桜は舞い散った




       (鈴菱和希プライベート観桜飲み会)

和希「……(-""-;)」
丹羽「……(~ヘ~;)」
西園寺「……(-""-;)」
七条「……(-"-)」
和希「……だめだっ、もう我慢できない!啓太はまだか!」
丹羽「確かにおかしい。遅すぎるぜ。集合時間から、もう1時間以上だ」
西園寺「年賀状は来ない。飲み会にも遅れている。啓太に限ってこれは
   ない。ありえない」
七条「ああ、かわいそうな伊藤くん。あの人でなしさんに、いったいどんな
    目にあわされているんでしょう」
成瀬「そ、それはちょっと大げさなんじゃない(^_^;)。 だってほら、今まで
    だって七条の妨害で遅れたことは何度もあるわけだし」
七条「そんなことするはずがないじゃないですか。だって今年は年賀状が
    届かなかったんですよ? 一刻も早く無事を確認するのが先でしょう」
成瀬「じゃあまあ今回はそういうことにしておくけど。でも海野先生も篠宮
    さんたちもまだ来てないよ?」
丹羽「海野ちゃんはいつものこったろ。篠宮だって、どうせ岩井の体調が 
    悪かったのに決まってんだよ」
成瀬「ははは……(力ない笑い)。一刀両断だね」
西園寺「そんなことより今は……」

     ♪ ぴんぽ〜ん ♪

西園寺「来たか!」
和希「啓太っ!! ……なんだ、篠宮さんたちか」
篠宮「遅れてすまない。途中で卓人の腹具合が悪くなって……」
成瀬「なるほど……(苦笑)」
丹羽「誰もおまえらのことなんて心配してねーよ(苦笑)」
和希「まさかとは思いますが、念のためおふたりにお伺いします」
岩井「……なんだろう……」
篠宮「卓人の具合ならノロウイルスではないと思う」
七条「そんなことは心配しておりません」
篠宮「インフルエンザでもないはずだが」
丹羽「だから心配なんかしてねーってよ」
岩井「なら……何だろう……」
和希「そちらに啓太から年賀状が届いているか確認したかったんです」
篠宮「年賀状? いや」
岩井「今年はどんなだろうと……楽しみにしていたんだが……」
丹羽「つまり、おまえらんとこも届いてない、ということか」
岩井「うちだけじゃなかったのか……」
成瀬「今どき手書きじゃないんだから。作るんだったら印刷ボタンで全員
    分作るんじゃない?」
七条「そうは言いますが、郵便事故ということもありますから、やはり確認
    はしておきませんと」
丹羽「たまーにニュースになるよな。バイトが配るのが面倒で棄てちまう、
    ってやつ」
西園寺「集荷の段階で棄てたケースはなかったか?」
七条「あったかもしれません」

