無題 2 〜拍手用ノートより〜



 ホテルのバスルームで体を洗いながら思い出していた。
 俺って変?
 こんな事急に思い出すなんてさ。
 変かな?う−ん?やっぱり変かもしれない。

 思い出したのは昨日の夜の事。
 啓太の唇にそっと触れた時の事。

 年下の意地っ張りな恋人は、いつもはなかなか甘えてくれない。


 嫌いだよーだ!
 和希って親父なんだもん。
 そういう事すると嫌いになるよ?いいの?


 にこにこしながら意地悪なことを平気で言う。
 大きな瞳をきらきらさせて俺が傷つくことを言う。

 だけど最近気が付いたんだ。
 そんな事を言いだす時は本当は甘えたい時なんだってやっと今頃気が付いた。

 俺が忙しすぎるから、啓太は色々我慢してしまう。
 デートが急にキャンセルになることも。
 出張で何日も会えない日が続くことも。
 「そんなこと平気」と我慢してしまう。
 我慢して我慢してそして啓太は意地悪になるんだ俺にだけ。
 そして昨日みたいに意地悪になる。

 和希が居なくても平気だよ−だ。
 和希いないとひとりでゆっくり眠れるし。
 ベッドも広々使えるしね。

 なんて事を言いながら啓太は俺に抱きついてきた。


 平気だよ。和希なんか嫌いだし。

 言いながら見つめた。大きな瞳で。
「嫌いなの?」
「うん嫌い。」
「しばらく会えないのにそんなこと言うの?」
 淋しい気持ちで聞いたら、啓太はぎゅって抱きついてきた。
「じゃあ和希が沢山好きって言ってよ。」
「え?」
「ね?俺の事好きって言ってよ。」
 ぎゅって抱きついて、俺の胸に顔を埋めてそんな事を言う。
「好きだよ。」
 素直に言ってくれればいいのにね。
 可愛いんだから。全くさあ。
「淋しい?啓太?俺はね凄く淋しいよ。」
 離れたくないよ。いつだって傍に居たい。
「淋しくないよ。」
 それなのにまだ強がってる。
「平気なの?」
 髪を撫でながら聞けば、拗ねた様な顔してこう言った。
「平気だけど‥淋しくなんかないけど、でも早く帰ってきてよ。
 和希いないとつまんないから。」
‥‥あぁ。可愛い。
 思わずにやける顔をちょっと苦労して引き締めて、そっとそっとキスをした。
 会えない間忘れられないように、沢山沢山キスをした。


「‥会いたいなあ。」
 ぼ−っとバスタブに浸かりながら啓太の事を考えた。
 思い出すと会いたくなるよね。
 嫌いだよ。なんて言葉でもいいから聞きたくなる。
 好きって言ってくれたら嬉しいけどさ、そんな贅沢言わないから。
 今すぐ声が聞きたい。
「電話しよっかな?もう寝てるかな?」
 ウキウキと立ち上がり、バスローブをはおりながら携帯のアドレスを呼び出そうとした瞬間、電話が鳴った。
「もしもし啓太?」
「和希?もう寝てた?」
「起きてたよ。啓太に電話しようかなって思ってたとこ。」

 偶然だけどなんか嬉しい。
「声が聞きたいなーって思ってたんだ。嬉しいよ啓太。」
 早く帰るから。
 仕事一生懸命頑張って本当に早く帰るから。
 だから今度はちゃんと好きって言って?
 嫌いじゃなく。「好きだよ」ってね?

 啓太の声を聞きながら、俺はちょっと幸せな気分だった。



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
(拍手用ノート)より
昨日の七啓を考えるとこっちは幸せですね。

私が打ち込んで載せた話の日付は全部去年の日付です。
出来てたのに何故載せていなかったのかな?と疑問に思っても「どうして?」と聞く相手がいないのでそれはずっと謎なままです。
もしかしたらボツにしてたのかな?
それともまだ見直しが終わってなかったのかな?
忙しくて載せる暇なかったのかな?
勝手に載せてお姉ちゃん怒ってるかな?
色々なことを思いながらノートを読む毎日です。





いずみんから一言

みのりさまの彼氏は一回り年上で、その所為かみのりさまは「年の差カップル」の話がお好きだった。
ちょっとそういう背景が透けて見えるような作品。
とうこさまは「何故載せていなかったのかな?」と書いておられるが、単にお忙しかったのに加えてパソコンが壊れたから、ではないだろうか。
「はい。パソコンさんは壊れたままです。忙しくて修理に出す暇もありません」というみのりさまから頂いたお返事は、入院の前日にネットカフェで書いてくださったものだった。


作品リストへはウインドウを閉じてお戻りください。