はじまったばかりの二人 



「好きだよ。」
 なんて囁きながら和希はいつも、慣れた感じでキスをする。
 俺の恋人はきっと昔とってももてたんだろう。
 大人なんだし当然。仕方ないよね。なんて思いながらも、そんな態度はちょっと寂しい。
 だって俺は未だに慣れない。
 髪を触られるのが気持ち良かったりとか。
 抱き合って眠る温度とか。
 慣れない感覚に戸惑うばかり。
 余裕がないんだ。全然ない。
 だから慣れた態度に腹がたつ。
 勝ち負けなんてないんだけど、なんだかちょっと負けてる気がしてしょうがない。

「あーあ、和希が本当に同じ年だったらいいのにな。」
 夜中に目が覚めて和希の寝顔を見ていたらちょっと悔しくなった。
 過去は過去だし、俺は子供で和希の傍にはいなかった。
 それでも俺の知らない誰かに嫉妬してしまう。
 昔、和希の隣に居た人達ってどんな人だったんだろ?なんて考えてしまう。
「和希のばーか。」
 ぐうぐう寝てる和希の鼻をつまんでみる。
「・・・ん、んんん。」
 苦しそうに顔をしかめるけど和希は目を覚まさない。
 俺の隣で和希はいつだってよく寝てる。
 熟睡というよりも爆睡って感じ。
 なのに俺は眠れない。
 時々夜中に目が覚めて。つまらない事を考えてしまう。
 大人と子供の差なのかな?
 慣れたら平気になるのかな?
 好きって気持ちにまだ慣れない。
 恋人って立場にまだ慣れない。
 好きって気持ちに振り回されてなんだかちょっと落ち着かない。
 いつになったら慣れるんだろう。
 こんな気持ちに。慣れるんだろう。

「好きだよ。ねえ和希?俺甘えてもいいの?」
 気持ちって全部みせていいのかな?
 全部みせても和希は受け入れてくれるかな?
 俺早く大人になりたいな。

 夜中にぐるぐるとそんな事を考えてると、いつの間にか朝になる。
 眠い眠い朝を迎えるはめになる。





いずみんから一言

啓太くんの戸惑いがストレートに伝わってきて共感できる作品。
誰だって好きになった相手の過去は気になるものだ。
年の差があればなおさらに。
だが実際に甘えているのは和希の方じゃないだろうか。
啓太も確かに甘えてはいるのだろうけど。
でもそれは他愛ないものであるはずで。
心が甘えている和希とは少し意味が違うような気がするのだが。

もしかしたら拍手用かもしれません。

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