啓太くんのお料理教室 |
〜5. ダイコン料理 3種〜 |
講師・鈴菱和希 |
啓太「皆さんこんにちは。啓太くんのお料理教室の時間です。今日の先生は……」 和希「鈴菱和希で〜す」 啓太「って、和希。今日は遠藤じゃないんだ?」 和希「そう。今日の料理は鈴菱和希として作ってきたものばかりなんだ。だから学園の調理場じゃなく、 啓太にもうちに来てもらったってわけ。くまちゃんのエプロンはもちろんお手製さ(笑)」 啓太「いつ来ても思うんだけど、和希んちって、台所すごいよな。広いしぴかぴかだし。アイランド型って いうんだっけ? 俺んちの台所の10倍くらいありそう」 和希「10倍は大げさだろう(笑)。まあでも広いのは認めるよ。ここはホーム・パーティ用だからさ」 啓太「へえ? パーティやるの?」 和希「ああ。外国からお客が来るだろう? 向こうはたいてい夫婦で来るから、1回は料亭でいいんだけ ど、2回目はホーム・パーティとかにしちゃう」 啓太「なるほど〜」 和希「で、料理そのものはプロのコックさんに来てもらうんだけど、その中で1品か2品、俺が作ったもの も出すわけ。そうしたら会社だけじゃなくて俺の株も上がる。前日比100円高ってな(笑)」 啓太「うーん。和希ってさあ、編物やってるだけかと思ったけど、陰でいろいろ努力してるんだな」 和希「今頃わかったか(笑)」 啓太「うん。それにこの広い台所の意味もわかったよ」 和希「ちょっと考えたらわかるだろ? 俺ひとりだったらこんな無駄なキッチンいらないって(笑)」 啓太「だよなあ。こんなとこでラーメンなんて作ってすすれないもん(爆)」 和希「ああ、ないない。せいぜいコーヒーが限度だ。っていうか、実は食材そのものを置いてない」 啓太「えっ!? マジ?」 和希「マジ(笑)。酒以外で常備してあるのは香辛料や調味料の類と、あとはチーズやクラッカーくらいか な。要は日持ちするやつ(笑)」 啓太「へええー? じゃあ今日の材料は?」 和希「ちゃんと買ってきたよ。でも無駄が出ると面倒だから、最小限の食材で3種類の料理を作る。今日 のメインは大根だっ!!」 啓太「えっ!? 3種類も? うわあ、俺、がんばらなきゃ」 和希「ああ。頼むぜ、相棒!」 ・ ・ ・ ・ ・ 和希「料理ってさ、本当は似たような作業は一緒にやっちゃった方が効率いいんだけど、ごちゃまぜにな っちゃいそうだから、今日はひとつずつにするよ」 啓太「うん。そうしてくれると助かる」 和希「オッケー。じゃあ大根シリーズ1品目は酒の肴にぴったりの『大根サンド』だ。材料は大根と生の タラコ」 啓太「……」 和希「……?」 啓太「……?」 和希「……啓太。どうかしたか?」 啓太「え? いや、ほかの材料は何かな、と思って」 和希「だから大根とタラコだよ」 啓太「えっ!? たったそれだけでいいの?」 和希「いいの。さっ、啓太は生のタラコをほぐして。袋に包丁入れて開くだろ? あとはスプーンの背中で こそげて小皿にとればいいから」 啓太「オッケー」 和希「俺はその間に大根を。えーっと、大根は太すぎないものがいいな。これの真ん中あたりの皮をむい て、できるだけ薄く輪切りにする。むこうが透けるくらいが理想的。2枚で1セットだから、数を数え ながら切った方がいいな」 啓太「ほぐし終わったよ」 和希「こっちも切れた。あとは大根の真ん中にテキトーな量のタラコを乗せて、もう1枚で挟む。な? 大根サンドだ」 啓太「え? すっげー簡単。