啓太くんのお料理教室 |
〜3. マグカツ おまけフリカケ・ヤキソバ〜 |
講師・滝俊介 |
啓太「おい、俊介。俊介、ってば」 俊介「お。なんや啓太。今頃来たんかいな。人がせーっかくご馳走したる、言うとんのんに、えらい遅か ったやないか」 啓太「仕方ないだろ。学生会の書類がたまちゃってるんだから。それもこれも、昨日おまえに頼まれて 島の外までデリバに行ったからじゃないか」 俊介「せやから俺かて気にしとんや。ほいでな、お詫びに美味いもんでもご馳走したろ、思たんや」 啓太「それがこれかい?」 俊介「ちゃうがな。これはおやつや。おまえがなかなか来ぉへんから腹が減ってしもたんや」 啓太「……おやつ……? この白っぽいヤキソバみたいのが?」 俊介「ちっちっち。これやから関東人はいかん。ヤキソバいうたらソースだけやあらへんで。……せや。 ちょっとこれ味見してみ。ほれ。……あーん」 啓太「あーん。……ん? (もぐもぐ)あっ。けっこう美味しい」 俊介「せやろ? これフリカケで作ってんのやで」 啓太「フリカケ?」 俊介「俺は『お○すび山』が好きで、それ使ぅとるけどな。簡単やから覚えて帰って妹に作ったり」 啓太「そうだなあ」 俊介「材料は中華そば、キャベツ、モヤシ、ちくわ、青い野菜。これはネギでもええしほうれん草とかを 細ぅに切ってもええ。ようするに彩りや。それからお好みの『おむ○び山』と、あとはだしの素。 『ほ○だし』みたいなやつな。それとコップ半分ほどの水。以上や」 啓太「肉は?」 俊介「んなもん入れへん。俺らみたいなアスリートにはな、どっちかっちゅうと肉より魚の方がええこと かってあるんやで。成瀬かって、あれで週のうち5日は魚食うとるしな」 啓太「へええ〜っ」 俊介「ま、嘘や思てちくわ入れてみ」 啓太「うん。俊介がそこまで言うんだったらきっと美味しいんだと思う」 俊介「ちくわがなかったら薄揚げでもええで。ちょっと変った食感がおもしろいねん」 ・ ・ ・ ・ ・ 俊介「キャベツはフツーのヤキソバみたいに切る。青い野菜は適当でええ。モヤシと揃えたら見た目も ええんやろけどな。別にこれで商売するわけやあらへんし。ちくわは縦半分に切ってから斜め切 りや」 啓太「こんな感じ?」 俊介「せやな。まあ啓太やったらそんなもんやろ。そいで全部切れたら炒めていく。野菜には軽く塩コショウして、火が通ったら水でほぐしといたソバを入れる。そこでっ!! おむ○び山の出番や。俺は鮭わかめが好きやけどな、梅かつおもいけるし、青じそちりめんも捨てがたい」 啓太「へぇ〜っ」 俊介「ソパの上におむす○山をぶっちゃけるやろ。これだけでは溶けへんから水いれるねんけど、やっ ぱし水よりはだしの方がうまいやんか。せやから一緒にだしの素をいれるわけや。ほんで水を入 れる。ご家庭で取っただしがあるときは、遠慮せずにそれ使いや。削り節があったらそれでも ええで」 啓太「わわっっ(焦)。早く混ぜなきゃ」 俊介「せやせや。その調子やで。よう混ぜてな。水気がなくなったら、じゅうじゅういうまで焼くんや。ここ できちんと焼くか焼かへんかで味が変わって来るからな。最後にちょっと味みて、足りんと思たら しょうゆを足す」 啓太「ちょっと足してみようかな……」 俊介「できたか? どれどれ。ちょっと味見……」 啓太「俺も……」 俊介「(もぐもぐ)……まあこんなもんやろな。キャベツの塩コショウがちょっと甘かったんかもしれん」 啓太「うん。俺もそんな感じがするよ」 俊介「まあええて。誰かって失敗しもってうまなるんやしな。ほなそのヤキソバ、ちょっとお皿に移しよっ てんか。俺はちょっと人探ししてくるわ」 啓太「人探し……? ってなんだよ、俊介のやつ」 ・ ・ ・ ・ ・ 俊介「やあ、ほんまええとこで会うたわ。探しに行く手間が省けたで」 七条「こんにちは、伊藤くん」 啓太「こんにちは」 七条「ああこれですね、伊藤くんお手製のヤキソバというのは」 啓太「え? ああ、そうですけど……?」 七条「とても美味しそうですから、食券3枚でもいいですよ」 俊介「ほんまか!? ほなそれで」 啓太「って、俊介!? これ売っちゃうのか?」 俊介「そやで。俺らのメインディッシュはこれから作るマグカツやもん」 啓太「それはそうだけど……。でも七条さん、そんなヤキソバなんて食べるんですか?」 七条「僕はジャンクフードが大好きなんですよ。