     ♪ ぴんぽ〜ん ♪

和希「よしっ!今度こそ啓太だっ」
七条「伊藤くんっ!」
篠宮「音で分かるのか?」
成瀬「というより、ぴんぽんが聞こえるたびに走ってるから(苦笑)」
丹羽「それに、いくらなんでも海野ちゃんよりは遅くならんだろうしな」
岩井「なるほど……」
啓太「みんなっ、遅くなってごめんなさい!!」
和希「啓太……よく無事で……(T ^ T)」
啓太「……はい?」
七条「いいんですよ。必死の思いで人でなしさんから逃げてこられたんで
    しょう? 無事に脱出できて良かったです」
啓太「あの〜…(・・?)…」
七条「それにしても水くさいじゃないですか。ただ一言『help』とだけ送信
    してくださいましたら、なんとしてでも場所を特定して助けに行きまし
   たのに」
啓太「えーっと('_'?)」
丹羽「ま、七条は大袈裟にしてもさ、困ったときにはいつでも言ってこいっ
    て」
西園寺「おまえが望めば、世界中のどこからでも駆けつけてやる。それを
   知らないおまえではあるまい」
啓太「……すみません、誰かこの状況を説明して……f(^_^;」
中嶋「おい……。まだこんなところにいたのか。玄関先で何をもたもたやっ
    てる。おまえは何をやらせてもアナログ通信並みだな」
啓太「中嶋さん! なんかみんながおかしいんです。誰も状況説明してく
    れないし」
和希「みんなで心配してたんですよっ!」
啓太「えっと……。20分遅れただけ……ですよね?」
中嶋「おまえが焼鶏を譲ったりしなかったら、ちゃーんと時間通りに来れた
    のに。なあ?」←いぢめっこ(笑)
啓太「でっ、でもっ!! 譲ったおかげで月餅をこんなにたくさん……」
成瀬「あ〜。今度は僕たちの方がわからないね(苦笑)。お互いに状況を
    説明しあう、っていうのはどうかな」
七条「そうですね。説明はきちんとして頂かないと」
和希「要約すると、1・年賀状が届かなかった。2・集合時間に1時間以上
    遅れた。の2点だな」
丹羽「な? 心配だろ?」
啓太「え? ええ、まあ……f(^_^;」
中嶋「おまえ達の言いたいことはわかったが、こいつはちまちまと年賀状
    を作っていたし、20分の遅刻でそこまで心配されるのも不可解だ」
西園寺「作っていた?」
七条「20分?」

