無題 2 〜拍手用ノートより〜 きみの笑い顔を思い出せない。 はじめて会ったとき太陽の様だと感じた笑顔をもう思い出せない。 そばにいるのに きみはもう僕に笑いかけない。 「啓太?」 「‥はい。」 「‥‥僕のそばにいるのは苦痛ですか?」 そっと抱き締めながら愛しい人に問う。 「苦痛?どうしてそんな事を聞くんですか?」 腕の中で、体をかたくしながら啓太は僕に問い掛ける。 「‥答えてください啓太。本当の心を教えて。」 祈るように言いながら抱き締める腕に力をこめる。 「‥‥。」 「啓太?」 俯く顔を覗き込み名前を呼ぶ。 愛しい人。何よりも大切な人。 「苦痛なんか‥そんな事思うわけない。 臣さん?好きなのにそんな事思うはずないでしょう?」 視線をそらしたまま啓太は答えをかえす。 体をかたくしたまま僕の腕の中で答えをかえす。 「そうですよね。‥僕はバカなことを聞いてしまいましたね。」 答えは望んでいたものだった。 たとえ泣きそうな声をしていても。 たとえもう僕に笑顔を見せなくても。 それでも望んだ答えをまだ僕にくれる。 「臣さん?」 「はい。」 「同じ質問をしてもいいですか?」 「同じ質問。」 「はい。臣さんは俺といることが苦痛じゃありませんか? 俺がそばにいることは臣さんの負担じゃありませんか?」 「負担なんか感じた事もありません。 苦痛なんて感じる筈が無いでしょう?」 それは嘘だった。 今啓太の傍にいることが辛かった。 笑わないきみの顔を見ることが悲しかった。 「‥‥。」 「啓太。愛してます。 僕にとって啓太は誰よりも大切な人です。」 一緒にいることが辛い。 心が凍えそうになる。 だけど好きなのだ。 どうしてもどうしても諦める事が出来ない。 「愛してます。啓太‥きみが卒業したら一緒に暮らしましょう。」 「え?」 「料理はあまり得意ではありませんが、掃除や洗濯なら任せてください。 こう見えても僕は結構綺麗好きなんですよ。」 「臣‥さん?」 「家具や食器やを二人で選んで居心地の良い部屋を作りましょうね。」 もう無理なのだと、叶わないと知りながら夢の様な話を口にする。 「そうですね。一緒に暮らせたらいいですね。」 そして耳に届くのは僕の望む台詞。 心が冷えていく。 凍えていく。 好きなのに。心に嘘は無いのに。 傍にいることがこんなにも苦しい。 「一緒にいましょう?ずっと一緒に。」 「はい、一緒に‥ずっと一緒に。」 暮らせたらいいのに。 本当にそうなったらいいのに。 挫けそうな心。 離れていく心。 腕の中の啓太はどんどん冷たくなっていく。 |
いずみんから一言 |
作品リストへはウインドウを閉じてお戻りください。 |