夏は ユ・メ・イ・ロ




 啓太のいない日。中嶋家の冷蔵庫はじつにさっぱりしたものである。卵やバター、ミネラルウォーターといった常備品のほかには、新品と見紛うごとく磨きあげられた内部にほんの数品。翌朝のハムまたはソーセージと野菜が入っている程度だ。料理をしないからではなく、買った食材は2日以内にきっちり使い切るからというあたりが、いかにも中嶋といったところだ。
 だから啓太はマンションにくると買出しに行かなければならなくなる。ところが中嶋御用達の高級スーパーは車でしか行けないので、中嶋が車を出すことになる。つまり「買出し」と「ふたりでお出かけ」は、啓太の中で密接なまでのイコールで結びついているのだ。まあそれがいちゃいちゃと楽しい時間なのだから勝手にすればいいのだが。
 1日か2日の滞在なら、いくら人のいい啓太でもそんなことはしないが、数日となれば話が違う。食料品を買出しに行くたび、ひとり分よけいにカートに入れるのだ。言わずと知れた丹羽の分である。内心で中嶋が面白くないと思っているのは気づいているが、口に出すほどではないのをいいことに、3人分の料理を準備する。ある程度は丹羽も遠慮して毎日は押しかけてこないし、中嶋は中嶋で啓太に甘いところがあるので、この馬鹿っプル + お邪魔虫による3人の夕食は、それなりにうまく機能していた。
 ただし啓太の作る料理は甚だ心許ないところがある。レパートリーがないに等しいので本に頼るしかなく、きっちりと本のとおりに作っているので味はそれなりの仕上がりになるのだが、見た目がそれを裏切る場合が多々あるのだ。たとえば先日作った野菜の炊き合わせなど、何を作りたかったのかと、食事の間中、中嶋を悩ませることになった。それが野菜の炊き合わせだったと聞いて、今度はどこをどうすれば野菜の炊き合わせがこのようなモノに成り果てるのか、そっちの方で悩む羽目になったのだった。
 とはいうものの、中嶋は出された食事に駄目出しはしない。たとえそれが口に合わなかったとしても、文句も言わずにきれいに平らげる。「作ってもらったものに文句を言うな」「気に入らなければ自分で作れ」「食後の皿を見苦しくするな」が中嶋家の家訓だからだ。それでいて啓太の料理が日々、中嶋の好みの味付けになっていくのが摩訶不思議なところではある。気づかれないように啓太を誘導する中嶋がすごいのか、いつの間にか好みを聞き出す啓太がすごいのかは分からない。おそらく両方なのだろう。
 唯一の例外と言えるのが肉じゃがで、調理実習で作ったものを試食した中嶋が「甘い」と評して以来、どうやら鬼門 ―― あるいはトラウマ ―― となってしまったらしい。実家で作ってもらってきたのを食卓に出すことはあっても、啓太が手作りすることはなくなったのだ。責任を感じた訳ではないが、中嶋としてもどこかで作り方を教えておかなければならないとは思っているようだ。啓太を嫁にもらってしまうと亭主もなかなか大変なのだが、それはそれでいちゃいちゃできるネタになるので、中嶋的にはかなりの黒字になるのだろう。
 余談になるが中嶋の料理が上手いのはそれが理由なのではなく、7つも年上の姉の「いい男は料理が上手くなければいけない」の信念のもと、料理上手のお手伝いさんに仕込まれた結果である。ちなみに姉の料理の腕はひどいものだが、ここの家も基本的にお手伝いさんが料理をするので、どうやら問題がないらしい。
 それはさておき。もともと食事中に喋ったりするタイプでないので、中嶋との食事はもっぱら、 啓太が一方的に話しかけるスタイルとなる。話はちゃんと聞いてくれているし、たまにはあいづち以上のことばをはさんでくれるので、啓太には食事のたびに幸せを感じこそすれ不満などはどこにもない。でも、だからこそ丹羽が同席するときの食事が楽しいのもまた事実だった。