     ♪ ぴんぽ〜ん ♪

海野「みんな〜。こんにちは〜」
成瀬「ようこそ、海野先生」
海野「みんな早いねえ〜。今日はがんばって早めに出たのになあ。また
    最後になっちゃったみたいだ」
和希「お待ちしてました」
海野「うん、お招き有難うね、成瀬くん。遠藤くんも.。トノサマもみんなに
    よろしくって」
丹羽「う……ぐ……」
海野「ところでみんな、こんな玄関先で何してるの? 中嶋くんなんてすご
    い荷物だし」
啓太「焼鶏なんです。酉年だからいいかなって」
海野「しょうけい?」
啓太「焼鶏と書いてしょうけい、です」
篠宮「おい遠藤。まずは先生に奥へ行ってもらえ。いつまでも玄関先では
    失礼だ」
成瀬「本当だ。先生、どうぞ」
海野「うん有難う。ところでしょうけいって何?」
啓太「中華のローストチキンなんです。美味しいから是非みんなに食べて
    もらおうと思って、予約しといたんです」
七条「さすがは伊藤くん。誰かさんと違って気配りが違いますね」
中嶋「ところが、だ。こいつときたらその焼鶏を急いでる人に譲ってしまっ
    たんだ」
啓太「だ、だってあのお姉さん急いでたし。30分で次が焼き上がるんだっ
    たら、そっちの方がみんなに熱々が届けられると思ったし」
中嶋「それでこの状況を招いた訳だ(嘲笑)」
啓太「……青汗青……」
岩井「だが……とても啓太らしい……」
丹羽「へへっ。おまえもそれがよくて啓太と一緒にいるんだろ?」
中嶋「……」←不満そうだが否定できない(笑)
啓太「それで、そのお姉さんがお礼にって、月餅とココナッツ団子とプリン
    パイをたくさんくれたんです」
成瀬「どれも美味しそうだね。有難う、啓太」
西園寺「おまえが薦めるのだから、その焼鶏とやらも、さぞやいい味なの
    だろうな」
啓太「そうなんです。中華街のお店なんですけど、中嶋さんに連れていっ
    てもらってやみつきになっちゃったくらい、美味しいんですよ〜」
七条「……ああ……そうですか……(無表情)……」
啓太「2羽分買ってきましたから、たっぷり食べてくださいっ!!」
丹羽「サンキューな、啓太。遠慮なくごちそうになるぜ」
海野「そうそう、鳥で思い出したんだけど」
和希「(またマッドな実験でも思いついたか?この人は。あとが大変なんだ
    けどなあ……)」
海野「伊藤くんからの年賀状は、今年も可愛かったねえ! 毎年どうやっ
    て考えてるんだろうって感心してるんだよ」
和希「あっ!」
七条「いっ、伊藤くん……?」
岩井「う?」
西園寺「えっ!?」
篠宮「お?」
成瀬「か、和希……!?」
丹羽「聞いたか!?」
啓太「有難うございます♪」
西園寺「礼などあとでいい。それより」
中嶋「俺は年賀状なんて字だけで十分だと言ってるんですがね。それは
    嫌だと、この容量の小さいアタマで考えているんです。褒めてやって
    下さって有難うございます」
七条「人でなしさんの見解はどうでもいいです。問題はそこではなく」
海野「あっ、でも中嶋くんと一緒にコウノトリに運ばれてきたのなら、ふたり
    は双子になっちゃわないかなあ」
啓太「え〜?双子ですかぁ〜?」←まんざらでもなかそう(笑)
篠宮「双子でも親子でもこの際かまわないから」
中嶋「この顔に眼鏡をかけても似合わないでしょう」←にこやかに辛辣(笑)
丹羽「い、い、い、いや。だからちょっと。そのらぶらぶ漫才はどうでもいい
    からよ」
海野「中嶋くんが伊藤くんに似るのかも?」
七条「海野先生?伊藤くんとのご歓談中大変申し訳ないのですが」
中嶋・啓太「それは嫌ですっ」←きっぱり(爆)
海野「あはははは、君たちホントに……」
和希「おいこらそこの3人っ!ちょっとはこっちの話も聞けよっ!!」
海野「遠藤くん?」
啓太「和希?」
成瀬「割り込んでごめんなさい先生。啓太にさっきから何回か声をかけて
    たんだ。ちょっと話を聞いてあげてくれる?」
啓太「俺?」
西園寺「そうだ。お前だ」
啓太「はい、何ですか?」
篠宮「お前と中嶋からの年賀状なんだがな、誰のところにも届いていない
    んだ」
中嶋「それはさっき言っただろう。こいつはちゃんと作っていた、とな」
岩井「だったら何故……海野先生にだけ届いたんだろう……」
中嶋「……なにやら、今日はじめて理性的な発言を聞いた気がするな」
啓太「だけど年賀状って……作ったのが前すぎて記憶にないかも……」
和希「作ったのは前でも出したのは、たかだか3カ月前だろう」
成瀬「それって十分すぎるくらい前だと思うけど(苦笑)」
啓太「うーん…………。作って……表書きも印刷して……。まとめて輪ゴ
    ムで止めて……。出しに行こうと思って……。……あれ?」
海野「あれ?」
啓太「あーっ!!」
西園寺「わかったのかっ!?」
海野「うんうん。そうだった。今日ちゃんともって来たよ〜」
七条「もってきた、ですか?」←片眉が跳ね上がる
海野「うん」←コートのポケットをごそごそ
丹羽「どういうことだよ」
啓太「クリスマスのちょっと前かなあ。海野先生がうちに来たんだよ」
中嶋「……ああ、そういえば特許に強い弁護士を、というんで3人ばかり
    紹介したな」
啓太「あの時ですよっ、出かけるついでに出そうと思って下駄箱の上に
    置いといた年賀状」
海野「僕が間違えて一緒にもって帰っちゃったんだ。上に書類を置いた
    からだねぇ。はい、えーっとこれが西園寺くんで……、こっちが七条
    くん……」
啓太「先生、あの時ポストに入れておくって(汗)」
海野「うん。でもここで会うメンバーのは直接手渡しする方がいいかなーっ
    て思ったんだよね〜?」
丹羽「……花見なんかにならなけりゃな」
七条「つまり年明け早々に飲み会があれば、僕たちはこんなに心配する
    必要もなかった、ということですね」
和希「って、悪いのは俺かよ(憮然)」
成瀬「うーん、和希はねぇ、年明けからこっち、ほとんど日本にいなかった
   んだよ。仕事もあったし、僕が全豪オープンで勝ち進んだりしたから」
和希「2月は2月で新入生候補者を見に行ったりしないといけなくて、1月
    2月で家に帰ったのって5日くらいしかないんだぞ」
西園寺「なるほど。5日も家にいた訳だ」
七条「飲み会なんて準備を入れても半日かからない気がするのですが」
丹羽「だったら十分時間はあったな。どうせ掃除や料理は成瀬がするんだ
    ろうしな」
和希「いや確かに料理は成瀬さんに作ってもらいましたけどっ」
成瀬「献立とかレイアウトとか、いろいろ考えてたんだよ、和希は。花見の
    飲み会ははじめてだったしね」
中嶋「ああ……。ようやく状況が見えてきたぞ。つまり遠藤がいつもの通り
    新年に飲み会をやっていれば、俺たちはこんな謂れのない非難をあ
    びることもなかったわけだ」
西園寺「端的に言えばそういうことだな」
啓太「えーっと、皆さんが俺のことを心配してくださってたのはよくわかりま
    した。本当に有難うございます。皆さんにこんなに思って頂いて、俺
    は幸せ者なんだってよくわかりました。だからもうあんまり和希を責
    めないでやってください」
和希「けぇたあ……。オニイチャン嬉しいぞ……(T^T)」
啓太「お正月の飲み会じゃなくなったけど、ここから見える桜はすごくきれ
    いだし、桜のお花見だって楽しいですよ?」
篠宮「そうだな。今、気がついたが伊藤のいう通りだ」
七条「元はと言えば海野先生のお茶目が招いたことですしね」
西園寺「啓太の無事が確かめられたのだから、わたしとしてももう言うこと
    はない。啓太と一緒に桜を楽しもう」
丹羽「へへっ。啓太のことばかりで誰も桜なんて見ちゃいなかったんだぜ」
啓太「……それはもったいなさすぎです!」
海野「ホントに見事な枝垂れ桜だよねえ」
岩井「ああ……。ソメイヨシノよりわずかに色が濃くて、ところどころに見え
    る浅い緑の葉が花色をひきたてている。こんな美しい花を、啓太に
    言われるまで見ていなかった自分を恥じる……」
成瀬「さあみんな、用意ができたから焼鶏を切ろうよ。せっかく啓太ができ
   たてを持ってきてくれたんだから、少しでもあったかいうちに。ね?」
啓太「そうですよ。美味しいうちに食べてください♪」
丹羽「おっしゃー。俺に任せろ」
海野「あー。ずるいー。僕も切りたーいー」
丹羽「んじゃ1匹ずつな」
七条「海野先生がやると、切り分けるというより解剖みたいになりそうです
    が」
成瀬「じゃあふたりにお願いしようかな。中央のテーブルに用意したので」
篠宮「さ、卓人。水分を含んだものを少し食べた方がいい」
七条「僕はまずプリンパイでしょうか」

