啓太くんのお料理教室
〜15. ずぼらイッチ〜
講師・学生会+成瀬由紀彦




啓太「みなさんこんにちは。啓太くんのお料理教室の時間がやってまいりました。今日は学生会主催 ・
    どんちゃん騒ぎ……、もとい、パーティー定番メニューのセルフサンドイッチを作ります! 今日の
    講師は……」
丹羽「俺だ、俺! でもって助手がヒデな!」
中嶋「何故俺が助手なんだ? 詳しく聞かせてもらおうか? てっちゃん?」
丹羽「だってよぉ。コレを思いついたのは俺だしよ」
中嶋「ほお?」
啓太「ま、まあまあ。ふたりとも止めてくださいよ(汗)。パーティー料理なんですから楽しく! ねっ?」


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啓太「えーっと。のっけから危なくなりかけちゃいましたが、気をとり直してはじめていきましょう。材料は
    何を用意すればいいですか?」
丹羽「お、おう。まずはパンだ。なんつったって 『 サンドイッチ 』 なんだからよ」
啓太「あはっ。確かにそうですねっ(笑)」
丹羽「食パンは、しょぼくならねえようにちょい多め。サンドイッチ用に切ったやつな」
中嶋「せっかくのパーティー料理だから、手に入るようならスーパーで売っているヤマ○キやpasc○じゃ
    なく、少しくらい高くても美味い食パンの方がいい」
丹羽「セルフサンドはパン2枚で挟まず、1枚を二つ折りにして食べるからな。柏餅みたいによ。美味い
    パンだと耳を落とさなくても大丈夫なんだ。耳を落とすとどうしても面積が小さくなって、思うように
    具が挟めなくなっちまうだろ?」
啓太「あ。なるほど。具が少ないのは悲しいですもんね。美味しいパンを買うようにします(笑)」
中嶋「人数が多ければ、オープンサンド用にフランスパンを薄くスライスしたものがあっても目先が変わ
    るな。この場合、軽く焼いておいた方がいいだろう」
啓太「フランスパンは軽く焼く……。はいっ」
丹羽「中に挟む具は、まずはハム、ソーセージ。ソーセージと言ってもウインナーみたいな細いもんじゃ
    ねえぞ。面積のあるものがいい。それを、ひとり1枚ずつでもいいから数種類用意する」
中嶋「1枚そのまま使ってもいいし、パンを二つ折りにするから半分に切っておいてもいい。それはハム
    の大きさやその日の状況にあわせて、臨機応変にな」
啓太「今日は神戸のデリカテッセンから、ハムはボンレスハムとロースハム。ソーセージはポークローフと
    ボロニアソーセージを取り寄せてます。大きいから半分に切りますね、あとスモークサーモンはこの
    ままでいけそうかな。ロティサリーチキンとローストビーフは和希があとで届けてくれるそうです」
丹羽「おうっ。上出来だぜっ。あとは……そうそう。玉子もあった方がいいな」
啓太「玉子はどうしておけばいいですか?」
中嶋「基本的にはゆでてつぶしたものをマヨネーズであえておく。味は塩だけでいいが、大人向きなら
    ほんの少しカラシを加えたり、粒コショウを入れたりすると風味がいい」
啓太「ちょっとピリッとした大人の味ですか? まさに「中嶋さんの味」ですねっ」
中嶋「ふ……。馬鹿な子だ」
丹羽「(かなりマジで面白くない)おいおい。次いこーぜ。次! 間に合わなくなったらどーすんだ?」
啓太「あっ! そうですねっ」
丹羽「(ふふん)」
中嶋「(ちっ)」
丹羽「(ちょっとご機嫌・笑)あとは野菜だな、野菜。レタス、トマト、きゅうり、オニオンスライスの定番野菜
    と、あとは好みのものな。ツナでも目玉焼きでもハンバーグでも、好きなモンを好きなだけ用意すり
    ゃいいってことさ」
啓太「じゃあポテトサラダも入れていいですか?」
中嶋「うん?」
丹羽「ポテトサラダか……?」
啓太「駄目……、ですか?」
中嶋「いや。今日は構わない。だがメンバーに外国人が混じっていたり、海外でやる時は、やめておいた
    方が無難だな」
啓太「どうしてですか?」
丹羽「うーん。確かめた訳じゃないから真偽のほどは定かじゃないんだがよ」
啓太「はい」
丹羽「何でも、ポテトサラダサンドを見たら「うげっ」と思う国があるらしいんだな」
啓太「それってポテトサラダ食べない国じゃなくて、ですか?」
丹羽「ああ」
中嶋「ポテトサラダもサンドイッチも食べるんだが、挟むのは駄目らしい」
啓太「へ〜え? なんか変わってますね(笑)」
中嶋「おまえだっておにぎりに納豆や漬物は入れんだろう。同じことだ」
啓太「あっ! そうか。なるほど〜。じゃあ今日はやめておきます。ほかに美味しそうな具が一杯あるし」
丹羽「そうだな。そうしておけ」


