啓太くんのお料理教室 |
〜8. シャケキャベ焼き〜 |
講師・丹羽哲也 |
啓太「皆さんこんにちは。啓太くんのお料理教室の時間です。今日は王様に……。えーっと? シャケ? シャケキャベ……焼き、ですか?」 丹羽「おうよ。地方によっちゃー『ちゃんちゃん焼き』とかって訳わかんねー名前がついてたりもする らしいんだけどよ。俺ゃあそういうのは性に合わねえんでな。シャケとキャベツを焼くから 『シャケキャベ焼き』だ!」 啓太「なるほど〜。まんまのネーミングですねっ(笑)」 丹羽「だってよぉ。おまえ『鶏肉のディアヴォラ風』なんて言われて、どんな料理か想像つくか?」 啓太「……つきません」 丹羽「だろ? 料理の名前なんてぇのはよ、わかりやすいのが一番なのさっ」 啓太「そうですね」 ・ ・ ・ ・ ・ 啓太「えーっと。ふた付きのホットプレートを用意しました」 丹羽「よしよし。んじゃ一番熱いとこにセットしといてくれや。あったまるのに結構時間かかるからな。 キャベツとかはその間に用意できる」 啓太「はい」 丹羽「使うものはまず生のシャケだ。塩したのは駄目だぜ。塩辛くて食えなくなる」 啓太「なるほど。鮭は生に限る……、と。はい」 丹羽「それをひとり一切れくらいな。あんまり薄っぺらかったり小さかったりしたら、ま、テキトーに増や してくれや。分厚すぎると火が通りにくいから、そこらあたりもテキトーにな」 啓太「今日はちょっと大きめのものを二切れ用意してます」 丹羽「上等! おっ、そうだ。リッチなときにはエビを入れてもいいぞ」 啓太「エビですか?」 丹羽「ま、『入れてもいい』って感じだけどな。冷凍庫の隅に残ったやつとか使うのもアリってことさ」 啓太「はい。わかりました」 丹羽「メインはキャベツだ。シャケキャベはキャベツさえあれば年中いつでもできるけどよ、今の時季 は春キャベツが美味いから、毎年だいたい今頃に一度は作ってるな」 啓太「へえ〜」 丹羽「今日はふたり分だから、キャベツは最低で4分の1個。とにかく『マジでこれだけ食うんかい!』 ってくらい、たっぷり使うと覚えといてくれ」 啓太「え!? そんなに使うんですか?」 丹羽「ああ。広島風お好み焼きってのがあるだろ?」 啓太「はい。スーパーの入り口とかで、ときどきお店が来て焼いてるのを見ます」 丹羽「それ見てると、びっくりするくらいキャベツのっけてるじゃないか。でも焼きあがりはそんな感じ しねーだろ?」 啓太「そういえば……。そうかな」 丹羽「な? キャベツってのは火が通ると少なくなるんだ。だからびっくりするくらい用意してちょうど になるんだよ」 啓太「はいっ。わかりました!」 丹羽「あとはモヤシだな。ふたりで一袋。それとニンジンが適量。薄く輪切りにしてひとり5枚もありゃ いいだろう。最後に青味。青ねぎでもいいし、ニラでもいい。ニラだとふたりで一把だな。今日は 海野ちゃんに研究所で作ってるバイオなんとかのワケギを貰ってきたからそれを使う」 啓太「たまねぎとかピーマンとかは入れないんですか?」 丹羽「いや。入れちゃいけないってことはないんだがよ。それ入れちまうと、なんかフツーの野菜炒め と変らなくなっちまうだろ? だからシャケキャベのときには入れねーんだ」 啓太「はぁい」 ・ ・ ・ ・ ・ 丹羽「キャベツはざくざく切る。何センチなんて気にしなくていいぞ。一口で食べやすい大きさなら オッケーだ。あんまり小さくても食いにくいからな。まあセンチで言うなら5センチ×2センチって とこか?」 啓太「5×2ですね」 丹羽「あくまで目安な。6×3になったって、4×1になったって、誰も困りゃーしねーって」 啓太「そうですね」 丹羽「ニラも同じようにざくざく切る。ねぎはあんまりごついと美味くないんで、青い部分を斜めにすい すいっと切っていく」 啓太「今日はワケギって言ってましたよね」 丹羽「ワケギはねぎの兄弟分だ。斜めに切ってくれ。あとモヤシを軽く水洗いすれば野菜の準備は 終わりだ」 啓太「これで焼いていくわけですね?」 丹羽「いや。その前にタレっていうか、味付け用の味噌を準備する」 啓太「あ。味噌味なんだ」 丹羽「そう。味噌は甘くないものなら何でもいい。白味噌は不可。合わせ味噌が一番いいとは思うん だが、赤出汁とか八丁味噌でも大丈夫だ。ただし、辛くなりすぎないように注意が必要になる」 啓太「今日あるのは合わせ味噌ですね」 丹羽「えーっと。ふたり分だからなあ。とりあえずお玉杓子すりきり一杯分くらいを使ってみるか」 啓太「はい。ボウルに取ればいいですね?」 丹羽「ああ。ゴムべら使ってていねいにな。それを今度は日本酒でのばしていくんだ。」 啓太「えー? お酒ですか? 俺、酔っちゃわないかなあ」 丹羽「大丈夫だろ? 火が通るとアルコールは飛ぶぜ?」 啓太「あ、そうなんだ」 丹羽「安心してたくさん食えよ」 啓太「はあい」 丹羽「けど日本酒って、これが結構辛いんだよな。