「今日は豚肉料理にしようと思うんですけど、ポークソテーでいいですか」
「ああ。それでいい」
 期末テストの後。あれやこれやに土日が重なり、1週間の休みになった2日目。スーパーのカートを中嶋に押してもらいながら、啓太はそんなふうに言ってみた。昨日が中嶋の好きな魚の煮付けだったので、今日は自分の好きな肉料理にしてみたかったのだ。それにソテーにすると大好きなポテトサラダを付け合せにすることもできるからだ。よほどのことがない限り駄目と言われないのが分かっていても、快諾してもらうとやはり気分がよかった。内心ではガッツポーズを、表面的にはうれしげな笑みを浮かべながら3枚入り豚肉を手に取った啓太は、だがその手を中嶋に止められていた。
「2枚でいい」
「でも王様……」
「丹羽は、たぶん来ない」
 今までだって、丹羽の分を用意していたのに来なかったことは何度もあった。呼びもしない代わりに来なくても責めない。それがお互いのスタンスだったはずなのに、何故、今日に限って
「必要ない」と言うのだろうか。その言葉に幾分かの冷たさのようなものを感じたのかもしれない。舞い上がっていた分、カウンターのきいたパンチとなって戻ってきた。涙になりきれない中途半端な水分が啓太の目尻の端にたまった。
「あいつ最近、付き合いが悪いからな」
「……そう、なんですか……」
「まあ、3枚にしたければかまわないぞ。残れば明日の昼に使えばいいんだ」
「……そうします」
 半ば啓太の強行突破でカートに入れられた3枚目の肉は、翌日の昼、中嶋の手でポークピカタ丼に加工された。たっぷりの白髪ネギの上からかけられた熱々のガーリックオイルが、悔しいくらいに美味かった。

 その後も啓太は、半ば意地のように3人分の料理を作りつづけたが、丹羽が現れることはなかった。これは丹羽の付き合いが悪くなったのではなく、もしかして中嶋と丹羽が決裂するほどの大喧嘩をしたのではないかと思いはじめた4日目の深夜。すっかりやつれてしまった丹羽が姿をあらわした。
「お……王様? どうしちゃったんですか!」
「あー?」
 実際に濡れているわけでもなければしょぼくれた服装をしているわけでもない。それどころか中嶋が着ていてもおかしくないようなシャツさえ身に纏っていて、それがよく似合ってもいる。なのに今の丹羽は、雨に濡れてさまよう迷子になった大型犬を思わせた。
 丹羽はたしかに真夏の太陽を思わせる男だが24時間365日そういう状態ではない。別人かと思うくらい穏やかな顔も見せるときもあれば、落ち込んだときは叱られた犬のようにしょんぼりする。真夏の太陽だって晴天と雨天では真逆なほどに違うし、同じ晴天でも明け方と南中時では輝きが違う。それと同じようなものだ。ところが今、ソファにぐったりと座り込んだ丹羽には太陽のかけらも残っていなかった。地球上のすべての生物が絶滅し、自分ひとり取り残されたと知った瞬間でさえ、ここまでにはならないだろうと思われるくらいに。これでは太陽どころか消し炭だった。
 こんな丹羽を見たこともない啓太はどうすればいいのかわからず、救いを求めるように中嶋を見た。中嶋にしてもこんなしょぼくれた大型犬など扱いに困ったに違いないが、とりあえず自分も丹羽の向かいに腰を下ろした。
「酒か。コーヒーか」
「酒。……いや。日本茶だ。熱い日本茶をもらえるか」
「日本茶ですねっ。すぐに淹れてきますっ」
 啓太は慌ててキッチンへ駆け込み、とっておきの煎茶を出した。甘味のある玉露などより渋みのある茶の方がいいと思ったのだ。中嶋はコーヒー党だが日本茶や紅茶も嗜む。ただそれが今までは西園寺という別格中の別格人間の陰に隠れて目立たなかっただけである。そしてそんな西園寺たちのもとを親しく訪れていた啓太もまた、自分でも気づかないうちに、その場に応じた茶葉を選べるようになっていた。