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啓太「あとは何がいりますか?」
丹羽「フィリングはこんなもんでいいだろうあとはスプレッドだな。辛子バターと辛子マヨネーズはたっぷり
    用意する。多めに作ったつもりでも意外になくなっちまうからよ。マジで多めにな」
啓太「はいっ」
中嶋「好みでクリームチーズもいいだろう。サウザントアイランドドレッシングもあった方がいい」
啓太「サウザントアイランドですか……?(材料台の上をごそごそ探す) うーん。ちょっと来てないみたい
    なので、食堂のおばさんに借りてきます」
中嶋「なければないで構わないぞ?」
啓太「でもせっかくですから! すぐ行ってきますっ(走り出たところで成瀬とぶつかりそうになって抱きと
    められる)」
成瀬「おやおや。僕のハニーは何をそんなに急いでいるのかな?」
啓太「あっ。成瀬さん! じつは王様と中嶋さんにセルフサンドイッチの準備を教えてもらってるんですけ
    ど……」
成瀬「セルフサンドイッチ? って……。…………ああ。ずぼらイッチね(笑)」
啓太「へっ? ずぼらイッチ……、ですか?」
成瀬「そう。自分は買ってきたもの並べるだけで、挟んだりするのは食べる人だろう? 自分はずぼらを
    決めこむから、ずぼらイッチ(笑)」
啓太「あはは〜。なるほど。その通りですねっ(笑)」
成瀬「それで? いったい何を慌てていたのかな?」
啓太「えっと……。ああ。そうそう。それで、届いてた材料の中にサウザントアイランドドレッシングが入っ
    てなかったので、食堂のおばさんに借りにいくところだったんです」
成瀬「サウザントアイランドくらいなら、わざわざ借りに行かなくても、僕でも作ってあげられると思うよ?」
啓太「えっ!? そうなんですかあっ? 助かりますっ!」