これは大阪を代表するジャンクフードの一種でしょう? それに伊藤くんが作ってくれたとなると、付加価値は高まりますしね」 啓太「はああ〜っ(脱力)」 七条「じゃあこれ、頂いていきますね」 俊介「毎度〜。啓太にもほれ。食券1枚な」 啓太「ああ。サンキュ」 俊介「なんや。せっかくの食券やのに、えらい気のない返事やなあ」 啓太「別に、そんな訳じゃないけど」 俊介「ほんなら気を取り直して本日のメインディッシュ。マグカツ作るでぇ!!」 ・ ・ ・ ・ ・ 俊介「これはな刺身用で売ってるマグロのサクや。ちょっと横幅が広いから縦半分に切っとこか」 啓太「って俊介 !! マグカツってマグロのカツ?」 俊介「せやで。さ。手を止めんと。とんかつ作るときと一緒や。塩コショウしたら小麦粉はたいて溶き玉 子つけて、パン粉つける。できたらフライパンにちょっと多めの油入れて焼く。こないすると揚げる ほど油吸わんでええのや。ウィンナー・シュニッツェルっちゅうオーストリアの紙カツもな、揚げん とフライパンで作っとるんやで」 啓太「へええ。良く知ってるな」 俊介「トライアルの試合で行ったことあるねん。揚げてへん分ヘルシーやから、選手の間でも人気やっ たんやで」 啓太「そっか……。おまえって国際試合に出てるんだよな。ちょっと尊敬するよ」 俊介「謙虚やなあ、啓太は。そういうとこ愛してるでぇ」 啓太「ったく(笑)。ちょっと褒めるとこれだよ」 俊介「ひっくり返す時にな、油が少ない思たら少し足すねん。……せやな。ちょっと足しとこか」 啓太「ひっくり返すの大丈夫かな」 俊介「気にせんとひっくり返してや。あとは任せるからな」 啓太「任せるって……、おい。どうするんだよ」 俊介「とんかつ言うたら付け合せはキャベツやろ。今からキャベツの用意するんや」 啓太「千切りのキャベツだな」 俊介「それもええけど、今日は辛子風味や。とんかつほどこってりしてへんから、千切りでなくても脂っ こうならへんねん」 啓太「へええ」 俊介「キャベツは3センチ角くらいに切ってさっと湯通しするやろ。お湯に入れとく時間はキャベツの分 厚さとかでも変るし、まあお好みの時間で、いう感じやな。湯通ししてる間にボウルにしょうゆと 練り辛子入れて、辛子しょうゆを作っとくんやけど、あんまりようけはいらん。ふたり分で大さじ1 もあったら多すぎるくらいや。そこにざるで水気を切ったキャベツを一気に放りこんで混ぜる。 以上終わり。簡単やろ? それに食堂のおばちゃんから差し入れしてもろたトマトをつけたら、付 け合せは完成や。どや? そっちはできたか?」 啓太「うん。こんなもんかなあ。ちゃんと火が通ったかどうかは不安だけど」 俊介「気にせんでええで。どうせ刺身で食べられるマグロや」 啓太「あ、そっか。そうだったな」 俊介「そしたらそれを、食べやすい適当な大きさに切って、とんかつソースとケチャップを混ぜたソース を添えたら……。マグカツの出来上がりや〜 !!」 ・ ・ ・ ・ ・ 俊介「どや? 啓太」 啓太「すごいよ俊介。本物のとんかつと変んないよ、これ」 俊介「せやろ? 脂っこくない分、なんぼでもいけるで」 啓太「このケチャップのソースとも良く合ってるし」 俊介「モノがモノやからな、しょうゆでもいけるねんけど、今日はつけあわせが辛子しょうゆ和えやった からケチャップソースにしたんや」 啓太「ふんふん(もぐもぐ)」 俊介「あとな、塩コショウしたマグロのサクをミディアム・レアに焼いて、上から熱々のガーリックオイル かけたら、マグステーキの出来上がりや。こっちもいけるで。今度やってみ」 啓太「へええ〜っ」 俊介「マグカツはとんかつみたいに冷えても脂が固まるっちゅう程やないから、弁当のおかずにも最適 やしな。そのときはちょっと塩コショウを濃い目にしたらええかもな」 ・ ・ ・ ・ ・ 啓太「ああ美味しかった。俊介、今日は有難うな。ごちそうさま」 俊介「そうか? そら良かった。ほな腹ごなし、言うことで……」 啓太「ん?」 俊介「今からちょっとデリバ行こか。華道部から大型の花瓶2つ、玄関まで運んでくれって言われてん ねん。マジ大きいから、ひとりでふたつは運べんのや。どうせまた学内見学者が来よる……。 あれ? 啓太。どないしたんや?」 啓太「……どうせそんなことだろうと思ってたよ……」 俊介「そうか。ほな行くでぇ !! 食後の運動で腹が減ったら、さっき七条にもろた食券で何か食べよな !!」 |
いずみんから一言。 |
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