 今日の啓太が選んだのは、値段はさほど高くはないが、すっきりとした渋みが持ち味のものだった。茶葉を多めにしてじっくりと葉を広げさせる。わざと少し熱めにしたお湯との相乗効果で、渋みが強く感じられるに違いない。これで王様が浮上してくれますように。そんな思いをこめながら啓太はマグカップふたつになみなみとお茶を注いだ。
 ところがそのトレイはリビングに戻ったところで中嶋に奪い取られてしまった。
「悪かったな。あとは俺がやる。おまえはもう寝ろ。場合に寄ったら丹羽は泊める」
 でも……と言いかけて啓太は口をつぐんだ。中嶋は、啓太が一緒にいていいときはそう言ってくれる男だ。ましてや啓太とも親しい丹羽である。それをわざわざ「同席するな」と言うからには、それなりの理由があるはずだった。
「わかりました。じゃあ俺、こっそりシャワー浴びて寝ちゃいますから、王様におやすみなさいって言っといてください」
「ああ。悪いな」
「いいえ。俺だってあんな王様は見ていたくないですから」
 そう言ってはじめて、啓太は自分の分のお茶を入れてなかったことに気がついた。

 翌朝。中嶋に叩き起こされた啓太が眠い目をこすりながらリビングに入っていくと、すでに丹羽の姿はなかった。中嶋がひとりで新聞を読みながらコーヒーを飲んでいる。いつもと同じ朝だった。
「王様は?」
「ついさっき帰った」
「そうなんですか……」
 まだ寝ぼけたアタマのままキッチンで少し甘めのカフェオーレを作ってきた啓太が、中嶋の向かいに腰を下ろした。テーブルに置いたカップを両手で包み込む。そして中嶋にほんわりとした顔で「おはようございます」と言った。
 口にしたことはない。というより自覚していないのだが、中嶋はこのときの啓太の表情がとても気に入っている。どんなに寝不足が続いていても啓太より早く起きてふたり分のコーヒーを用意するのは、ただこの表情が見たいがためなのだ。パジャマ姿で、髪もぴんぴんに跳ねたままで。目が覚めきっていない無防備な状態のまま、ただ中嶋にだけ向けられるほんわりとした表情。そこにあるのは無償の信頼と愛情だ。その日の疲れは啓太を抱けば癒される。そして朝、啓太のこの表情に出会うたび、中嶋はいつもより以上の力をもらって、1日を始めることができるのだった。
 それらのすべてを意識にのぼる前に処理してしまった中嶋は、相も変わらず新聞を手にしたまま、「ああ。おはよう」とそっけない返事を返した。もちろん新聞の向こうに、啓太の顔はしっかり捉えた状態で。
 それで『啓太をチャージする』という朝の儀式がすんだのだろう。中嶋は両手で抱えたカフェオレカップを口に運ぶ啓太に、傍らに積んでいた問題集を押しやった。英文法、幾何、古典、漢文、物理、英文読解の都合6冊である。かなりの量の付箋が貼り付けられているのは、啓太の方からは見えなかったに違いない。啓太が小動物を思わせる仕草で、軽く首を傾げた。
「俺は今から少し寝る。これは昼までの課題だ。割り振りは自由だがやり残すなよ」
「えっ? って、こんなにたくさん……」
「昨日早く寝た分、早く起きたからな。これくらい余裕だろう」
「早いったって……」
 ほとんど涙目になりつつ啓太が振り返って時計を見た。6時を回ったところである。確かにいつもよりかなり早かった。それどころかあまり変わらない時間になってようやく中嶋に離してもらえることだってあるくらいだ。それでもこれは、ほとんど1日分といってもいいくらいの量ではあった。
「納得できたらがんばれよ」
「……う〜……」
 いくら啓太がにらみつけたところで中嶋に届くはずがない。ましてや上目遣いににらんだなど「かわいいことをしているな」程度で終わってしまっている。それでもにらまずにいられなかった啓太の頭をくしゃっと撫でて、中嶋はあっさりとベッドルームに戻ってしまった。時計を見てから起きればよかった。と、啓太は思った。

