啓太くんのお料理教室
〜16. 炊飯器パエリア〜
講師・中嶋英明







啓太「皆さんこんにちは。啓太くんのお料理教室の時間です。今日の講師は中嶋さんです!」
中嶋「料理くらい教えろといわれればいくらでも教えるがな、少しは上手くなるよう努力もしろよ」
啓太「えー? してるつもりなんですけどぉ」
中嶋「確かに○○○や××××はマシになった気もするが、料理はどうだか……」
啓太「なっ、中嶋さん、これ一応 『 お料理教室 』 なんですからっ、いきなりの伏字はやめてくださ
    い……(焦)」
中嶋「伏字にしたのは俺じゃない。気に入らなければそのまま字に起こせばいいんだ」
啓太「だってそれはまずいです……(汗)」
中嶋「そうか? おまえを料理するか、おまえが料理するか。格助詞ひとつの違いでしかないぞ」
啓太「ひとつ違えば大きく違いますよぉ」
中嶋「そうだな。楽しいし美味いし飽きないのは絶対的に前者だ。並べちゃいけないくらい違うな」
啓太「だからぁ……!」
中嶋「くっ、くくっ……。おまえは本当にからかいがいのある奴だな」
啓太「……くすん……」
中嶋「わかったわかった。好きなもの教えてやるから機嫌直せ」

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啓太「えーっとですね。実は 『 中嶋さんにパエリアの作り方を教えてもらいたい 』 っていうおたより
    というかご意見が、オーナーのところにたくさん来ていたんです」
中嶋「ふうん?」
啓太「たしかに中嶋さんのパエリアって美味しいんですけど、どうしてほかの人が知ってるのかな
    あ……?」
中嶋「さあな」
啓太「中嶋さんにもわかんないんですか?」
中嶋「ああ」
啓太「そうなんだ……。それで、俺もパエリアを教えてもらおうかな、って思ったんですけど」
中嶋「別にかまわんぞ」
啓太「ホントに……?」
中嶋「ああ」
啓太「やったぁ! 有難うございます!」
中嶋「さほど難しいものじゃないが、おまえでも作りやすいよう、炊飯器を使うタイプにアレンジして
    やろう」
啓太「よろしくお願いしまーす」

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啓太「まずは材料からお願いします」
中嶋「当然のことながら米だな。それとサフラン。シーフードミックス。鰹だし。マッシュルーム。彩り
    用にパセリまたはピーマン」
啓太「鰹だしを使うんですか?」
中嶋「今日はな。別にブイヨンを使ってもかまわないぞ」
啓太「あとシーフードミックスって言うのは?」
中嶋「エビとイカとアサリの剥き身が1パックになっている冷凍食品だ。切ったり砂を吐かせたりす
    る手間がかからない分、お前向きだろう。冷凍食品売り場じゃなく魚売り場に置いてあること
    が多いから、探すときには間違えるなよ」
啓太「はーいっ」
中嶋「シーフードは肉類に変えてもおもしろいパエリアになる。鶏肉やチョリソなどを使うといい」