タラコが大根に透けて見えて、結構きれいなもんだな」 和希「だろ? パーティのときはきれいなように着色タラコ使えばいいし、自分で食べるときには無着色 のとか、まあそのあたりは自分でアレンジしてよ」 啓太「辛子明太子だったらどう?」 和希「うーん。辛子明太は使ったことないなあ……。アレンジの範囲内だからオッケーなんじゃないの?」 啓太「じゃあタラコか明太子かはお好みで、っていうことでいい?」 和希「いいんじゃないか? 料理なんて味さえ気に入ったら何だっていいんだよ」 ・ ・ ・ ・ ・ 和希「大根シリーズ2品目はちょっと面倒かもな。『大根のサラダ・和中折衷バージョン』だ。材料は大根、 刺身用の鯛、カイワレ、人参、玉子、サニーレタス、中華風ドレッシング、あればキャシューナッツ」 啓太「ホント。材料きいただけで「面倒」って感じ(笑)」 和希「あはは。ところで啓太、かつらむきできる?」 啓太「かつらむき?」 和希「刺身についてるだろ? 大根の薄細切り。いわゆる『ケン』ってやつ」 啓太「ああ、あれのことかあ……。って、あれ、人間が切ってるの !?」 和希「それはつまり……。できない、ってことだな」 啓太「っていうか、今の今まで、機械で作ってるとばかり思ってた」 和希「コツさえわかれば簡単なんだけどな。最初は高さ5センチくらいに切った大根から始めるといいよ。 あんまり背が高いと切りにくいんだ。それとできれば包丁は日本のものがいいな。これだと刃の部 分がまっすぐなんだよ。ヘンケルとかの洋包丁は刃の部分がふくらんでるだろ? 慣れないと切り にくいからさ」 啓太「ふーん」 和希「包丁もってる方の手の親指で大根の下の方。大根もってる方の手の親指で大根の上の方を押え ながら包丁を進めていく。ちょうど親指の真ん中に刃と大根の境目がくるみたいなかんじかな」 啓太「へええ〜っ。そんな風にして作るんだあ」 和希「かつらむきのできた大根はくるくるっと巻いて細切りする。これでケンの出来上がりだ。切れたらボ ウルに張った水の中に入れてぱりっとさせる。人参も同じな。ケンを作って水の中だ。大根と違っ て硬いし細いから、大根よりは切りにくい。手に気をつけて。量は大根の4分の1か5分の1くらい。 俺がこれ作るから、啓太は薄焼き玉子を焼いてくれる?」 啓太「わかった」 和希「焼けたら錦糸玉子よりはちょっと広めに切っといて」 啓太「了解」 和希「人参と大根のケンは水の中でよーくシャッフルしてざるにあける。水が切れたら大皿に敷いたサニ ーレタスの上に、こんもりと形よく盛るんだ。普通のレタスだと色が薄いだろ? 大根のせるとぼや けちゃうんだよ。だから下に敷くのは色の濃いものがいいと思うよ。ここにカイワレとか薄焼き玉子 の切ったのとかをトッピングしてから鯛の刺身を乗せる。最後にキャシューナッツをぱらぱらっと。 これで出来上がりだ。食べる直前に中華風ドレッシングをかけて、豪快にかき混ぜてから取り分け ればオッケー」 啓太「なるほど。パーティっぽいや」 和希「玉子とキャシューナッツはなくてもいいぞ。刺身も鯛がなければマグロでもいい。リッチなときなら両 方とかさ。でも中華ドレッシングはたっぷりな。ドレッシングは市販のものでいいけど、大根が水っ ぽいから、場合によっては醤油とかラー油とかを足した方がいいこともある」 啓太「りょうか〜い。大根と人参以外のとこはがんばるよ(笑)」 ・ ・ ・ ・ ・ 和希「んじゃラスト1品。『大根サラダ・洋風バージョン』いくぞー」 啓太「おー !!」 和希「材料は大根、きゅうり、塩鮭またはスモークサーモン。