無題 1 〜拍手用ノートより〜





 ドアを開けばそこには大きなベッドがちゃんとあるというのに、その場所に辿り着くわずかな時間さえ惜しくて冷たい床の上で抱き合った。
 週末を二人だけで過ごすための部屋。
 愛しいものを独占する為の空間で、俺たちは愛し合う。
 ついばむようなキスをしながら服を脱がしあい、くすくすと共犯者の笑みを浮かべながら、互いの肌に触れ合う。
 レースのカーテン越しに月の光が差し込む夜。
 冷たい月の光を浴びながら、二人の体は熱くなる。

「啓太。‥愛してる。」

 年下の恋人は、俺の望むままに妖艶に腕の中で踊り、俺は恋人の熱い吐息を感じながら、幸福な時間に酔う。

「和希‥か‥かず‥好きだよ。好き‥。」

 うわごとみたいに繰り返す啓太の甘い声。

「す‥き‥。」

 言葉は重なる唇に消え、熱い肌は汗に濡れる。
 指を絡めてひとつになって、そうしてトロトロに溶けていく。
 トロトロにグズグズに溶けていく。



 冷たい月の光を浴びながら過ごす、二人だけの時間。


 今この世にあるのは、俺と啓太とそして月の光だけ。





いずみんから一言

うちのサイトでみのりさまのことを知ったとおっしゃる方から頂戴したおたよりに「つづられることばはまるで詩のように心地よく」とあった。
まさにそのものずばりといった作品。
みのりさまを好きだった方のほとんどが、これを読まれると「懐かしい」思いに駆られるのではないだろうか。
これから先。
みのりさまに会いたくなったら、最初に紐解くに違いない作品である。


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