お洒落な彼 〜20のお題〜



 英明さんは格好良い。
 十代の頃から素敵だったけど、三十代になってもいまだに格好良いというか良すぎるくらいだって思う。
 背が高くって綺麗な顔してて(というか最近じゃちょっと渋みも出てきた気もしてるんだよね。へへへ)何を着ても似合うんだ。
 何を着てても格好良い。
 センスが良いんだよね。
 合わせる小物ひとつとっても、シンプルなのに味があるというか、粋というか。
 さりげなくお洒落なんだよなあ。
 だから困るって時もあるんだけどね。
 うん。かなりいつも困るんだよね。プレゼントを選ぶ時とか・・・・ほーんといつも悩むんだよね。
 この前もすっごく大変だったんだ。


「あ・・・、おはようございます。今日は寒いみたいですよ。」
「そうみたいだな。」
 テーブルについた英明さんの姿をチラチラ見ながら椅子に座る。
「卵焼きがちょっと焦げちゃったんです。」
 なぜかこれだけはちっとも上手くならない、焦げた卵焼きのお皿をテーブルに置きながら英明さんのシャツを見つめる。
「これがちょっとか?」
 笑う英明さんが着てるのはブルーのシャツ。
 先週の誕生日に俺がプレゼントした。
 何件もお店をはしごして、うろうろうろうろ探し回ってやっと見つけたプレゼント。
 一目見てこれって思ったんだ。
 手触りが良くて、落ち着いた感じのブルーを選んだ。
 普段あまり着ない色だけどきっと似合うって思ったんだ。
「じゃあ、少し?焦げました。」
「あまり変わらない気もするが・・・。」
 苦笑いしてる顔よりも、今日はシャツの方が気になってしまう。
 包装を開けた時は何も感想を言ってくれなかったんだよね。
 良いとか悪いとか。なんにも。
 だから、好みじゃなかったのかなって、気になってたんだけど聞けなかったんだ。
 何年も一緒に暮らしてるのに、まだ英明さんの好みとかそういうの分かってない気がする。
「どうした?」
「あの・・・そのシャツ・・。」
「ああ。」
 ああ。ってそれで感想終わり?やっぱり気にいってないのかな?
「悪くないな。」
 え?
「お前が選んだわりに。」
 あれ?合格?
「へへへ。良かったです。」
 なんだか嬉しい。
「服のセンスはともかく、卵焼きはいつになったら焦げなくなるんだろうな?」
 文句を言いながら英明さんは全部ちゃんと食べてくれる。
 なんだかんだ言いながら、いつも食べてくれるんだもん。優しいよね。
「今度こそ頑張ります。」
 家事ってあんまり得意じゃないんだけど。
 いまだに卵焼きなんて油断するとすぐに焦がしちゃうけど。
 それでも頑張ろうって思うのは英明さんの為なんだよね。
「シャツ・・着てくれて嬉しいです。ありがとうございます。」
 このシャツを着てるのを見るたび嬉しくなっちゃいそうだ。
 俺って英明さんの好みをやっと分かってきたのかなあ?

 それから半月後、英明さんの好み分かったてきたかも?なんて思ったのは俺の勘違いだったって気づくんだけどね。
 そういう勘違いってしちゃうもんだよね?

「クリスマスプレゼントどうしよー。」
 なんて言いながらいつものようにお店をはしごする。
 プレゼント選びは楽しいけど、やっぱりちょっと大変。





いずみんから一言


現在編集しているところまででは、これがいちばん時間軸の進んだ話である。
中嶋氏、きっといい男になってるんでしょうね。そして啓太くんは自覚がない
だけで、それなりに趣味のいい男になっているんだろう。
大人になった彼らの話を読みたかった。
駄目だね。まだないものねだりしてるよ。私……。

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