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夜逃げじゃないよ |
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鈴菱和希 プライベート飲み会 和希「すみませんね成瀬さん。急な会場変更で」 成瀬「Izmic Cafeなんて久しぶりだよ」 和希「オーナーに泣いて頼まれたんです。うちに来てーって」 成瀬「まあ飲み会なんてどこでやっても同じようなものだけど」 和希「クルマ置いて歩いてこなきゃいけないのが面倒ですけどね」 成瀬「だったら代行さん頼めばよかったのに。みんなみたいに」 和希「たまにはふたりで歩くのもいいですよ」 成瀬「まあ……歩いても20分くらいだしね」 和希「やっぱりクルマの方がよかったですか?」 成瀬「僕はいいよ。君と一緒にいられるならね? でもほかのメンバー にちゃんと場所変更の連絡できた?」 和希「フツーにやっててもトラブル起こすのがいますからねえ……」 成瀬「●◆(ピーッ)■▲とか」 和希「◎▽(ピーッ)□◇とか」 成瀬「手を変え品を変え」 和希「しかも毎年、毎年」 成瀬・和希「…………はぁぁ…………(タメイキ)」 和希「ま、こっちもやられっぱなしは腹が立つんで、ちょっと対策は 考えました」 成瀬「さすがは経営者。リスクヘッジは完璧?」 和希「まず、連絡は昨日の夜にしました。日にちも場所も昨日いきなり」 成瀬「なるほど。妨害工作しようにもその時間を与えない」 和希「そしてもうひとつ。連絡を篠宮さんに頼みました」 成瀬「ああ……、そう……」 和希「あのくそまじめな口調で電話連絡受けたら、誰も逆らったりしない でしょう(黒笑)」 成瀬「そだねー……(嘆息)。『逆らう』という言葉が適当かどうかは 置いといて」 和希「ふっふっふ……。今日はちゃんとみんな来ますよ。絶対にね」 成瀬「和希ぃ……。今まで痛い思いをしてきたのは僕も分かるけど、 お正月くらいは黒くなるのやめよ?」 和希「そんなに黒いで……。あ、啓太だ」 成瀬「向こうから来るのは岩井さんかな。篠宮さんは見えないけど」 和希「おーい、啓太!」 啓太「あ、和希! 成瀬さんも。今年もよろしくお願いします」 成瀬「うん。こちらこそよろしくね」 和希「中嶋さんは?」 啓太「クルマ置きに行ってる」 和希「カフェの前にもあったろ? 3台くらいは置けたはずだけど」 啓太「七条さんと隣り合うのが嫌だったんじゃないかなー」 和希「で、置きに行った駐車場で隣り合ったりしてたりとかな」 成瀬「それはいかにもありそうだけど、ありそうにない光景がそこに あるよ」 和希「おっと、まずい! 海野先生と王様がカフェの前で待ってる!」 啓太「うーん。組み合わせも不思議だし、海野先生がいちばんに来て ると言うのも……。和希? そんなに急がなくても」 和希「いや、鍵のありかを知ってるのは俺だけなんだ!」 海野「あ〜。遠藤くんたちだー。岩井くんや……あれは七条くんと西園 寺くんかな。みんなもぞろぞろやって来たねぇ」 丹羽「マジ時間か場所か間違ったかと思いはじめてたとこだ」 成瀬「海野先生とふたりだったら、僕も思うかもしれないね」 篠宮「みんな中に入らずに何をやっているんだ」 岩井「今……俺も聞こうとしてた……」 和希「いや、留守にするから勝手に入ってくれと言われてたんだ。鍵は えーっと。……あったあった」 丹羽「植木鉢の下かよ(笑)」 西園寺「古典的だな」 七条「古典的すぎてかえって安全なのかもしれませんよ?」 海野「ねーねー。このカフェって倒産したの?」 和希「引っ越すだけですよ」 海野「じゃあ夜逃げ?」 丹羽「ぷっ(笑)」 中嶋「なにやら楽しそうだな。見たところまだ酒も出ていないようだが」 啓太「中嶋さん! 今、海野先生が」 海野「ここのカフェが倒産なのか夜逃げなのか聞いてたんだ」 中嶋「どっちでもない。立ち退きだ」 篠宮「立ち退き?」 岩井「そう……だったのか……」 七条「たしかにこんな……なんていう鳥でしたっけ?」 丹羽「閑古鳥だろ」 七条「そう。