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ウマとシカの日々 |
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滝「はいはーい、皆さん、時間過ぎてんで〜。早よ集まってや〜」 西園寺「ふん。これでやっと半分か」 七条「いいじゃないですか。人でなしさんの顔を見るのが1秒でも遅くなって」 丹羽「年が明けても相変わらずだな(苦笑)」 海野「元気な証拠だよね〜」← 天然(笑) 七条「……元気……?」 成瀬「それにしても、今年はなんだか集まるのが遅いね」 和希「……オーナーが喪中で、こういうのはパスだと思ってましたからね」 篠宮「や、すまない。遅くなった」 岩井「……橋向こうまで……出かけていて……」 丹羽「おまえらも喪中がネックになったクチかよ」 篠宮「常識がある、と言ってくれ」 和希「そう。正月に集まるなんて、普通は思わないでしょう」 滝「何やことばにとげがあるなぁ」 成瀬「時差ボケ解消で寝てたのをたたき起こされたんだよ。許してやって?」 滝「ま、正月やし。らぶらぶ度に免じて聞かんかったことにしとくわ」 成瀬「サンキュ、俊介」 滝「そのかわりに食券1枚な」 成瀬「……はいはい(苦笑)」 啓太「うわー。もしかして俺たちが最後?」 中嶋「そのようだな」 啓太「ごめんなさい(しょんぼり)」 西園寺「中嶋が遅れるとは珍しいな。そういう点では評価のできる男だと思っていたが」 篠宮「まさか公序良俗に反する理由ではあるまいな」 丹羽「公序……」 七条「鼻血は吹かないでくださいね。掃除業者に迷惑がかかりますから」 成瀬「いくらなんでもこの程度で鼻血はないでしょう。ねえ? 会長」 丹羽「お? おうっ…」←ぢつは吹きかけていた(笑) 海野「え〜? 丹羽くん、鼻でも打ったの?」←やっぱり天然(笑) 丹羽「ちげーよ」 滝「もう……。会長の鼻血なんかどうでもええですやん。揃ってんから話を進めましょ」 中嶋「賢明だ。それに俺たちが遅れたのは、単に渋滞にひっかかった所為だ」 啓太「俺が遠くの和菓子屋さんに行きたいって言ったから……(しょんぼり)」 西園寺「和菓子か」 啓太「ニンジンくわえたウマの顔のおまんじゅうがあるってオーナーに聞いたんです。 お正月だし、ケーキよりいいかな、って」 和希「啓太の選択はとてもいいと思うよ。思うけど」 成瀬「ごめん。早く進めてやってくれる? ちょっとでも早く寝たいらしいから(苦笑)」 丹羽「時差ボケってそんなにつらいか?」 中嶋「さあな(鼻笑)」 七条「少なくとも僕はそれほどでも。そろそろ引退の時期なんじゃないですか」 啓太「とっとにかく、みんなの分も買ってきたから、お茶しながらやろうよ」 滝「ひゃ〜。啓太、気ぃきくなあ」 西園寺「ということだ。臣、お茶だ」 七条「はい、郁」 篠宮「遠藤には特別濃いのを淹れてやれ。目が覚める」 滝「はい皆さ〜ん。お茶とお菓子はいきわたりましたか〜。ほなはじめまっせ〜 『あなたは今年の初日の出をどこで見ましたか』 やそうです」 岩井「意外に……オーソドックスだ……」 篠宮「だが喪中でも使えないこともないお題だな」 西園寺「1月1日の日の出は誰の上にも平等に訪れてるからな」 和希「そういうことならさくさく終わらせよう。俺はオーストラリアから帰る飛行機の上だ」 啓太「あれ? 帰国したばっかりじゃなかったの?」 七条「オーストラリアじゃ時差もないですし」 和希「だから、また出かけたんだよ。今度はロス」 丹羽「思いっきり時差あるな」 和希「だけど初日の出はよかった。