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中嶋「今回は炊飯器を使うから、米は洗う。量は食べたいだけだが、炊飯器の限界値までは炊け
    ないからな。そこは気をつけろ」
啓太「どうしてですか?」
中嶋「馬鹿か、おまえは。具が入る分を考えろ」
啓太「あ。そっか。うちの炊飯器はたしか5合炊けるから……。3合半くらいなら大丈夫ですね」
中嶋「ああ。しかしおまえ、そんなに食うのか?」
啓太「え? 王様も食べるでしょう? 最低でもそれくらいはいりますよ」
中嶋「……そうか(←啓太が他の男のことまで考えて作ろうとしているのが、何気に気にいらない)」
啓太「はい。お米、洗えました」
中嶋「そのままザルにあけておけ。水を切る。最低30分はそのままにしておくんだが、まあ、おまえ
    がもたもた作っていたら、それくらいはかかるだろうがな」
啓太「はぁい(なんか怒ってる……?)」
中嶋「鰹だしは濃い目にしっかり取る。おまえは手抜きをしちゃいけないが、おまえ以外の人間が
    ほ○だしを使うのは自由だ」
啓太「はーい。じゃあ俺は鰹たっぷりで取りまぁす(苦笑。やっぱり怒ってるのかな?)」
中嶋「(ふん。素直でよろしい ←ちょっとだけ機嫌が直る)シーフードミックスは見た目の量で米と
    同じくらいは必要だ。米は炊くとふくらむが、魚介類は火が通ると身が縮むからな。炊き上が
    ったときに具がないなんてことになりかねん」
啓太「それで2袋用意してあったんですね」
中嶋「……なんだ。ひとつしか出してこなかったのか」
啓太「あわわ。取ってきま〜す」
中嶋「うちの冷蔵庫に無駄なものは入ってないだろう」
啓太「そうなんですけど……(しょぼん)」
中嶋「しょんぽりしてないで、さっきのだしを大雑把でいいからふたつに分ける」
啓太「大雑把って言ったって……。どれくらいですか」
中嶋「手間のかかるやつだな」
啓太「すみません……」
中嶋「(啓太の耳元で)まあ、いつでもそうだがな」
啓太「う゛……」
中嶋「……だいたい米の量より少し少ないくらいだ」
啓太「……え……?」
中嶋「だからだしの量だろう?」
啓太「あ? は、はい……(またからかわれちゃった……)」
中嶋「今から使うだしは、ザルにあけた米より少し少ないくらいがいい。少なめにしてあとで足す方
    が無駄がないからな」
啓太「じゃあ……。これくらいで」
中嶋「どれ……。ああ、いいだろう。そこへサフランを放り込め」
啓太「今ここで入れちゃうんですか?」
中嶋「炊飯器は思ったより早くできるからな。黄色の色素が出切る前に炊き上がってしまうんだ」
啓太「それって色が薄くなっちゃうってことですか?」
中嶋「ああ」
啓太「なるほど。それで先に入れて色を出しておこうってことなんですね」
中嶋「そういうことだな」
啓太「中嶋さんってすごいです……! そんなとこまでアレンジしてくれるなんて(←尊敬の眼差し)」
中嶋「つまらんことで感動してないで、さっさとサフラン入れろ。ケチらずにちゃんと1パック全部入れ
    ろよ(←でも機嫌がよくなっている・笑)」
啓太「はあーい」
中嶋「マッシュルームは薄切り。軽く塩コショウしてさっと炒める。鶏肉やチョリソを使う場合も、ここで
    一緒に炒めておけばいい」
啓太「はいっ」
中嶋「青味は……。パセリならみじん切り、ピーマンは輪切りにする」
啓太「今日はピーマンなので輪切りにします」
中嶋「あまり分厚くならないようにな」
啓太「……努力はします……」
中嶋「時間がかかりそうなら、サフラン入れた方のだしにシーフードミックスを入れて火にかけてお
    け。切っている間に火が通る」
啓太「はあい」
中嶋「シーフードミックスじゃなく殻つきのエビやアサリを使うときには、生のまま炊飯器に入れれば
いいんだがな。シーフードミックスはメーカーによったら軽い塩味がついているときがあるんだ」
啓太「へえ……。そうなんですか」
中嶋「それに気づかずにだしの味をつけてしまうと、出来上がりの味が塩辛くなってしまうだろう?」
啓太「そうですね」
中嶋「だから早めにだしで煮ておいて、ついている塩味を吐き出させておくんだ」
啓太「なるほど〜。よくわかりましたっ」
中嶋「ピーマンを切り終ったらだしの味を見て、軽い塩味程度に整える」
啓太「はいっ」

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中嶋「具材の準備が全部できたら、ザルにあけておいた米の量を計量カップで量る」
啓太「ぱらぱらしちゃって、なんかちょっと……、難しいです」
中嶋「ま、地道にやれ。こぼさないようにな」
啓太「はぁい」
中嶋「ただ入れただけじゃあ駄目だぞ。無駄な隙間が多くて正確な計量ができん。途中で適度に揺
    すって隙間を詰めろ」
啓太「へええ〜」
中嶋「量れたら正確な分量をメモしておく。カップにシールを貼っておいてもいい」
啓太「えーっと。たしかマッシュルームの入ってたパックに、値段のシールがついてたはず……。
    ああ、あったあった。これ貼っときますね」
中嶋「……好きにしろ。要は量さえ間違えなければいいんだ」
啓太「はいっ」
中嶋「量が確定できたら、今度はその米をフライパンで炒める。フライパンを熱くしてからサラダオイ
    ルを入れろよ」
啓太「はいっ。……ってうわあん。カップに一杯お米が貼りついちゃって……」
中嶋「一粒たりとも残すなよ。量った量が狂う」
啓太「えーっと、えーっと。えーっとぉ……。はい。全部だせました」
中嶋「よし。米全体が透きとおった感じになるまで炒めるんだ」
啓太「……こんなぐらいでいいですか?」
中嶋「もう少しだな。炒められたら炊飯器の釜に移す」
啓太「はいっ」
中嶋「さっきのだしからシーフードを引き上げて、これも釜に入れる。マッシュルームも忘れるな」
啓太「はいっ」
中嶋「米と具と、全部入ったら、熱くしただしをさっきシールを貼ったところまで量る」
啓太「洗ったお米の量とスープの量が一緒ってことなんですね?」
中嶋「ふん。おまえにすれば上出来だな」
啓太「えへへ。足りない分は、さっき別にしておいたおだしを足して……、と」
中嶋「そうやっておけば、せっかくのサフランを無駄に残さなくていいだろう?」
啓太「そうですねっ。(中嶋さんってホントに無駄が嫌いなんだよなあ・笑)」
中嶋「あとはふたをして普通に炊けばいい」
啓太「ホントに簡単かも〜」
中嶋「本当なら水煮したトマトの刻んだものも入れればいいんだが、今日は省略した。手元にあると
    きに使えばいい。なくても困らないということだ」
啓太「はぁい」