 いつもなら昼食後は2時間程度、午前中に間違えた分を中嶋がつきっきりで教えてくれる。以降は夕食の準備まで自由時間だ。しかし今日は6教科もあったために、終わると夕方近くなっていた。そしてようやくの思いで開放された啓太がソファでぐったりのびていると、そのアタマにお出かけ用のカッターシャツが投げられた。
「30分で出かける。シャワー浴びて準備しろ」
「今からですか?」
 シャツの下から啓太がもごもごと顔を出すと、すでにシャワーを浴びてきた中嶋がバスタオルで髪を拭いていた。夕方から出かけるというのは時々あるが、シャワーを浴びて身支度をするというのはあまりない。どこへ行くのかは分からないが、それくらい気合の入った場所なのだろう。啓太は慌ててソファから飛び起きた。
「ああ。ついでに飯を食って帰ろう」
「はいっ!」
 中嶋が苦笑を漏らしているのにも気がつかず、啓太は声を弾ませた。この家で夕食を作るのは啓太の仕事だからだ。中嶋ひとりのときのことを思えば、啓太がいる今の冷蔵庫にはかなり多くの食材が入っている。それでも他所の家。たとえば啓太の実家の冷蔵庫と比べれば一目瞭然。スカスカのカラカラ状態だ。もっと料理のレパートリーがあれば残り物で何なりと作れるのだろうが、悲しいかな啓太の料理の実力は数学よりマシといった程度である。つまりどんなに疲れていようと、夕食を作るには本なりネットなりで作れそうな料理を探し、足りないものを買い物に行かなければならないのだ。いくら中嶋が車を出してくれるとはいっても、今から行くのは億劫だった。それが中嶋の方から「外で食事を」と言ってくれたのだから、声も弾むというものだ。そしてそれ以上に、ふたりでどこかへ出かけられるというのがうれしかった。
「すぐ浴びてきますっ!」
 カッターシャツを掴んだ啓太は今までの姿がウソのような俊敏さで、バスルームに駆け込んだ。

 30分ほど走ったあと、中嶋はとあるホテルの駐車場に車を入れた。朝食で有名なホテルだったが啓太はもちろんそんなことは知らない。駐車場からエレベーターに乗ってホテル内を歩きながら、ずいぶんきれいなホテルだな、と思った程度だ。だがフロントで中嶋がチェックインするのを見て驚いた。
「泊まるんですか?」
「うん? まあ、酒を飲んだらな」
 お酒? と、啓太は、ただでさえ大きな目をさらに大きくした。
 啓太と食事に出て中嶋が酒を飲むことはほとんどない。車で出かけることが多いので、あたりまえといえばあたりまえの話なのではあるが。逆にいえば「泊まらなければならないほどに酒を飲む」のが、啓太にはとても珍しかったのだ。
 受け取った鍵を内ポケットに入れた中嶋は、部屋には入らず、そのままホテルを出た。フロントの脇に立っていたレストランの案内を見ていた啓太は、慌てて中嶋の後を追った。
「ここでご飯かと思ってましたー」
「夕飯にはちょっと早いだろう。時間つぶしに寄って行こう」
「はぁい」
 啓太にとってはじめてのそこは、とてもおしゃれな街だった。まだ熱気は残っているものの、ほんの少しそよぎはじめた夕方の風を楽しんでいるのか、恋人たちがのんびりと歩いている。彼らに混じって10分ばかり歩き、噴水のある広場を曲がったところで商業ビルに入った。どこにでもある、ファッションや雑貨の店が中心の、女の子向けのビルだ。そこの最上階まで上がり、2フロアを使ったフィットネス・センターで中嶋は、啓太とふたり分、ビジター利用の手続きをした。どうやらここで運動でもするらしい。でもそれと酒を飲むのとはどうつながるのだろう。たっぷり汗を流したあとにビールを飲むのは、確かにとても美味そうではあるけれど。否。それなら何故、シャワーを浴びて余所行きの服に着替える必要があったのか。この期に及んで何の説明もないということは、何も知らせるつもりがないということなのだろうけれど。