天気が悪くて厚い雲の上を飛んでたんだよ。そしたら 富士山がちょこっとだけアタマ出しててさ。初日の出のオレンジ色の光が雲の上と 富士山のアタマに反射して、すっごくきれかった。思わず拝んじゃったくらいに」 中嶋「ほう? 現実主義であるべきはずのおまえが拝むか」 七条「やはり引退なさった方が」 和希「(こういうときだけばっちり息が合うのかよ)」 海野「拝むくらいにきれかったんだね。僕も見たかったなあ」 和希「(うう、海野先生……。その素直さがうれしいです……(嬉泣)。もっとボーナス はずめばよかった)」 滝「そういう海野ちゃんはどこで見たん?」 海野「僕は寝てたよ〜。そんな早くに起きられないからね〜」 丹羽「早いったってよ。真冬だぜ? 7時前後くらいだろう」 海野「十分早朝だよ? トノサマだって起きてないんじゃないかなあ」 啓太「海野先生が遅刻する理由がわかった気がする……(汗)」 成瀬「だね……(汗)」 岩井「俺も……寝てた……」 丹羽「いや、おまえはむしろ寝てろ」 篠宮「そうだ卓人。睡眠は大切にしないと。おまえは寝なさすぎる(くどくど)」 和希「(ああ……。はじまっちゃったよ。長くなったら嫌だなあ……)」← こっそりタメイキ 篠宮「そもそも睡眠と言うのは人間にとって……(くどくど)」 滝「篠宮さんはやっぱり神社で……」 和希「(さすがだ俊介! 絶妙のタイミングで話を引き戻したぞ。このまま一気に行っちゃ ってくれ!)」 篠宮「あ、いや。俺は見てないんだ」 七条「それは意外ですね」 西園寺「そうでもない。無理だっただけだろう」 啓太「無理、なんですか?」 篠宮「ああ。夜明けくらいからまた参拝の人が増えてくるんだ。お札の授与をしていたら、 いつの間にか日は昇ってしまっているな」 海野「ふ〜ん。起きてるのに見られないのって残念だよね」 丹羽「起きてて日の出が見られるところにいても、初日の出に振られるヤツだっているさ」 中嶋「振られるのは女だけじゃなかったんだな」 丹羽「ぬかせ。天気が悪かっただけだ」 滝「あれ? 元旦は概ねええ天気やった、ってニュースで……」 丹羽「日が昇るとこあたりだけに分厚い雲がかかっててよ」 海野「うあ〜。それは不運だったねえ」 丹羽「ほかはまったく、雲の「く」の字もなかったんだがなあ。そこだけこう、ずーんと」 七条「なにやら今年の会長の行く末を表してるかのようですね」 啓太「じゃあ和希はその上空にいたのかな」 和希「かもな。曇ってたからこそあんな初日の出が見られたわけだから」 海野「遠藤くんは幸運だったのにねえ」← 何気に傷口に塩をぬりこんでいる(笑) 丹羽「くくぅ……っ(男泣)」 成瀬「ハニーの今年は薔薇色だねっ」 西園寺「ハニーひとりが薔薇色でもな」 成瀬「大丈夫。初日の出なら僕もちゃんと見たから」 啓太「一緒じゃなかったんですか」 成瀬「石垣島で合宿中だったからね。ランニング中にちゃんと見たよ」 岩井「石垣島か……。温かそうだ……」 成瀬「きれいだったよ。今度は一緒に見ようね、ハニー」 和希「わかったから早く寝かせて」 中嶋「ほう? 自分で『ハニー』と認めたか(嘲笑)」 海野「ねーねー。誰が誰のハニーなの?」 一同「……(汗)……」 滝「ま、次いきましょ。次」 七条「そうですね。気を取り直して」 啓太「次は俺たちでいい?」 滝「ええで」 啓太「俺と中嶋さんはドライブに行った先で見たよ。えっと……A岬の先端」 篠宮「いい場所だ」 岩井「きれいな場所だ」 丹羽「でも意外だ」 西園寺「ああ。すごく」 成瀬「見たとしてもベッドの中だと思ってたからねえ」 中嶋「俺はそれでよかったのに、こいつが『初日の出を見に行きたい』と言い張ってな」 啓太「えへへ〜。