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中嶋「……おや?」
丹羽「うん? 何だ、成瀬じゃないか」
成瀬「僕の可愛いハニーがサウザントアイランドドレッシングがないって慌ててたから、それじゃあ僕が
    作ってあげるよ、って。ね?」
啓太「はいっ。そうなんです」
丹羽「ふーん(面白くない・笑)」
中嶋「………………」
成瀬「(なんだか……。視線が突き刺さってるよ・冷汗)」
啓太「? どうかしましたか? 成瀬さん」← 犯罪的な超ニブ(笑)
成瀬「う? ううん。なんでもないよ? さあ。気にせずに作ろうね」
啓太「はいっ」
成瀬「まずはマヨネーズを適当な器に入れる。そこに少しお酢をたらすんだ」
啓太「はいっ」
成瀬「あんまり入れ過ぎると酸っぱくなるから気をつけて。少しマヨネーズが緩むくらいでいいよ」
啓太「うーん。これくらい……、かなあ?」
成瀬「うん。いいんじゃないかな。できたら今度は、そこにケチャップを足すんだ。これも色を見ながら少し
    ずつだよ」
啓太「はいっ。……あっ。サウザンドアイランドっぽくなってきました〜」
成瀬「いいかな? って思ったら、ちょっと舐めて味を確認するんだ」
啓太「えーっと。じゃあちょっと(ぺろっ)。あ! いいかもです〜」
成瀬「そう? よかったらそこにみじん切りしたパセリを入れたら……、はい。完成」
啓太「有難うございました、成瀬さん! たすかっちゃいました!!」
成瀬「どういたしまして。せっかくだからスウィーツもどきも作っておくよ。ハニーは甘いもの好きだろう?
   (終ったらとっとと帰れとばかりに睨みつけられてる、ひそかな意趣返し・笑)」
啓太「もちろんです〜♪」
成瀬「えーっとね。学生会が用意するパンは美味しいから、サンドイッチでも耳を落とす必要はないんだ
    けど、何枚分かの耳を先に落としてしまう」
啓太「じゃあ6枚分くらい作ろうかな」
成瀬「1枚で4本できるから、そこも考えてね」
啓太「うーん。そっか……。じゃあ一応、5枚で20本にしとこうっと」
成瀬「この細いスティック状になった耳を、オーブントースターでカリカリに焼くんだ。これはコップか何か
    に紙ナプキンを敷いて、立てておくといいと思うよ」
啓太「はいっ」
成瀬「あとは少し砂糖を入れてホイップした生クリームと、何種類かのコンフィチュール、チョコレートソー
    スなんかを添えてね」
啓太「へーっ」
成瀬「こんなふうにパンの耳に生クリームを載せるだろう? そこにこうしてイチゴのコンフィチュールを
    かけて……。ほら。食べてごらん?」
啓太「なんか……。ホイップクリームのふわふわ感とパンの耳のカリカリ感とが面白いです〜♪ パンに
    少し塩味がついてるからかな。甘味がかえって際立ってる感じがするし。イチゴの甘みも絶妙だ
    し。癖になりそうです〜」
成瀬「パンが熱すぎるとクリームがとけてくるから、そこだけ気をつけて」
啓太「はーい」
成瀬「パンがもし余ったら、食べやすいように半分に切ってトーストして、こんなふうにクリームとチョコレ
    ートをのせて食べると、立派なおやつになるよね?」
啓太「あ。ホントですねっ」


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丹羽「おい(不機嫌そうに啓太たちの様子を見ている)」
中嶋「ああ?(同じく不機嫌そのもの・笑)」
丹羽「さっき成瀬の言ってた、コンフィ……チュール、だっけか? それって何だ?」
中嶋「基本的にはジャムだな。ただ日本ではジャムほど煮込んでないものを指すことが多いようだが」
丹羽「けっ。ジャムかよ。ジャムならジャムって言えよな。ったく。カッコつけんじゃねえぜ」
中嶋「まったくだ。そもそもほかの男を頼ろうというのが許せん」
丹羽「おー、こわ。と言いたいところだが、今日ばかりは同感だ。しかし、おまえにしては詰めが甘かった
    な」
中嶋「うん?(無言で片眉が跳ね上がる)どういうことだ」
丹羽「おまえがドレッシングの手配を忘れてなきゃ、成瀬なんて余計な野郎は入ってこなかったんだよ」
中嶋「あれならわざと入れなかったんだ」
丹羽「わざと?」
中嶋「ああ。ないからと言って、作って見せようと思ってたんだ」
丹羽「……おまえちょっと凝りすぎだろ? その役、すっかり成瀬に奪われてどーすんだよ(呆れまくり)」
中嶋「……(憮然)……」← 図星だったので言い返したくても言い返せない(笑)
丹羽「ったく。知恵者、知恵におぼれるってやつか?」
中嶋「ふん。なんとでも言え」
丹羽「もうおまえには任せとけねーぜ。……おーい。啓太(成瀬との間に割ってはいる・笑)」
啓太「え? あ、はいっ」
丹羽「そろそろいいか?」
啓太「あっ、そうですねっ。ごめんなさい」
丹羽「悪いな、成瀬(お邪魔虫に成功して、満面の笑み)」
成瀬「いえいえ。啓太の『 邪魔 』をするつもりなんて、これっぽっちもありませんから(爽笑)」
丹羽「……(くっそ、コノヤロー)……」
中嶋「……(テニス部ごときが邪魔をするなど1億年早いわ)……」
成瀬「……(チャンスは絶対逃さない。恋もテニスも基本は同じさ)……」
啓太「……(みんな愉しそうに見つめあってて、なんか羨ましいなあ)……」←やっぱり超ニブ(笑)