だから少しずつ入れていって、辛くなりすぎるよう だとみりんに変える」 啓太「どのくらい入れればいいですか?」 丹羽「最終的に『ちょっと溶けかけて飲み頃になったマク○ナルドのシェイク』くらいのどろどろ加減に なるくらいな」 啓太「あはははは。よくわかる説明です(笑)」 ・ ・ ・ ・ ・ 丹羽「さ。ホットプレートも熱くなったし、そろそろ焼いていくぞ」 啓太「はいっ」 丹羽「まず、ごま油をだーっと入れる」 啓太「はい。だーっ、と」 丹羽「おし。んで、そこにシャケを並べる」 啓太「はいっ」 丹羽「よし。シャケを隠しちまうように野菜を敷きつめる。油が跳ねるから気をつけろ」 啓太「はい。……って、うあ! ホントだっ! あっ、熱っ」 丹羽「ホットプレートが隠れちまえば平気だ。どんどん入れてくぞ」 啓太「王様、手が大きいからたくさん掴めていいですね……」 丹羽「はっはっは。さて、こんなもんだろ」 啓太「そうですね」 丹羽「ここでさっきの味噌ダレをあちこちにのせるんだ」 啓太「あちこちって……。こんな感じでいいのかな」 丹羽「まあ両端と真ん中で3カ所くらいか? んなこと考えたこともなかったぜ(苦笑)」 啓太「えーっと。全部ですか?」 丹羽「そうだな。それくらいなら全部入れていいだろう。んで、蓋にくっついちまわないように、味噌の上は野菜で隠す。あとは蓋をして焼けるのを待つだけだ」 啓太「楽しみだなあ」 ・ ・ ・ ・ ・ 啓太「(数分経過)うわあ。蓋の隙間からすごく湯気が出てますね」 丹羽「ああ。蒸し焼きだからな。野菜炒めなんかより、うんとキャベツの甘味が出てくるぞ」 啓太「(さらに数分経過)まだかなあ」 丹羽「こら。開けるとせっかくの蒸気が逃げちまうだろ。今は我慢だ」 啓太「はぁい。……中が見える蓋の方がよかったなあ」 丹羽「まあな。何もかもがベストってぇ訳にはいかねぇって」 啓太「そうですね」 丹羽「とはいうものの、やっぱ気になるよなあ(笑)」 啓太「えへへへへ」 丹羽「よし。じゃあこうしよう。10数えたら、ちょこっとだけ蓋をあげてのぞいてみる」 啓太「はあいっ!!」 丹羽「10、9、8、7……」 啓太「6、5、4、3、2、1 !」 丹羽「よーし。こっち来い、啓太。ちょこっとあげるぞ」 啓太「ドキドキの瞬間ですねっ」 丹羽「っせーの……。ん?」 啓太「あれ? だいぶん嵩が減ってますね?」 丹羽「ああ。そろそろかな」 啓太「出来具合はどうやってみるんですか?」 丹羽「シャケに火が通ってたらいいんだ。蓋とってみようぜ」 啓太「うわ。すごい湯気。……鮭は真ん中でしたよね」 丹羽「ああ。ちょいちょいと野菜をのけて、だな。シャケが見えたら……」 啓太「うーん。気持ち、生の部分が残ってますね。もうちょっと我慢すればよかったかな」 丹羽「いや。大丈夫だろう。これくらいならほぐしてるうちに火が通る」 啓太「よかったぁ」 丹羽「よし。じゃあシャケをほぐして野菜と混ぜる。豪快にいくぞ!」 啓太「はいっ」 丹羽「おっ。いいぞ。その調子な。シャケの皮とか骨とか取れてきたら、のけていってくれ」 啓太「食べにくいですからね」 丹羽「そういうこと。シャケが混ざれば味噌も混ざる。どんどん混ぜて……。ほい。終了」 啓太「やったあ。完成でーす」 ・ ・ ・ ・ ・ 啓太「炊きたてのごはんも用意しました」 丹羽「よしよし。まずはちょいと味見を……。お? いい具合だぜ?」 啓太「いっただっきまーす♪」 丹羽「どうだ? おまえの作ったシャケキャベの味は」 啓太「(もぐもぐ)なんか味噌の辛味とキャベツの甘味が、(もぐもぐ)うまくマッチしてるというか…… (もぐもぐ)」 丹羽「もういいって(笑)。食うか喋るかどっちかにしろ」 啓太「食べる方にします(笑)」 丹羽「ごはんに合うだろ?」 啓太「(ブンブンと頷く)」 丹羽「半分くらい食って、味噌やキャベツやシャケの旨味がたっぷり入った水分がホットプレートに たまっていたら、中華ソバを入れてもいい」 啓太「もったいないですもんね」 丹羽「そういうこと。今日はちょいと辛かったか、って思ったらソバはそのまま。ちょうどいい味付けの ときは、軽く塩コショウした方がいいかもな」 啓太「お好みってやつですね」 丹羽「ああ。あと、ごはんのおかずにしないときも、そのままでいけたりする」 啓太「どうしようかな。おソバも食べてみたいから、ごはんはこれくらいにしとこうかな……」 丹羽「おまえ、もう2杯も食ってるからな(笑)」 啓太「えへへ」 丹羽「いいってことよ。たっぷり食って、もうちょっと背を伸ばせ」 啓太「王様はこれを食べてそんなに伸びたんですよね(笑)」 丹羽「ふふん。おまえも言うようになったな。ま、今日は俺がソバの用意をしてやるから、おまえは もっと食ってろ」 啓太「はあい。お願いします♪ ……ということで、啓太くんのお料理教室を終わります」 |
いずみんから一言。 |
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