目が赤い 〜20のお題〜 



「ねえ、和希ぃ?俺達友達で終わる可能性もあったのかな?」
 掠れた声で啓太が言った。
「え?」
「例えばの話。それぞれ別に好きな人がいるとか、どっちかの片思いとか。」
 例えばの話でも、そんな話はしないで欲しい。
「なんでそんな事言うの?」
 そんな話。なんで今言うんだろう?
「駄目?」
 啓太が俺を見つめながら首を傾げる。
 駄目って、駄目だろう。
 真夜中、今の今まで散々愛し合って、抱き合って毛布に包まってる状態でそんな事言われたら、泣きたくなるに決まってる。
「まさか、啓太そんな事考えながらしてたんじゃないよね?」
 恐る恐る聞いてみる。だったら俺むちゃくちゃ落ち込む。絶対立ち直れない。
「え〜?そんな余裕はないってば。」
 本当かなあ?怪しいもんだ。疑いながら、抱きしめる腕の力を強くする。
「和希、苦しいよ。」
「友達なんか嫌だよ。絶対に嫌だ。」
 啓太の苦情を無視してぎゅうっと抱きしめながら、髪に口付ける。
「俺も嫌だよ。ごめんね。もしかしたら、そんな可能性もあったのかなって思ったら、なんか不安になっちゃったんだ。ごめんね和希、変なこと言って。」
 啓太の腕が俺の背中に回される。
「好きだよ。啓太。」
 髪に耳に口付ける。

 友達にしかなれない関係だったら。もしもそうだったら?
 そんな事、想像するのだって嫌だ。

「和希・・ごめんね。」
 俺の耳たぶを甘く噛みながら啓太が囁く。
「和希?目が赤い・・泣いてるの?」
 唇が触れそうな距離で見つめながら、啓太が言う。
「泣くわけないだろ?」
 そこまで、情けない男にするなよ。・・笑いながら、誤魔化すようにキスをする。

 想像したら悲しくなった。
 俺を好きにならない啓太。
 友達にしかなれない俺達。
 想像したら、凄く凄く辛かった。

「ごめんね。もう二度といわないから。」
「うん。」
 これじゃどっちが年上かわからない。
 子供な自分に呆れながら、啓太の存在を確かめるように、何度も何度もキスをした。
 意味の無い、もしもに俺はすっかり怯えていた。





いずみんから一言

和希ってホント啓太くん相手じゃ余裕ないなあ。
みのりさまの和啓を読むたびにそう思う。
だからいいのだと、お子様の啓太くんは気づいていないようだけど。
世界を相手にする男は何があっても隙を見せない。
いつでもどこでもどんなときでも余裕たっぷりのように見せかける。
余裕の「よ」の字もないときでも。
そんな和希が情けないくらいの姿を見せるのは自分だけ。
それに気づいてあげられるようになったら、きっと啓太くんは和希の
右腕になってばりばり仕事をこなすようになっているのに違いない。

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