その鳥が鳴いているみたいな暇な店ですからね。倒産して 夜逃げでも不思議はなさそうですが」 西園寺「たしかこのあたり一帯を持っていたジオシティーズが手を引い たんじゃなかったか」 和希「ええ。ですからオーナーは今、新しい物件を見に行ってます」 中嶋「しかし何だ、ここは。ただの閉店中の店じゃないか。店を使って くれと言ったんじゃなかったのか?」 篠宮「うむ。その割には何の用意もできていないな」 海野「料理もお酒もないねー」 成瀬「冷蔵庫に入れてあるのかな?」 啓太「空っぽですねえ」 西園寺「本当にここを使えと言ったのか?」 和希「いや、そう言えばニュアンスがちょっと違うかも。あれは…… そう『飲み会するんだったら店に来て』って言ったんだったな」 岩井「同じようだが……微妙に違う……」 七条「おや? ここに手紙がありますよ」 丹羽「どれどれ? えーっと、『みんな来てくれて有難う。お引越しの 荷物まとめをお願いします』だと?」 中嶋「つまらん。帰るぞ、啓太」 啓太「中嶋さん」 七条「そうですね。人でなしさんに同意するのもどうかと思いますが、 手伝う謂れもありませんし」 西園寺「おい、臣」 丹羽「ちょっと待てって。続きがあるんだ。『中嶋くん、七条くん。君たち の部屋は他の人にさわらせたくないでしょ?』」 中嶋「……」 七条「……」 丹羽「『岩井くんは、いろんな方から頂戴したギャラリーをまとめて欲し いの』」 岩井「……ああ……」 丹羽「『成瀬さんも一緒にぜひお願いします』」 成瀬「岩井さんひとりじゃあの量は無理かもね」 丹羽「『お題は海野先生と丹羽くんに』って俺かよ」 啓太「王様の出現率が高かったからかな」 海野「僕もご指名なんだ〜」 丹羽「『そして何より大事なのがみのりルームの移転です。これは和希 さん、啓太くん、西園寺さん、篠宮さんでお願いします』 西園寺「みのりちゃんの移転と言われたら仕方ないか」 中嶋「まあ……いろいろと世話にもなったしな」 啓太「タダ券ももらったし」 七条「そうですね。やりましょうか」 丹羽「うひょー。俺ってこんなこともやってたのか」 成瀬「岩井さん。いちいち画像を眺めてないで」 和希「そういう成瀬さんだって、さっきから手を動かさずに読んでばかり じゃないんですか?」 成瀬「いいんだよ。こっちは(笑)」 丹羽「それが引越しの面白みだろうがよ」 成瀬「畳の下の新聞とかね」 啓太「中嶋さんと七条さんは脇目もふらずに作業してるね」 篠宮「数も多いし見られたくないものも多いんだろう」 中嶋「……(憮然)……」 七条「……(黒笑)……」 啓太「いっぱいあるね」 和希「そうだな」 啓太「ここでいろんな人に会ったね。みのりちゃんだけじゃなくて。 いちいちお名前出さないけど、ホントにいろんな人に」 丹羽「それで元気をもらった」 中嶋「ああ。いい思い出が多いな」 岩井「忘れがたい……」 西園寺「ここでの思い出は一生の宝物だ」 七条「オーナーが独立して開店するときも大変でした」 海野「それまでオーナーが一緒にやってたみみずくは亡くなっちゃった んだよね。今頃みのりちゃんと会ってるかなあ」 成瀬「みのりちゃんはオーナーが独立した直後くらいにハンドルを変え てるからね。どうかな。みみずくが気づけば今頃、オーナーの話 で盛り上がってるかもしれないね」 篠宮「生きてさえいれば場所なんか変わってもまた必ず会える」 和希「そうだよ。倒産でも夜逃げでもない。ただの立ち退きなんだから。 新しい場所できっとまたいろんな人に会える」 啓太「じゃあ、とりあえずこの場所に」 全員「今まで本当に有難うございました! 移転先でもまたよろしくお願いします!」 |
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いずみんから一言。 寝耳に水の立ち退きでございます。 本当にこの場所では皆様にお世話になりました。 新しい場所でまた皆様にお目にかかります。 本当に有難うございました。 |
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