この歌詞が好き 〜20のお題〜 



 昼休み食堂でお昼を食べた後、啓太と裏庭の芝生のところでぼんやりしていた時だった。
「あれ?ピアノの音がしない?」
「ピアノ・・・ああ、そういえば・・。音楽室かな?」
 風に乗ってピアノの音がする。
「・・・なんだっけ?これ聴いたことある。」
 芝生に寝転がったまま、啓太がハミングする。
「・・・聴いたこと・・ある?」
 同じように寝転がり、俺は眼を閉じて耳を澄ませる。
「なんだっけ?あれ・・ええと。・・ああBOOMだ。」
 体を起し、芝生の上に座りなおしながら啓太が言った。
「ぶーむ?」
 聞きなれない名前に啓太を見つめ聞き返す。
「うん・・・ええと・・・夢のまんなかを歩いていよう 途切れることなく 心がひとりでいる時も♪・・・ほらね。」
 啓太が低い声で歌う。
「聴いたことない曲だけど、なんだかいい曲だね。」
 啓太の歌声が、なんか気持ちいい。
「まだ続いてる。練習してるのかなあ?歌ってもいい?俺ねこの曲好きなんだ。」
 ふふふと啓太が笑う。
「いいよ。歌って。」
 うつ伏せになって啓太を見る。
 照れたように笑いながら、啓太は低い声で歌い始める。

「いつも思っていることなのに 君に会うと忘れてしまう。
 顔を見ているとうれしい 声をきいているとうれしい
 それだけで それだけで うれしい。

 いつも座っているんだけれど 思い切って立ってみるよ
 顔が見えないとかなしい 声がきけないとかなしい
 それだけで それだけで かなしい

 夢のまんなかを歩いていよう 途切れることなく 
 心がひとりでいる時も
 いつも愛しています
 いつも愛しています・・・」

 低い声で啓太が歌う。
 風が吹いていて、空が青くて、啓太の歌声は優しかった。
 眼を閉じて聞いてたらちょっとだけジンときた。
「いい歌だね。」
 聞いたことの無い歌だけど。
 啓太の声が胸に沁みた。

「夢のまんなかを歩いていよう 途切れることなく
 心がひとりでいる時も
 いつも愛しています いつも愛しています・・・。」

 その日、啓太の歌声がずっと聞こえてる気がした。


THE BOOM「それだけでうれしい」





いずみんから一言

和希と同じく、伊住もこの曲を知らない。
音楽なんて管轄外だと最初から思っているし。
そういう点でも、もしかしたら和希と似ているかもしれない。
でも、みのりさまがお好きだった曲なら、一度聴いてみようかな。
貴女の好きだったものに触れたら、今よりもっと貴女のことが
理解れるような気がするから。
今ちょっと、そんなことを考えている。

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