おひるね 〜20のお題〜 『子供の頃さ、具合が悪いと和室に布団敷いてもらって寝てたんだ。』 へへへと笑いながら啓太が言った。 『和室に布団?』 『うん。ひとりで二階の部屋に寝てるのが寂しくて。だって下からみんなの楽しそうな気配だけするんだよ?寂しいだろ?だから、茶の間の隣の和室に布団を敷いてもらって寝てたんだ。茶の間側のふすまを開けてね。』 『へえ。』 『昔の家の時。古くて狭い家の頃。 熱出して苦しくてさ。氷枕が冷たくて気持ちいいなとか思いながらうとうとしてる時にさ、家族の話し声とか、テレビの音とか・・そういうのが近くにあるとなんか安心しちゃうんだよね。』 『そうかもね。』 啓太の言葉に頷きながら、その感覚が理解できなかった。 俺はどちらかといえば神経質な方で、他人が傍にいたら熟睡なんて出来なかったし。 幼い頃から眠るときは完全にひとりだったから、声が聞こえてくると安心するという気持ちが分からなかった。 分からないけど、頷いて分かったふりをしてたんだ。 「和希のことそろそろ起したほういいかな?」 啓太の声がする。 「まだあと10分くらいいけるだろ?次海野ちゃんだし、絶対あの人遅れてくるし。」 「あ、そうだね。良く寝てるもんな、もう少し寝かしとこう。」 がやがやと騒がしい昼休みの教室。 話し声や歩く音。騒がしくて、でもそれが嫌じゃない。 自分の机に顔を伏せ、目を閉じる。 教室の片隅で、うとうとと眠りに入る。 啓太の声が耳に気持ちよくて、俺はいつの間にかぐっすりと眠り込んでしまう。 苦手だったのにな。他人の声や気配。 いつの間にか平気になっていた。 啓太に感化されたのかな? 敏感だったのにね。おかしいよね。 「和希?そろそろ先生来るぞ。起きて。」 啓太の手が肩に触れる。 「ん・・。」 寝ぼけた顔で、啓太のほうを向く。 「おはよ。良く寝てたなあ。」 俺の顔を見て啓太が笑う。 「うん、寝てた。気持ちよかった。」 大きく伸びをして、ふわぁとあくびをひとつ。 つられて啓太も小さなあくびをひとつ。 「あ、つられちゃった。へへへ。」 笑う啓太に今度は俺がつられて笑顔になった。 |
いずみんから一言 |
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