大人の言い訳 休日に仕事なんてついてない。 折角啓太と出掛けようと思っていたのにさ。-----なんて気分で仕事をしていた。 急ぎではないけど、片付けないと後が大変そんな感じの仕事が溜まっていて、パソコンと睨めっこを続けていた、その時だった。 「俺も・・和希・・大好き。」 突然啓太の声が聞こえて慌てて立ち上がる。 仕事が終わるのを待っているうちに啓太は待ちくたびれて眠ってしまっていたんだけど、 だけど、いまのって・・。 「啓太?」 眠る啓太の傍に近づき名前を呼んでも返事は無い。 完全に寝てる。 幸せそうな顔して・・可愛いなあ。なんて寝顔を見つめていて気がついた。 あれ?じゃあ今のって寝言?寝言で・・大好き?うわ・・・嬉しいかも。 駄目だ、仕事してるところじゃない。 「啓太?おまたせ、仕事終わったよ。帰ろう。」 慌てて机の上を片付けて、石塚を帰らせると啓太を起す。 「んん・・・あれ?」 寝ぼけた顔で啓太が俺を見上げる。 「なんか幸せそうな顔して寝てたぞ。」 俺の名前呼んでたぞ?なんて言ってもいいかな? 「どんな夢見てたの?」 「なんでもないよ、ふつうの夢。」 慌てて否定。ちょっと頬を染めながら。 どんな夢だったのか覚えてるんだ。教えてくれないかな? 「なら教えてよ。」 「なんでもないよ。・・なんでもないけど。」 なんでもないって感じじゃないよ? 「ねえ、和希?」 体を起して俺をじいっと見つめて、ちょっとため息。 啓太に見つめられると心拍数が上がる。どきっっとしてしまう。 「な、なに?」 どうしたんだろ?なんかちょっと様子がおかしい。 「俺ね。」 「え?」 じいっと俺を見つめるのは大きな瞳。まずいよ本当にドキドキしてきた。 「まだ帰りたくないんだけど。帰らなきゃ駄目かなあ。」 そうなんだ、帰りたくない・・そう・・え? 「は?」 帰りたくないって、それって良い意味にとっていいのか? 「あのさ、俺・・。」 困ったような顔をしてる?さっきのは一体どういう意味なのだろう。 勝手に解釈していいものか悩むのは、相手が啓太だから。 啓太の場合、良い方に勝手に解釈して俺の気分が盛り上がった後で「そんな意味じゃない。」なんて怒られる可能性のほうが断然高いんだ。 「和希?」 「ん?なあに。」 名前を呼ばれて返事をする自分の声が甘い気がする。 顔なんてきっと、にやけてだらしなくなっている筈だ。こんなところ会社の人間には絶対見せられない。 「和希?あのさ。」 言いかけて止めてしまう。なんだろう、今日の啓太はなんだか本当に変だ。 ・・・・なんてちょっと心配していたら。 「け、啓太?」 声がひっくり返る。 な、なんで?啓太が抱きついてきた。 い、嫌。別に恋人同士なんだし、問題は無いし嬉しいけど。でも、でもどうして? 「あのね。俺・・和希のスーツ姿好きかも。」 耳元に囁く声。熱のこもった甘い囁き。うわわ・・。 好き?俺のスーツ姿が?え、そんなの・・啓太・・そうなのか? 「え、あ、あの・・。啓太だよな?」 慌てて体を離し啓太の顔を見つめる。 顔が熱い・・。 「なんだよ、それ!あ、和希顔が赤い。」 情けないくらい動揺してる。だって、こんなの初めてじゃないか? 「だ、だって啓太が変だから。」 嬉しいけど、変だよ。変すぎる。今まで寝てたんだぞ?イキナリどうしたんだよ。 「変って・・誘ってるのに変とかいうなよ。」 俺の態度に啓太はぷっと頬を膨らませる。 え?今誘ってるって言った? 「え?誘う?なんで?」 「いいよもう。や〜めた。もういい。 俺が一生懸命誘ってても気がついてももらえないんだよね?もういいよ〜だ。」 気づかない?そんな訳無いよ。効果あった。ありすぎるくらいだよ。 「わ〜ごめん。止めないで続けてよ。啓太。」 「やだよ。和希冷たいんだもん。嫌いだ〜ばか〜!」 ぷっとふくれて睨む啓太に俺はひたすら謝り続ける。 両手を合わせ謝り続ける。こんなこと、啓太以外には絶対しない。したことない。 「ごめんってば。」 「悪いって思った?」 「うん。すっごく思った。」 こくこく頷く。本当に悪いと思ってる。反省してる。 「じゃあ反省してるってとこ見せてよ。」 「え?・・・どんな風に?」 どうしたら許してくれる?拗ねて怒って・・睨んでるのに、どうしたら許してくれる? 「勿論。優しい優しい恋人風に。」 困った顔して返事を待つと、啓太は笑ってそう言った。 「じゃあ抱っこ?」 笑ってくれるならなんでもするよ。 上着を脱いでソファーに座りながら、俺は笑って啓太の手を引く。 「うん。」 啓太はにこりと笑って膝の上。 「啓太が積極的なのなんて始めてだよね?嬉しいよ。」 普段はそんなに甘えてくれないし、誘うのはいつも俺の方だし。 「喜んで頂けて光栄です。」 見つめ合って、ちゅっとキスをする。 「ね、夢にも俺が登場してた?」 だからなのかな?って軽い気持ちで言ったら「え?なんで知ってるの?」と啓太は驚いた顔で俺を見た後、顔を赤く染めた。 「啓太顔が真っ赤だよ。」 「ううう、気のせいだよ。夢になんか出てきてないってば。」 「あれ?そうなの?ふふふ、まあいいか。」 可愛い寝言に誘われちゃったんだよ。 あれを無視できる人間はいないよ。そんな奴男じゃないね。 残った仕事は、明日頑張ろう。 心の中で言い訳しながら楽しい休みを満喫した。 fin ×××××× ※ほーんと、ばかっぷるにも限度があるよなあ。 お月様じゃないけど、これを書いてる自分にちょっと呆れるわ。 と、余白に書いてありました。 確かにかなりのばかっぷるですが、でも和啓はいつもそうだったよ?と姉に言いたい気もします。 |
いずみんから一言 |
作品リストへはウインドウを閉じてお戻りください。 |