無題 3 〜拍手用ノートより〜


               
 大きな瞳が戸惑うように揺れるから僕は急いで口付けた。
 夕日が差し込む部屋。
 冷たい床に座り込んで僕を見つめる瞳。
 少しづつ心がすれ違っていく。
 思い合っている筈なのにどうしてもすれ違っていく。
「啓太。」
 唇が触れたとたんビクリと体を震わせる。
 そっと抱き寄せる腕の中であなたは体を固くする。
 甘い時が確かにあったのに。
 二人でいることが何より幸せだった筈なのに。
 なのに今はすべてが辛い。
 どうしても心が交わらない。
 思い合っている筈なのに、なのに思いがすれ違う。
「‥好きです。愛してます。」
 抱き締めてささやく。
 今までそうして来たように。思いを込めて言葉を紡ぐ。
「‥‥。」
「啓太?言って下さい。僕を愛していると。」
「臣さん‥お、俺は‥。」
 震える肩を抱いて瞳を見つめる。
 まだ僕のものである筈の体に触れていく。
「ごめんなさい。俺、俺は‥。」
「好きです。啓太あなただけを愛しています。」
 繰り返し言いながら触れていく。祈るように言いながら触れていく。
「ごめんなさい。俺は、俺はもう‥。」
 啓太の声を言葉を無視してそして僕は‥。



 一人になった僕は閉じたドアをただ見つめるだけ。
 胸にどうしようもない孤独感だけが残る。
 幼い頃一人でいる事が淋しくそして辛かった。一人だから辛かった、けれど今は‥。
「二人で居たのになのに淋しいなんて、二人で居たのになのにもっと孤独だと思うなんて‥どうしてなのでしょうね。」
 閉じたドア。
 振り向きもせずに去っていった細い背中。
 愛し合っている筈。
 思い合っている筈。
 なのにすれ違う。
 なのに心が離れていく。
「どうしたら良いんですか?どうしたら昔の様に笑ってくれるんですか?啓太。」
 好きなのに、誰よりも愛しているのに。
 冷えた心を両手に抱いたまま僕は一人途方に暮れる。






そういえば、悲恋悲恋・・・と考えて、七啓だったら出来そうな気が・・
と思ったのですが、よく考えたら今書いてるのが十分暗かったり
(いえ、悲恋って程じゃないんですが)しているのです(>_<)
そうか・・だからなんか進まないんだ(いま煮詰まりまくってます)
つらつら落書きしてみても、気分がのらなかったり・・

2005/09/12(月)の日記より



いずみんから一言

悲恋もの。
おそらくこれがその作品だろう。
啓太くんに何があったのか。何故心が離れることになってしまったのか。
今ではもう知る術はないけれど。
行間から、単語と単語の隙間から、何とか啓太くんの心理を読み取ろうと
している。そして尋ねる相手がいないのがたまらなく寂しい。

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