 そんなことを考えながらレンタルのウェアやシューズに着替えた啓太は、中嶋の後についてフロア内をうろうろと歩いた。夏の陽はまだ高いところにあり、ガラス張りの室中はとても明るい。噴水を見下ろす窓に向かってサイクリングマシンやランニングマシンがずらりと並び、何人かが黙々と汗を流していた。こんなところに来るのがはじめての啓太は、もの珍しげにあたりを見回した。どのマシンを使うのか。あるいはどのエクササイズを受けるのか。あれをやってみたいとか、これは嫌かもとか、新しいものが見えるたびにそんなことを思う。何をするでもなさそうな中嶋と5分ほども歩いただろうか。ベンチプレスのコーナーで、啓太は見知った姿を見つけた。
「あれっ? 王様?」
「げっ! 啓太? ヒデまでどうして……」
サポートしていた女性と楽しげに話していた丹羽は、いたずらを見つかった子供のようにうろたえた。
「中嶋さんとごはん食べに来たんです。だけどまだちょっと早いから、時間つぶしに寄って行こう、って……」
 この瞬間、啓太は悟ったのだった。ここに来た理由も。自分の役割も。そして何も教えてもらえなかった理由も。前もって聞かされていたら、ここでこんなふうに自然に驚くことなんてできなかったに違いないのだ。中嶋らしい周到さだった。つまりベンチプレスをしていた女性が、丹羽を迷子の大型犬に変えてしまった張本人なのに違いない。
「哲くん? お友達なの?」
 どんな人なんだろうと思う啓太の前にそう言って身体を起こしてきたのは、およそベンチプレスなんかとは無縁に見えるスレンダーな美人だった。170センチはあるだろう長身や細長い手足は、脂肪のかけらも感じられないくらい引き締まっている。年の頃は啓太より10ほども上だろうか。前髪だけを目にかからない程度に伸ばし、残りをうしろにきれいになでつけたベリーショートのヘアスタイルが、小さくて形のいい頭にいやというほど似合っていた。
「あ、ああ……」
「ふうん。偶然、ね」
 少々意味ありげなセリフを呟いて、その女性は傍らにおいてあったタオルで顔を拭いた。
「このちっこいのが後輩の伊藤啓太。うしろのインケン眼鏡が中嶋だ」
「藤浪由貴です。はじめまして」
「こっ、こちらこそ。はじめまして。啓太ですっ」
 差し出されて握った手は、意外なくらい硬かった。

「あのっ。せっかくですから、一緒にごはん行きませんか?」
 話の接ぎ穂を見つけて、啓太は由貴に声をかけた。中嶋がわざわざ自分をここに連れてきた理由を考えると、啓太にできる役割というのはそのくらいしか思いつかなかったのだ。当の中嶋はそ知らぬ顔で「こら。デートの邪魔をするんじゃない」と宣いはしたが。
「けっ、けどよ……っ」
 焦る。慌てる。狼狽える。啓太が見ても笑い出しそうなくらい、丹羽は困ってしまっていた。ふたりの時間を邪魔されたくないというより、まだ食事に誘ったことさえないのが明白に見て取れた。
 啓太は丹羽が好きだった。彼らがまだBL学園にいた頃からずっと、丹羽は啓太を見守っていてくれた。啓太が中嶋との関係に悩み、未来を見失いかけたとき、丹羽はただ、自分と中嶋との信頼が揺るぎもしていないことを示してくれた。それがどれほど啓太に安心を与えてくれただろう? 丹羽がいてくれなかったら、啓太は今、中嶋の傍にいなかったかもしれないのだ。今度は啓太が丹羽の役に立つ番だ。軽く首を傾げた啓太は、中嶋におねだりするときの上目遣いで由貴に訴えかけた。
「たくさんで行った方が楽しいですよ?」
「そうね、いいわよ」
「へっ……?」
「どこかお勧めの店はある? 休暇で来てるだけだから、このあたりはよく知らないのよ」
 拍子抜けするくらいあっさりと、由貴がOKを出した。啓太のおねだりが効いたというよりは、中嶋と啓太が何故ここに来たのかを見抜いたからのようだった。意味ありげに中嶋に視線を流した由貴は、口元だけで笑った。
