啓太くんのお料理教室 |
〜7. 春のパスタ 2種〜 |
講師・海野聡 |
啓太「海野先生……。もうお昼ですね……」 海野「そうだねぇ。そろそろ起きなきゃ……」 啓太「なんだかトノサマがいないと寝過ごしちゃいますね」 海野「うん……。いたら『ごはん、ごはん』って、うるさいからねぇ」 啓太「俺が泊まりにくるたびに預けられちゃって、トノサマにはちょっとかわいそうかなあ」 海野「う〜ん。でもねえ、伊藤くんと一緒にこうしてるの、やっぱりトノサマには見られたくないし……。 かと言って部屋から出しちゃうと拗ねるし」 啓太「そう言えば、凶暴化してましたっけ……(「100のお題 084 気まぐれ」をご参照ください !! ↑ 宣伝?)」 海野「そうなんだよねぇ。だからヒメちゃんとこにお泊りしてるのがいちばんいいと思うんだけど……」 啓太「ねえ先生……」 海野「なあに?」 啓太「早くお昼を食べて、一緒にトノサマを迎えに行きましょうよ。やっぱり俺、トノサマがいないと 寂しいです」 海野「そうだね……。起きようか」 啓太「はい。起きましょう……!」 ・ ・ ・ ・ ・ 海野「ごめんねぇ。いつもスパゲティばっかりで」 啓太「でも先生のスパゲティ美味しいですから、俺、好きですよ」 海野「そぅお? 僕、ココアと同じくらいスパゲティも得意なんだ。だからそう言ってもらうとうれしいよ」 啓太「今日は何のスパゲティですか?」 海野「うん。昨日、研究所の人にもらったもらったハマグリが、もう砂を吐いてると思うんだ。それで ボンゴレ風にしようかなあ」 啓太「うわぁ。ハマグリでボンゴレですか? 豪華ですねっ」 海野「でも潮汁する分くらいしかないから、もうひとつ何か作るね」 啓太「はいっ」 海野「うーん。何があったっけかなあ。ここんとこ忙しくて買い物に行ってなかったから……。ああ。 玉子とブロッコリーが見つかったから、菜の花パスタにしよう」 啓太「菜の花ですか? ハマグリといい組合せですね」 海野「うん。春っぽいしねぇ」 啓太「じゃあ、パスタ茹でていいですか?」 海野「うん。細いのがいいと思うよ」 啓太「はいっ」 海野「そうだぁ。伊藤くん、ブロッコリーの匂いって気になる?」 啓太「ブロッコリーですか? 気にしたことないですけど……?」 海野「じゃあいいや。パスタと一緒にブロッコリーも茹でちゃってよ」 啓太「一緒に、ですか?」 海野「うん。別々に茹でるの面倒でしょう? こうやってると、途中でブロッコリーだけ引き上げて水 に取ればいいから」 啓太「ホントだ。こんなの考えたことなかったです」 海野「ついでだから、ベランダで育ててるパセリも取ってきて刻んでおこうね。こっちは菜の花パスタ 用だよ」 ・ ・ ・ ・ ・ 海野「パスタを茹でてる間に、スープの用意をしておくんだよ」 啓太「はい」 海野「えっとね。ブイヨンでもほ○だしでもいいんだけど、量は少し。でも濃度は濃い目がいいな」 啓太「少しってどれくらいですか」 海野「え〜? どれくらいって言われても困っちゃうんだけど……。そうだなあ。ひとり分でカレーの スプーン3杯くらいかなあ。でも玉子の大きさや量でも変わるしねえ」 啓太「そうですね。でもそんなに少しだと作りにくいから、もうちょっとたくさん作ります」 海野「うん。それでいいよ」 啓太「えーっと、どっちにしようかな」 海野「ほん○しだったら両方に使えるけど、味が似たような感じになっちゃうかも」 啓太「あ、そっか。だったら今日は両方作ります」 海野「お願いできる? ちょっと面倒かもしれないけど」 啓太「溶かすだけですから(笑)」 ・ ・ ・ ・ ・ 海野「スープの準備ができたら、まずはトッピング用のスクランブルエッグを作るんだ」 啓太「はい」 海野「あ、そうだ。よく直接フライパンに玉子を割りこんだりするけど、今回はパス。ちゃんとボウルか 何かでよく溶いてから焼いてね」 啓太「どうしてですか?」 海野「白い部分が残ると『菜の花』じゃなくなっちゃうから」 啓太「あ、そっか。黄色じゃないと駄目なんだ」 海野「そういうこと。だから玉子に軽く塩コショウしたら、できるだけ細かくぽろぽろに。菜の花をイメ ージしながら焼くといいと思うよ」 啓太「菜の花。菜の花、っと」 海野「うん。上手、上手。それから、これはあくまでトッピングだからね。コレステロールが気になる人 とか玉子の摂取量を制限してる人とかはやめちゃって大丈夫」 啓太「うちのお父さんなんかはやめといた方が無難かな」 海野「焼けたらお皿にのけておいてね」 ・ ・ ・ ・ ・ 海野「次はね、えーっと、ハマグリかな」 啓太「はい」 海野「貝殻同士をこすり合わせるようにしながら、よーく洗うんだ。汚れやぬめりを残さないように 丁寧にね」 啓太「ちょっと楽しいけど、汚れとか残さないようにってのは難しいですね」 海野「うん。