               ・     ・     ・     ・     ・

啓太「あっ。炊き上がりましたっ」
中嶋「よし。じゃあさっとふたを開けてピーマンを放り込め」
啓太「はいっ」
中嶋「それで蒸らせば出来上がりだ。パエリア鍋やフライパンで炊くときには最初から入れておいて
    もいいがな、炊飯器を使うと色が変ってしまう」
啓太「そっかあ」
丹羽「おーい。いるかー?」
啓太「あっ。王様だ」
丹羽「おおっ? なんだなんだ? ふたりでラブラブクッキングかよ。くーっ。熱いねえ。うらやましい
    ねえ。新婚さんはよっ」
中嶋「なんだとはこっちのセリフだ。おまえはそんなオヤジなことを言いにわざわざ19階まで上がっ
    てきたのか(←やっぱり啓太が丹羽の分まで作ったのが気に入らないらしい・笑)」
丹羽「へへん? ご機嫌ナナメか? 冷えたビール持ってきてやったからメシ食わせろや」
啓太「もちろんですよ。王様の分もちゃーんと作ってありますよっ(笑)」
丹羽「おっ。それでこそ啓太だ。……っておい、ヒデ! ビールどこへもってくんだよっ」
中嶋「今日はパエリアだ。ビールは合わん。没収する」
丹羽「……まあいいけどよ。どうせおまえのことだから白ワインくらい冷やしてあるんだろ?」
中嶋「……(図星)……」
啓太「はいはーい。じゃあパエリアを大皿に移しますね。王様も中嶋さんも座っててください」
中嶋「おい。冷蔵庫にサラダを作ってあるからそれも出せ」
啓太「えーっ? いつの間にこんなの作ったんですかあ?」
中嶋「パエリアが炊き上がる間だ。おまえスイッチを入れてから、実家に電話してただろう?」
啓太「でも10分もしゃべってないですよ」
中嶋「なに。トマトときゅうりとピーマンとオニオンをスライスしただけだ。ドレッシングも作ったところ
    でそんなにかからんさ」
啓太「(冷蔵庫からサラダを出す)うわっ。すごーい! シンプルだけどすごく綺麗で美味しそうです。
    っていうかパエリアと一緒にお皿にとると、すごく引き立てあうんじゃないですか?」
中嶋「献立を考えるときにはそこまで考えないとな」
啓太「中嶋さんって、やっぱりすごいですっ」
中嶋「……同じことを何度も言わなくていい(といいつつとっても機嫌がいい・笑)」
啓太「えへへへへへ」

               ・     ・     ・     ・     ・

啓太「はいっ。冷たく冷やした白ワイン。俺にはブラッドオレンジのジュースを用意しました」
丹羽「御託はいいからさっさと食おうぜ」
中嶋「あまえは食い気しかないのか」
丹羽「だってよう。お料理教室なんて作り方さえわかりゃいいんだろ? あとは早く味をリポートしな
    きゃな」
中嶋「ふん」
啓太「まあまあ。俺も早く食べたいです。っていうことで、いっただっきまぁ〜す」
丹羽「……お?」
啓太「……うん?」
丹羽「おうおう(バクバク)」
啓太「えへへへへ(もぐもぐ)」
中嶋「……で? おまえらの言う 『 リポート 』 とやらは、うんとかおうとか言うことか?」
啓太「だってぇ(もぐもぐ)美味しいんですよぉ(はぐはぐ)」
丹羽「おう。こりゃー美味いわ」
啓太「シンプルなサラダも美味しいし。最高ですぅ」
中嶋「……そうか(←啓太が美味しいを連発しているのでとてもご機嫌・笑)」
啓太「これ以上リポートなんかしてられません。もっと食べたいので、啓太くんのお料理教室を終わ
    りまーす!!」





いずみんから一言。

はい。お題「秘密」で出てきたパエリアです。
あれはフライパンで作りましたが、今回はお手軽に炊飯器で炊いてみました。
お米とスープの計量さえ間違わなければ、まず失敗はしません。
ヒデが講師をした「夏野菜の煮込み」と盛り合わせてもらっても綺麗です。
とっても簡単ですので、ぜひ作ってみてください♪

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