「俺たちで相談して決めてよければ」
「……シャワー浴びてくるわ。30分後にロビーで」
 返事も待たずに歩いていくうしろ姿を、丹羽はただ呆然と見送った。

「俺たちで」と中嶋は言ったが、丹羽に、ましてや啓太に、大人の女性を連れて行ける店のストックなどあるはずもない。あれは丹羽を立てるための言葉だったようだ。その中嶋が選んだのは、「自分たちこそが流行の最先端」と信じている輩が行きつけにしているようなカジュアルフレンチだった。見渡せばIT関連企業の社員風の男やら自称モデル風の女やらが、3分の1ほどうまった席の大半を占めている。それは中嶋の趣味ではまったくといっていいくらいなかったが、丹羽ががんばって背伸びして選んだと言って言えなくもない店だった。客層からかフレンチにもかかわらずBGMは軽快で、忘れた頃に店内を走るライトが、場の雰囲気をさらに盛り上げた。
 年上ではあったが、由貴がとても快活で魅力的な人だというのはすぐにわかった。聞くべきところは聞き、話すべきところは話し、そして笑うべきときに笑う。簡単なようだがじつはとても難しいそれを、由貴は本当に簡単そうにやってのけていた。その間にもフォークを持つ手は止まらず、啓太より2皿も多い料理をぺろりとたいらげた。この細い身体のどこに入るのか、不思議ささえ感じさせない。テーブルマナーは多分に崩されてはいたが、それがけっして下品にはならず、逆にとてもスマートに感じられた。
「それって、基礎がしっかりしているからなんじゃないかな」
 学校に戻った啓太が彼女の話をしたとき、和希がそんなふうに教えてくれた。
「絵でも音楽でも着こなしでもそうだろう? 基礎もないのに崩すと、ただ汚いだけなんだよ。そうだ。デッサン力がいちばんある画家って知ってる?」
「知らないよ、そんなの」
「ピカソだよ。ピカソ」
「えっ? ピカソって、あの?」
「うん。あのピカソさ。子供の頃の絵を見たら驚くぞ?」
 それはもちろんあとの話で、今の啓太にそんなことが分かるはずもない。由貴を食事に誘い出せたことで自分の仕事は終わったと見極めた啓太は、大人たちの邪魔にならないよう、ただにこにこと笑っていた。

 こうして時間を過ごすことで、分かったことはいろいろあった。由貴は両親が移住した先のノース・カロライナで生まれ、国籍がアメリカであること。小中高の各1年ずつを日本の学校で過ごしたこと。この間まではフィリピンでクレーム処理の仕事をしていたが、日本に転勤になったので着任まで休暇を楽しんでいること。母の伯母という人が高齢者のひとり暮らしをしているので、ホテル代わりに泊めてもらっていること。等々。驚いた顔をしているので、どうやら丹羽はその程度のことさえ聞き出せていなかったらしい。
「でもねえ、ちょーっと退屈しはじめてたとこだったのよね」
「ほお? それは、丹羽の怠慢だな」
「でしょう?」
 冗談と本気が9:1くらいの割合で混じった目をふたりから向けられて、丹羽は情けないくらいにうろたえた。先刻、啓太が食事に誘ったときもそうだったが、今はそんな程度ではない。まるでしっぽを両足の間に入れてうろうろと円を描く犬そのものだった。
 丹羽は大型犬を思わせることが多いが、それより以上に強いのが大型重機のイメージである。パワーショベルでがんがん壁を崩しては先へ進んでいくのだ。中嶋ほど策略を張り巡らせたりはしないが、どこからどう攻めれば壁を崩せるか、その過程も楽しんでいる。それができていないというのが、啓太にはもうひとつ解せなかった。確かに相手は年上のようで、それはハンディかもしれない。でも丹羽はとても魅力的だった。中嶋とはまた違った意味で大人でもある。もっと自信を持って、いつもみたいに押していけばいいのに。由貴がそれを待っているように見えるのは、啓太の気の所為なんだろうか ―― ?

