１０年お正月　side Hide

（鈴菱和希プライベート新年飲み会）

丹羽「はぁ～っ……」
和希「はあぁ……」
西園寺「ふぅ……」
七条「……」
和希「はあはあぁ～……」
篠宮「おい、何をやってる。今日は『一応』新年会だ。ため息合戦の日じゃないだろう」
丹羽「構わねえだろ。主催者だってハァハァ言ってるんだ」
成瀬「なんだか……。そこだけ聞いてると、アヤシイ集団みたいだね(汗)」
岩井「……すでに、十分アヤシイと思う……」
七条「さりげなく辛辣ではありますが、否定できないのが辛いところです」
丹羽「でもよう。新年早々、年賀状に悩まされる、ってのもなあ……」
西園寺「しかも毎年、だ」
篠宮「それは俺も否定しないが」
丹羽「だろ？」
和希「あの写真さえなければまだ……（タメイキ）」
西園寺「あれは明らかにわたしたちへの挑戦だった」
成瀬「去年ほど過激じゃなかったけどね？」
岩井「俺も……。構図は悪くなかったと思う……」
篠宮「ああ。『構図は』悪くなかったとも。ラグビーのトライと虎をかけた図柄も、『何事にも
　　　　トライしていく年にします』というコメントも、決して悪くはなかった」
西園寺「それが啓太なら、な」
七条「そう。トライをして抜いて行ったのが伊藤くんなら、僕だって微笑ましい年賀状だと思
　　　　いましたよ。抜いたのがあの方で、抜かれて置き去りにされたのが僕たちであったと
　　　　いうところに、言い知れない非常な悪意を感じるんです」
篠宮「確かに。いくら処理してあるとはいえ、一目で俺たちと分かる写真を使う必要はない」
丹羽「しかも啓太を小脇に抱えやがってよ。啓太はラグビーボールじゃねぇ！」
成瀬「そんなに嫌なら喪中欠礼でも出しとけば？」
和希「何を言うんですか、成瀬さんっ。そんなことしたらっ！　可愛い啓太からの年賀状も
　　　　来なくなるじゃないですかっ！」
岩井「……そんなことになれば、それこそ本末転倒だ……」
成瀬「はいはい(苦笑)」
七条「でも伊藤くんも伊藤くんです。毎年、殊更のように『伊藤啓太様』と書いて出してるん
　　　　ですから、いい加減、気づいてくれないでしょうか」
篠宮「そうか。はっきり言ってやればいいのだな。『伊藤個人でくれ』、と」
丹羽「あ。俺やった」
成瀬「そうなんだ？」
丹羽「冗談めかして『お年玉の切手が欲しいから別々に送ってくれ』って」
西園寺「ほお？」
和希「それでっ！　どうなりました？(期待！)」
丹羽「おんなじ葉書で名前だけそれぞれのが２枚きた……(涙)」
和希「………………あぁ……」
西園寺「なるほど。ダメージは倍か(鼻笑)」
七条「郁。そんなふうに言ってはいけませんよ。会長のおかげで僕たちは馬鹿な真似を
　　　せずにすんだのですから」
和希「俺は……。俺はあんな年賀状を見るために、啓太に着ぐるみを作ってやったわけ
　　　　じゃないんだ……(涙)」
丹羽「また手作りかよ(呆)」
成瀬「トラの縞をパッチワークにしたんだよね」
七条「しかもパッチワーク、ですか」
西園寺「お前なら新しくテキスタイルくらい作ったかと思ったが」←嫌味（笑）
成瀬「作らせてたよね？」
西園寺「作らせたのか……(呆)」←嫌味が通じなかったのでよけいに呆れた（笑）
和希「何度やり直させても、啓太のかわいらしさを引き立てるようなのができなかったん
　　　　です(憮然)」
七条「だからといってパッチワークで手作りするのもどうかと思いますが？」
和希「？　縫い目なら気にならないよう、厚めのフリースで総裏にしましたよ？」
丹羽「そういうことじゃなくて(苦笑)」
啓太「何が『そういうことじゃない』んですか？」
和希「啓太！　遅かったな」
啓太「ここの駐車場が満車って言われてさ」
和希「満車？」
啓太「うん。それで近くの駐車場に行ったら、やっぱりどこも満車で……。結局駅前まで
　　　　行っちゃったんだ」
和希「おかしいな。他所は知らないけどここだけはそんなはず……」
岩井「それは……。去年も似たようなことを聞いた……」
丹羽「おい。もしかして、もしかする、ってやつか？」
和希「七条さん！」
七条「(黒笑)」
篠宮「まったくお前たちときたら！　七条、早く翼をたため。中嶋が来たらどうする。新年早
　　　　々、不毛な応酬はいらん」
和希「そうだ。啓太、中嶋さんは？　駐車場が見つからなくて帰った、とか？」
西園寺「だったら帰りはわたしの車に乗るといい。送ってやるぞ」
丹羽「俺のクルマでいいだろ？　どうせ同じマンションなんだから」
啓太「もー。待って下さいよ(苦笑)。下で駐車場に困った海野先生を見つけて、場所を教え
　　　　るのに一緒に乗って行ったんです。だからもうちょっとかかるかも？」
一同「（……なんだ。やっぱり来るのか）」