成瀬「あ、和希。ちょっと……」
和希「なんですか成瀬さん。こんな隣の部屋までひっぱってきて」
成瀬「啓太が遅れてきた件なんだけど」
和希「遅れたのは中華街に行ってたからでしょう?」
成瀬「啓太たちは『20分』遅れただけって言ってた」
和希「それは啓太の勘違いでしょう。現にほかのメンバーはちゃんと来て
    るんだし」
成瀬「だけどね。君たち、啓太の年賀状の件で話し合うのに、1時間早く
    集まったんじゃなかったっけ」
和希「…………あ…………」
成瀬「海野先生だって言ってたよ。『今日は早く出たのに』って。まあ今の
    ところ誰も気づいてないみたいだけどね」
和希「いいですか、絶対にこのことを連中に気づかれないようにしてくださ
    いよ! ぜったいですからねっ!!

成瀬の言葉通り、すでに酒の入っていた連中が気がついたのは、ずっと
ずっと後のことになる。
だが成瀬の口を封じるのに和希が翌日の仕事を休んだのは、誰も知らな
い。はず。







いずみんから一言。

年々、UPの日が遅くなっている「新年会」ですが、なんとついに花見になってしまいました……!
まさしく「うひゃ〜」でございます。
日本に花見という風習があったことを、ただひたすら喜んでおります。(汗)。



作品リストへはウインドウを閉じてお戻りください。