普通のお正月みたいで楽しかったです(嬉)(楽)(幸)」 中嶋「ふ……。馬鹿な子だ」 海野「でも馬鹿な子ほどかわいいんだよねー」← 天然(笑) 成瀬「賢い子もかわいいけどね(笑)」 滝「はいはい。ごちそうさん。……え〜っと。まだなんは西園寺と七条か?」 西園寺「わたしはいつもの旅館だ。檜の露天風呂につかっていたら日が昇った」 丹羽「いつもの……って。豪勢だよな」 篠宮「いつもの、だから泊まれるんだ。正月に露天風呂のある旅館なんて、金を出した から泊まれるってものじゃない」 和希「(そうそう。じいさんが毎年行ってたから、親父たちも駅伝をナマで見てる)」 西園寺「うちは曾祖父母が新婚旅行に行って以来、正月は某温泉の相模屋だ」 丹羽「ヒュ〜! 豪勢どころの騒ぎじゃねえな」 和希「(うちよりいいとこに泊まってるな……。さすがは西園寺家というべきか)」 啓太「某温泉の相模屋なんて、旅行番組の中だけの話かと思ってた」 西園寺「離れにある檜の露天風呂は毎年年末に手入れがされていて、正月にはとても いい香りがする。南天の赤い実に雪が積もっているのもいい風情で、わたしは 特にあの部屋が気に入っているんだ」 滝「なんや別世界すぎて羨ましいとか思わへんな」 啓太「ホント。やっぱり旅行番組だよ」 滝「せやな。ほな次は七条や」 七条「僕のはたいしたことありませんよ。夜通しネットサーフィンしてチャットして。チョコミ ントのアイスクリームが食べたくなったのに冷蔵庫にはラムレーズンしかなかった のでコンビニに買いに行きました。そのときですね。陽が昇ってきたのは」 中嶋「夜明けにわざわざアイスクリームを買いに行くとは、ご苦労なことだ」 七条「わざわざ起きたわけではありませんし。それに誰が『日本で』と言いました? 僕と 母はマイアミのコテージにいたんです。寒くもない夜明けって、外に出たくなりませ んか?」 中嶋「さあな」 岩井「マイアミ……。美しいところだろうか……」 七条「母が友人から借りたというので行っただけですが……。まあきれいなのはきれいだ と思いますよ。海とビルが入りくんでいるかと思ったら、コテージの周辺は植物園の 中みたいでしたから。大きくて緑の濃い葉っぱが重なり合っている間からは、ワニ でも出てきそうな雰囲気でした」 成瀬「アリゲータかな」 岩井「描くと楽しそうだ……」 丹羽「マイアミってばフロリダだよな。キーウエストにがーっと一直線もいいけど、タンパと か行ってみたいよな。愛と青春の旅立ち!」 中嶋「ロケ地の一部というだけだろう」 海野「バミューダトライアングルにはどんな動物がいるんだろうねえ(うっとり)」 啓太「ネズミの世界も楽しいだろうなあ(うっとり)」 和希「……啓太」 啓太「何? 和希」 和希「ネズミの世界は中嶋さんに連れてってもらえ。岩井さんと王様と海野先生は、どう ぞフロリダでもアリゾナでもお好きなだけ……」 成瀬「はいはい。あとは俊介が終われば寝られるんだよね」 篠宮「滝。申し訳ないが、うるさいからさっさとやってもらえるか」 滝「ええですよ。俺なんか簡単ですもん。チャリで神戸まで走って港で見た。それだけ」 西園寺「なるほど。とてもシンプルだ」 滝「ほんまはオーナーおすすめの須磨の海岸まで行くつもりやってんけど、連れがおった からちょい無理やってん」 丹羽「地元のダチかあ。いいよな、そういうのってよ。俺もつるんでツーリング行ったりすっ からよくわかるぜ」 滝「いや。今回は親父と一緒でしてん」 成瀬「親父って……」 滝「今のお父さんや」 篠宮「お父さんも自転車やってらっしゃるのか?」 滝「いや。