海野「中嶋くん、有難うね。僕ひとりだったら困ってたよ」
成瀬「あ？　噂をすれば……」
海野「ごめんね～、みんな。遅くなっちゃって」
和希「先生、申し訳ありませんっ(汗)」
海野「いいよ～。別に。遅くなった僕が悪いんだし、うまく伊藤くんたちに会えたから、中嶋く
　　　　んに案内してもらえたしね」
中嶋「ゲストの駐車スペースさえ確保できていないとはな。さすがの俺も想定していなかっ
　　　　た。ホスト失格だな」
和希「いや、その……(滝汗)」
中嶋「まあ大方、どこぞのハッカーもどきにデータを改竄でもされたんだろうが……」
和希「そっ、そうな……」
中嶋「駐車スペースを確保できなかったことより、そんな奴らに破られる程度のセキュリティ
　　　　しか組めなかったところが問題だよなあ」←いぢめっ子(笑)
和希「……」←図星すぎて言い返すことばが見つからない(笑)。
海野「伊藤くんもごめんね～。中嶋くん借りちゃって」←マイペース（笑）
中嶋「いいえ。困った時にはお互いさまです（にっこり）」←このにこやかさがアヤシイ(笑)
啓太「それにいつも一緒に、って訳じゃないですから～（爽笑）」
丹羽「そうなのかよ？」
啓太「そうですよ？　絶対一緒なのは寝る時くらいですもん」←無自覚（笑）
丹羽「寝……っ！」
七条「……会長は自らダメージを大きくするタイプだったのですね」
西園寺「まあ、鼻を押さえて飛び出して行かなくなった分、成長したと褒めてやれ」
丹羽「……(T_T)……」
海野「それより伊藤くん」
啓太「はい？」
海野「今年の年賀状、良かったよ～」
啓太「そうですか♪」
海野「うん。トラの子になった伊藤くんも可愛かったし、それを小脇に猫抱えした中嶋くんも
　　　　コミカルだったしね」
啓太「なかなかネコ系に見えなくて、何度も撮り直したんです」
中嶋「力を抜けと言ったのにやらないからだ」
啓太「だって難しいです～（涙目）」
中嶋「力を抜くぐらい毎晩やっているだろう。同じようにすればいい」←わざと普通の声（笑）
丹羽「ぶっ……！」
七条「ああ……。会長はやはり鼻を押さえて飛び出してしまいましたね」
西園寺「ふん。所詮はその程度の男だったということだ」