今日は塩鮭な。あとはレモン」 啓太「あ。今度は俺にもできそう(笑)」 和希「じゃあやってもらおう。大根をイチョウ切りするのと塩鮭を焼くの。どっちがいい?」 啓太「塩鮭(笑)」 和希「即答したな(笑)。オッケー。じゃあ鮭を焼いて」 啓太「普通に焼けばいいのか? 朝ごはんのときみたいに?」 和希「そう。魚焼きグリルで十分さ。焼けたらほぐすんだ。あんまり細かくなくていい」 啓太「わかった」 和希「大根は厚さ2〜3ミリでイチョウ切り。きゅうりは輪切り。切れたら塩もみをして、しんなりしたところ で水洗いだ。よく洗わないとな。塩気が残るとからくなっちまう」 啓太「そうだな。鮭にも塩がきいてるしな」 和希「そう言うこと。あ、そうそう。スモークサーモン使うときは焼かなくていいぞ。当たり前みたいだけど、 ときどき焼いてる料理も見かけるからな」 啓太「鮭ってこのくらいにほぐしてたらいい?」 和希「上出来。じゃあ大根 ・ きゅうり ・ 塩鮭をボウルに移して……。マヨネーズであえる」 啓太「サラダらしくなってきた」 和希「あえてしまってから味見をして塩気が足りなかったら塩をする。最後にレモン汁をかけて出来上が りだ。レモン汁の量は好みで加減するといいよ。お好みで青じその刻んだのも入れてみると、また ちょっと雰囲気が変るんだぜ」 ・ ・ ・ ・ ・ 啓太「はーい。お待ちかね、試食タイムでーす」 和希「今日の料理はパーティ向きではあるんだけど、実はごはんのおかずにもいいんだよな」 啓太「っていうことで、ご飯を炊きました。大根と人参の赤だしつきです。でもこれはインスタントの赤だし に大根と人参を入れて煮ただけです(笑)」 和希「こっ、こら。ばらすんじゃない(笑)。だってしかたないんだよ。味噌なんて置いとけないし、大根や人 参も、残ったの全部持って帰るのは重いじゃないか。これでちょっとでも減らせればいいだろう?」 啓太「っていうかさ、インスタントの赤だしでも、こうやって大根と人参が入れば豚汁風になるんだな」 和希「豚は入ってないけどな(笑)。でもインスタントでもちょっと手を加えた方がいいよ。吸い物だったらカ マボコ切って入れるだけでも雰囲気変るし」 啓太「そうだな。今度やってみよう」 和希「それより早く食べて感想きかせてよ」 啓太「うん。まずは大根サンドから……っと」 和希「どう?」 啓太「なんか酒の肴って言われると、そうかなって感じだな。さっぱりしすぎて、ごはんのおかずにはちょ っとしんどいけど。でも食べててシャリシャリと気持ちがいいや。今度、家に帰ったら父さんに作って みよう」 和希「うんうん」 啓太「サラダの和中折衷バージョンだけど……。思ったより大根と中華ドレッシングって合うんだな」 和希「だろ?」 啓太「お刺身もごま油がきいてて、ちょっといいかも。俺、お刺身についてる大根って好きじゃなかったん だよ。でもこれは大丈夫。おいしい」 和希「これは手間はかかるけどパーティでは好評なんだ」 啓太「だと思うよ。で、最後の洋風バージョンは……」 和希「……洋風バージョンは?」 啓太「……(もぐもぐ)……」 和希「……啓太?」 啓太「……(もぐもぐもぐもぐ)」 和希「どうやらごはんに合うみたいです。コメンテイターの啓太が喋らなくなっちゃったんで、このへんで お料理教室を終わります。……あっ、こら啓太。それは俺の分だろっ!!」 |
いずみんから一言。 |
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