。
「臣さんは、いつも俺の・・・」
「くす。啓太のは、蜂蜜みたいに甘いんです。綺麗なんです。でも僕のは駄目。」
「・・・俺にされるの・・・やっぱり嫌なんですか?」
「ちがいますよ。ちょっとした気持ちの問題なだけです。」
「・・・・変です、そんなの変。」
 そう言って、俺は、離れた身体にしがみつく。
「俺嫌です。俺に感じてください。」
 大きくて、今にも達しそうなそれを再び口に含む。
「啓太・・・あ・・・。」
 離れて欲しくなくて、腰にしがみつきながら、必死に舌を使う。
「けい・・・あ・・・。」
 タイミングを計って、両手を離し、根元に両手をそえる。
「ん・・・けい・・・あ。・・・・。」
 早く、早く・・・・逃げたりしないで。俺、がんばるから。
「啓・・・・・・・あああ・・・!!!」
「・・・・ん・・・ごく・・・・ごくん。」
 苦いような、いがらっぽいような、熱いものを飲み込んで、俺は、それでもそのまま口の中に、臣さんを含んでいた。
「啓太。」
 すごく、スキ。臣さんが好き。俺、大好き。
「啓太。ああ、あなたって人は。」
「・・・・・呆れちゃいました?」
 恐る恐る、顔を上げる。
「呆れません。・・・大好きですよ。」
 俺の身体を抱き上げてくれながら、そうやって臣さんは笑う。
「俺のほうが大好きです。」
「chu。」
「ふふ、臣さん。」
 うれしくって、しがみついてしまう。
「啓太。」
「ふふふ。おみさん。」
「啓太。大好き。」
 抱き締めてくれるから、俺は、自分自身を臣さんにくっつけてしまう。
「?」
「・・・臣さん・・俺・・・あの・・・。」
 早く俺も、臣さんのが欲しい。
「ふふ。エッチですね。」
「・・・だって。」
 一週間も禁欲生活してたんだよ?当然だよ。二日に一回はしてたのにさ。
「禁欲生活分、今晩は寝かせませんよ。」
 きらりと、アメジストの瞳が光る。
「・・・お休みだから、平気です。」
 恥ずかしいけど、言ってしまう。だって欲しくてたまらないんだ。
「ふふふ。啓太?」
「臣さん、大好き。」 
 そうして、俺の唇は再びふさがれた、幸せの夜の幕開けの合図だった。
 幸せだ・・・本当に。へへへ。
 
 臣さん、大好きです。
                            FIN


啓太君、悩みどころがちょっと違う気がしないでもないのですが・・。
まあ、幸せそうだから、いいのかなあ???





いずみんから一言

切ないように見せかけて、実は甘々のいちゃいちゃ。
しかもほぼ全編やりまくり。
最初に読ませて頂いたとき「やってくれるじゃねーか(笑)」と、
思ったことをよく覚えている。
西園寺さんじゃないけど、ホントにこれは単なる惚気でしたね。
みのりさま。どうもごちそうさまでした。


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