 そして場所を変えて飲みに来たのが、先刻、中嶋がチェックインしたホテルのスカイ・ラウンジだった。和希や中嶋に連れられて何度か入ったことがあるので、こういう場所ははじめてではなかったが、どういう訳か今夜の啓太は居心地が悪かった。
 中嶋にしろ和希にしろ、もちろん店は選んでいる。あまりに浮いてしまうような店には、最初から啓太は連れて行かない。好きなように連れまわしているように見えて、その実、啓太が不快な思いをしないよう、中嶋はかなり気をつけているのだ。「あたりまえだ。こいつを泣かせていいのは俺だけだからな」などと嘯いているが、そうでないことは啓太以外の誰の眼にも明らかだった。だから今日も当然、入っても大丈夫な程度の店を選んでいるはずだ。
 さらに言えば中嶋は啓太のためにノンアルコールのカクテルやポッキーを注文してくれたし、由貴は啓太も入れるよう話題を選んでくれている。夜景を最大限に楽しむための薄暗い店内では、ムーディな生演奏のピアノに意味をなさない低い話し声がアクセントを添える。シェイカーを振る音。ステアされる氷の音。所在なげに啓太がかじるポッキーの音までがいつもと同じなのに。
 どうしてなんだろうとぐるっと店内を見回した啓太は、自分たちのテーブルに目を戻した。中嶋が由貴と談笑している横で、丹羽がグラスの端を噛んでいた。オンザロックのグラスを口元まで運んではいるのだが、飲んでいるように見せているだけなのだ。居心地が悪くてうろうろと視線をさまよわせていた啓太だからこそ気がついたのかもしれない。いつもの豪快さがなりをひそめてしまった丹羽の姿に、啓太は自分たちが招かれざる客であったことを痛いくらいに感じ取った。居心地が悪いのもあたりまえなのだった。
 確かに啓太たちがいなければ、今日も丹羽は由貴を食事に誘わなかったかもしれない。アメリカ人だということも知らなかったかもしれない。中嶋なら「きっかけを作ってやったんだ。感謝されても非難を受ける謂れはない」と言って、くちびるの端を吊り上げるところだ。でもやはりこのテーブルで、啓太と中嶋は異分子には違いなかった。中嶋のことだから適当なところで切り上げるつもりではいるのだろうが。
 中嶋と丹羽の間で板ばさみになった気分になって、どうしていいか分からなくなった啓太は、中嶋が注文してくれたノンアルコールのカクテルをごくごく飲んだ。カルピスをヤクルトで割ったような濃厚なカクテルは、ねっとりと啓太ののどにからみついた。

 蝋で固めたような時間は軽い電子音で終わりを告げた。バッグの中で携帯電話が鳴っているのに気がついた由貴は、「失礼」とだけ言い置いて店を出て行った。うしろ姿を見送るのは2度目だと思いながら、啓太はその姿を見送った。スポーツウエアだった先刻と違い、今度はタイトなスーツが均整の取れた長身を包んでいた。
「いい女だが、あれはプロだな」
 同じように見送った中嶋が言った。
「かもしれねえとは思ってた。けど国籍を聞いて確信した」
「本気か」
「………………」
 丹羽は何も言わなかったが、飢えたような瞳が本気の度合いを語っていた。
「まあ向こうも遊びだろうから大丈夫とは思うが……」
 小さくため息をついた中嶋は、内ポケットから出したルーム・キィを丹羽の前に押しやり、さらに車のキィも追加した。
「ま。せいぜい頑張れよ。有名な朝食でも楽しんでこい」
「おい、中嶋。これっ」
「チェスターの借りは返したからな。……いくぞ、啓太」
「はいっ!」
 啓太は待ちかねていた様に立ち上がった。ホテルでのお泊りもなくなってしまったし、ここから電車で帰らなくてはならなくなってしまったけれど。それどころか、この後の進展によっては学園まで電車で帰らなくてはならなくなるかもしれないけれど。啓太は足取りも軽く、中嶋の後を追ったのだった。