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遠藤「おーい、啓太あ」
啓太「あ。和希だ♪」
丹羽「(また邪魔かよ)」
中嶋「(ちっ。理事長のお出ましか)」
遠藤「(はいはい。タイムアップです。啓太は返してもらいますよ)準備できたか? ローストビーフとチキ
    ンもってきたぞ」
啓太「サンキュー、和希(ラブラブ)」
遠藤「どういたしまして。啓太のためなら何だってするって(ラブラブ)」
成瀬「…………ふーん。今年はずいぶん豪勢な料理が出るんだ。ねえ? ハニーのお友達くん?」
遠藤「こっ、今年は……。啓太がMVPをとったので、理事長がご褒美に出してくれたんですよっ」
成瀬「……ふーん?……(邪魔されたので疑わしさが倍増している・笑)」
啓太「えっ? そうだったの?」
遠藤「まあ何だっていいだろ? しょぼくなった訳じゃないんだからさ(焦)」
啓太「そうだね」
遠藤「(素直に育ってくれて、おにーちゃん嬉しいぞ、啓太)で、準備は? できた?」
啓太「えーっと、それが……」
中嶋「あとは大皿に盛り付けていくだけだ。誰かが邪魔をしていなければ、もうとっくに出来上がっていた
    んだがなあ」
遠藤「(突っこむと長くなりそうだから、ここはさらっと流して、と)オッケー。じゃあ手伝うよ。大皿ってこれ
    とこれ?」
丹羽「おう」
遠藤「えーっと? ハム2種類はこんな感じかな。ソーセージとサーモンと……」
成瀬「へえ? 意外ときれいに盛っていくんだね。お友達くんは」
啓太「(ははは〜。普段からパーティで嫌ってほどオードブルも見てるだろうしな)」
遠藤「タマゴは別の器がいいな。ドレッシングは真ん中において、周囲に野菜をかざって、と……。
    こんなもんかな?」
啓太「はーい。ずぼらイッチ、もとい、セルフサンドイッチの完成でーす!」


                    ・     ・     ・     ・     ・

丹羽「どうだ? 作り方は覚えたな」
啓太「はいっ。来年からは俺と和希で頑張って作りますねっ」
丹羽「頼んだぜ!(って、俺ら結局いいとこナシかよ……)」
中嶋「さあ。そろそろ客が来るぞ。飲み物の用意はできてるか?」
啓太「はいっ」
滝「やっほー。俊ちゃんでーす。ごちそう頂きに来よりましたでえ」
啓太「あ。いらっしゃい! と、いうことで、啓太くんのお料理教室を終ります!」







いずみんから一言。

びみょーにクリスマスには間に合いませんでしたが(笑)。
伊住の友人が遊びに来ると、たいていこの「ずぼらイッチ」を出します。
家を片付けるのに時間がかかる(笑)ので、こういうところで時間を短縮する訳です。
パンとハムさえ美味しけりゃ、みんな「美味しいね」と言ってくれます。
自分では何の料理もしないところがミソです(爆)。

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