啓太「あれ？王様どうしちゃったのかな？」
成瀬「ちょっと飲みすぎただけだと思うよ？」
啓太「ふうん？」
成瀬「(会長。努力はしましたよ・苦笑)」
篠宮「あまり追求しないでやってくれ(苦笑)」
和希「ま、そのうち戻って来る王様は置いといて(苦笑)」
啓太「うん」
和希「海野先生じゃないけど、あの着ぐるみ、良く似合ってたから、もう少し大きい写真が見たかったなあ」
七条「そうですね。あれでは少し小さすぎました」
啓太「そう？」
篠宮「うむ。おまえのことだからネコの苦手な丹羽に気をつかったのだろうが……」
西園寺「わたしはむしろおまえのアップで見たかった」
啓太「え？　最初は俺のアップだったんです。今年の年賀状」
中嶋「それは嫌だとこいつが泣いてお願いするから、わざわざ変えてやったんだ。あのまま
　　　　だったら手間もかからなかったのに……(わざとらしいタメイキ)」
啓太「だ、だって最初のは……(泣)」
和希「さ、最初のは……？」
啓太「怖いし。何より危なかったんだー(泣)」
西園寺「怖くて。何より危ない。だと？」
七条「……(無表情)……」
成瀬「なんだか聞くのも怖い気がするけど(苦笑)」
篠宮「だが聞かずにいるのはもっと怖いな」
七条「同感です」
和希「け。啓太。それさ、どんなだったんだ？　その……言える範囲でいいから(冷汗)」
啓太「えっと……。葉書の真ん中よりちょっと上の方に四角い枠があって」
和希「うん」
啓太「俺の顔がアップになってて」
和希「うん」
啓太「画面の端から延びてきてるトラのしっぽを掴んで、先っぽにキスしてるんだ……」
和希「啓太、それアブな過ぎ……(泣)」
篠宮「(しっぽ？本当にしっぽなのか？)」
西園寺「(やはり挑戦か？)」
七条「……(無表情)……」
成瀬「(ひそひそと)岩井さん。とってもイケナイものに色を塗って、トラのしっぽに見せること
　　　　はできます？」
岩井「(ひそひそしなくても小声・笑)色だけならしっぽの毛並が出ないから……」
篠宮「(やっぱりひそひそ)そうか。公序良俗に反するものとは違うんだな。安心した」
岩井「だが……。それなりの材質のもので作って、アレにかぶせることはできる……」
篠宮「やはり駄目か……(タメイキ)」
成瀬「中嶋さんが一緒ならまだしも、フレーム内にいない訳ですからね」
海野「あー。それも可愛かっただろうね」← どこまでもマイペース(笑)
啓太「可愛くでも危ないのは嫌ですー」
成瀬「だろうねえ(苦笑)」
啓太「あんな……。あんな、本物のトラのしっぽなんてー(涙)」
岩井「ホンモノ、なのか……」
西園寺「本物？」
篠宮「本物とはどういうことだ」
中嶋「事務所がちょっとサーカス団のトラブルを処理してな。しっぽを貸してくれと言ったら
　　　　団長が乗ってきた」
啓太「慣れてるから平気だって言われても、俺ホントに怖くて怖くて……(泣)」
和希「け、啓太？　もしかして『怖い』とか『危ない』とかっていうのは……」
啓太「画面に入るからって、中嶋さんがトラを檻から出しちゃったんだー。近づいただけで
　　　　吠えられるし……。思い出しても怖いよぉ(泣)」
和希「そ、そうか。それは怖かったな(ごめん。啓太。お兄ちゃんイケナイ発想してた……)」
篠宮「中嶋。伊藤に危ない真似をさせるんじゃない(いかん。不純なことを考えてしまった。
　　　　恥じなければ……)」
中嶋「俺がこいつを危ない目にあわせるとでも思うか？」
七条「ええ。思いますとも」← 再起動した(笑)
中嶋「ふん。こいつに危ない思いをさせていいのは俺だけだ。たかがトラごときに、好きに
　　　　させてたまるか」
成瀬「ま、まあ。そうかもしれないですけど(みんな完全に違うコト考えてたな……(苦笑))」
七条「本物のトラを使うなんて、やはりひとでなしです(それに比べて、伊藤くんはなんて
　　　　純粋なんでしょう)」
西園寺「まあ、変えて貰えて良かったな。いろんな意味で、だが」
岩井「ああ……、俺も……。そう思う……」
和希「それにっ。トラの着ぐるみも良く似合ってたしなっ」

　トラのしっぽは絶対！倫理コードに引っかかるモノ(苦笑)を連想させるつもりだったはずだ！と心の中で確信しつつも、疑うことを知らない啓太の前でそんなことも言えず、ただトラとツーショット写真を撮らずにすんで良かったと、わざとらしく喜びあう一同であった(爆)。

海野「あ、そうだ。遠藤くん」
和希「はい？」
海野「着ぐるみはやっぱり君のお手製？」
和希「はいっ」
海野「新年早々のリコールで悪いんだけど。しっぽの先が黄色になってたんだ。トラのしっ
　　　　ぽの先は必ず黒なんだよ。回収して訂正しておいてね～」