俺の応援してくれとうだけや。それでな。こないだもらった賞金でお父さん用の チャリ買うてプレゼントしてん。いつか一緒に走れたらええなあと思て」 啓太「それで初日の出を見に行ったんだ」 滝「そう。お父さんが『行こうか』って言うてくれたから。テレビで『行く年くる年』見てからふ たりで出かけて、まずは近所の神社でお詣りして。あとは疲れたらそのあたりの お宮さんでベビーカステラ食べたりとかな。楽しかったで。あんなにようさんお父さ んと話したんもはじめてやったしな」 海野「よかったね、滝くん。いい時間が過ごせて」 滝「無理したら須磨までかって行けたかと思うねんけどな、帰りのこともあるやろ? 初心 者でさえない素人さんをいきなり無理させるわけにもいかんやん? 実際、3が日 はへたれとったし」 丹羽「へえ。サルのわりにはいい気配りじゃねえか」 中嶋「気配りだとわかってもらえてよかったな、滝」 西園寺「そう言うな。いくらがさつで大雑把な丹羽だって、たまには気づくことくらいある」 西園寺「だが本当にいい配慮だとわたしも思う」 篠宮「それはお父さんが滝のことを考えてくれているのが分かっているからだろう。自分 のことをちゃんと考えてくれている人のことは、自分もちゃんと考えようとするもの だからな」 滝「そうなんかもしれへんなあ。そこまで考えたことなかったけど」 七条「考えなくてもできるようになっているなら、それは本物ということですよ。残念ながら 僕は実の父にでさえ、そんな気配りはできそうにありませんから」 滝「ほんまに残念やな。うちのお父さんは筋肉痛で、トイレさえへろへろしもってでないと 行かれへん状態やのに、『今から鍛えとくから、来年の初日の出は須磨と言わず に明石まで行こう』って言うてくれてん。それもな、片目瞑って親指立ててやで? あんまりにもださださで笑ってしもて、そんであの人のこと『親父』って呼ぶことにし てん」 啓太「うっうっうっ……。よかったなあ俊介……(感涙)」 中嶋「このくらいで泣くな。馬鹿かおまえは。笑って喜んでやれんのか」 岩井「明石海峡大橋の向こうに昇る日の出を見る父子。傍らに自転車2台。……とても美 しい……。いつか絵にしてみたい……」 滝「そんなん岩井画伯のモデルになるかと思ったら、なんやオシリがこそばくなってまい そうや」 成瀬「ご謙遜。とてもいい絵になると思うよ。ねえ和希。君もそう……」 和希「zzzzz ……」 啓太「あ、寝てる」 海野「よく寝てるね〜」 成瀬「長すぎたんだ……。ごめんよ、俊介」 丹羽「こんないい話を聞かずに寝るなんてな。馬鹿なヤツだぜ」 篠宮「こら。いくら本当でも、正月早々『馬鹿』もないだろう」 七条「今、さらっと辛辣なことを言いましたね(苦笑)」 滝「だったらまあ午年やし、ウマとシカ〜」ということで」 中嶋「……落ちたつもりか?」 西園寺「着地に失敗してすべっただけだろう」 成瀬「じゃあ僕はハニーを連れて帰って寝かせるね」 |
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いずみんから一言。 お正月どころかすでに1月でさえありませんが。 旧正月も正月なんだよ、ということで(汗)。 書けるのが遅かったのもあるのですが、大きな理由はこれが 滝が司会の話なのに、カプを中啓で書いてしまった ことにあります。 なんとか例年のように七啓にならんかと何日もさわりまくった のですが、結局断念しました。 はああ……。タメイキです……。 |
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