でもこれは殻つきの貝を料理するときの基本だからねぇ」 啓太「がんばりまーす」 海野「アクセントにする青みはね、それこそ菜の花の茹でたのでもいいし、グリーンアスパラを2本、 バツ印のかたちに置いてもいいよね。今日は三つ葉があったから、これは刻まずに葉っぱをば らばらにして使おうかな。何もないときなら青ねぎとかあさつきなんかを刻んでもいいと思うよ」 啓太「潮汁に入れられそうなものならオッケーってことですね」 海野「うん。そうだね」 啓太「ハマグリ洗えました」 海野「パスタも茹であがってきたみたい。あとはノンストップで行っちゃうからねぇ」 ・ ・ ・ ・ ・ 海野「まずはお鍋にほ○だしでとったお出汁を入れるんだけど、量はねぇ、うーん。ハマグリがちょうど 水没しちゃうくらい。でもまだハマグリは入れちゃいけないよぉ。よく煮立ってからね」 啓太「はあい」 海野「よく煮立ったらハマグリを入れて、口をあけたら外に出しちゃって」 啓太「いいんですか?」 海野「煮すぎると硬くなるからねぇ。このあと、味もつけなきゃいけないし。口が開いたら火は通ってる から大丈夫」 啓太「へーえ。そうなんだ……」 海野「アサリのボンゴレだったらニンニクとか入れるけど、ハマグリでそれは興醒めでしょう? だから もう単純に『 塩だけっ !! 』って感じで味を決めて、あと色がつかない程度に淡口醤油を入れる」 啓太「色がつかないくらいって、すごい少しじゃないですか。それで足りるんですか?」 海野「うん。僕は結構、味が変ると思うんだけどなあ。淡口って意外と塩分多いし。それに醤油の風味 って、微量でもしっかりしてるから」 啓太「そっか。味より風味、ですね」 海野「はい。よくできました。潮汁って基本は水と塩だけなんだよ。今日はパスタを入れるから濃い目 のお出汁を使ってるわけ。ハマグリと青味だけで頼りない感じのする人は、白ねぎや長ねぎの 白い部分を細切りして入れてもいいと思うよ。だけどあくまで目立たないようにね」 啓太「はい。……えっと。味はこれでいいかな」 海野「うん。大丈夫。じゃあ煮立ったらパスタ入れて。味がなじんだらハマグリを戻す。お皿にかたち よく盛り付けて、青味のブロッコリーをのせたら出来上がり」 ・ ・ ・ ・ ・ 海野「菜の花パスタは玉子で作るんだ。ひとりで2個かふたりで3個か……。まあそのくらい。ボウル でよく溶いて、濃い目に出したお出汁またはコンソメで割る」 啓太「さっき言ってた、カレーのスプーンで3杯くらい、ってやつですね」 海野「うん。今日はふたり分だからその倍だね。塩コショウもここでしておいて」 啓太「はい」 海野「コンソメを入れるときは、ニンニクや目立たない程度に刻んだベーコンを入れてもいいよ。でも その分の塩分は控えないとね」 啓太「塩辛くなっちゃいますもんね」 海野「はい。こっちもよくできました。じゃあフライパンにサラダオイルを入れてくれる?」 啓太「これくらいでいいですか?」 海野「いいんじゃないかな。ニンニクを入れるなら今ね。火をつける前に入れるんだ。ベーコンはフラ イパンが温まってから」 啓太「今日はどっちも入れないから……」 海野「もう火をつけちゃっていいよ」 啓太「はい」 海野「フライパンが十分に温まったら溶き玉子を一気に入れちゃう。あとは手早く、菜ばしを数本 持ってかき混ぜる。半熟までいく前にパスタを投入!」 啓太「えっ? えっ!?」 海野「さあ、混ぜて。混ぜてぇ〜」 啓太「うわ、は、はいっ」 海野「からめて。からめてぇ〜」 啓太「パスタが重いですぅ」 海野「手早くねぇ〜」 啓太「ひーん」 海野「はい。パスタに玉子がからんだら出来上がり。あとは余熱で固まるからね」 啓太「はぁ〜。慌しかった……」 海野「お皿に移して刻んだパセリを振りかけるでしょう? 最後にトッピング用のスクランブルエッグを 飾ったらおしまいだよ」 ・ ・ ・ ・ ・ 啓太「先生。これ、美味しいです」 海野「作るのも簡単だったでしょう?」 啓太「なんか……。すごく簡単なんですけど、簡単すぎて焦っちゃいました(笑)」 海野「うん。パスタ茹でてる間に全部の下ごしらえができちゃうからねえ。茹で上がったらあとは1分 かからないかなあ」 啓太「早く食べたいときにはいいですね」 海野「トノサマにまとわりつかれながらでもできるからね(笑)」 啓太「それにしても、とっても優しい味ですね」 海野「うん。日本のものだからね。菜の花パスタの方は、今日はコンソメを使ったけど、お出汁を使う ともっと優しい感じにしあがるよ」 啓太「……先生みたいにですか?」 海野「……伊藤くん……?」 啓太「あの……、えっと……」 海野「……うん……。トノサマは夕方まで預かってくれることになってるから……」 啓太「(ごめんよ、トノサマ。やっぱりすぐには迎えに行けないや……)」 |
いずみんから一言。 |
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