 それから2週間程度がたち、夏休みに入っていた啓太は実家から中嶋のマンションに戻った。相変わらず冷蔵庫の中はからっぽで、中はぴかぴかに磨きあげられていた。
 夕食の買い物に出かけたスーパーで啓太はキンメダイの干物をみつけた。大きいし身は分厚いし、とても美味しそうだ。これなら魚用グリルで焼くだけなので啓太にも作れる。あとは青菜とかぼちゃをなんとかして、それに茄子の味噌汁をつける。今夜は肉じゃがを中嶋に教えてもらうことになっているのだが、明日の夕食はこれに決めた。
 中嶋の了解をとった啓太がキンメダイを2匹カートに入れると、中嶋が黙ってもう1匹追加した。何の説明もなかったが、言わんとするところは明白だった。
「俺……」
 カートの中のキンメダイを見ながら、啓太がぽつんと言った。
「今度帰ったときは、王様の部屋で由貴さんの手料理が食べられるかも、って思ってたんです。手料理でなくてもピザとコーラでもよかったんですけど……」
 今日はうちで飯にしないかと丹羽から電話が入る。珍しいなと話しながら中嶋と下りていくと、由貴がドアをあけて迎えてくれて……。狭い部屋だが、笑いの絶えない数時間になったことだろう。そんな時間を、啓太は思い描いていたのだ。
「まあ、部屋とクルマは無駄にしなかったみたいだからな。それで良しとしてやれ」
「……それで振られたって、よけいひどい気がします……」
「まあな。いくら丹羽でもそれで振られたりはしない。あれはプロだと言っただろう。最初から続くはずがなかったということだ」
「プロって、モデルがですか?」
「……………………何?」
 カートを押しながら歩いていた中嶋が、思わずといった感じで足を止めた。その横を追い抜きかけた啓太も慌てて足を止めた。
「モデル、だと……?」
「違うんですか? きれいな人だったから、てっきり」
 やれやれとばかりにひとつ首を振って、中嶋がまた歩きはじめた。
「違うな。身体の鍛え方が違いすぎる。それに掌や指が固かっただろう。あれは米軍関係者、おそらく海軍だ」
 再びゆっくり歩きはじめた中嶋を啓太が慌てて追った。
「でも仕事はクレーム処理って……」
 組織が大きくなればどこにでも困った奴はいる。酔っ払って店の看板を壊したり、つまらない忘れ物をしてみたり。物資を納入するトラックの運転が荒くて危ないとか、海岸に流れ着いたこれは軍関係のものじゃないのかとか。その他諸々。それら警察沙汰にはならない程度の苦情を放っておいては、いずれその土地にいられなくなってしまう。ひとつひとつ対応していく地味な部署が、軍にはあるのだ。
「アジア諸国だと、ごつい白人が顔を見せるより、同じ東洋系の人間が行く方がいい場合だってあるんだろうさ」
「へ〜え」
「俺たちが帰る直前、電話がかかってきてただろう? あれはおそらく俺たちのことを問い合わせていた返事だと思う。偶然を装って現れた身元不明者だからな。着替えたときに調べさせておいたのに違いない」
「えーっ! じゃあもしかして俺たちの関係までばれちゃってるんですかぁ」
「たぶんな」
「知られちゃうのはかまわないけど、調べられるのは嫌だなあ……」
 自分たちのことを知られるのはかまわない。くちびるを尖らせてぶーたれる啓太に、中嶋はほんの少し目元を緩ませた。

「そっか……。由貴さんって軍人さんだったんだ……」
 思い出したように、啓太が帰りの車の中で口を開いた。よほど意外だったようだ。
「えっ? じゃあもしかして王様がコクらなかったのは……」
「言ってたろう。『そうじゃねえかとは思ってた』とな」
「そっかぁ……」
 啓太は両手の指を組み合わせると、手のひらを外に向けて体操するときのようにうーんと前にのばした。うれしそうに、というよりはとても満足そうに顔が笑っている。
「そっか。だからコクらなかったんだ」
「なんだ? それは。丹羽がヘタレだから踏み出せなかった、とでも思ったか」
「そっ、そんなっ。そんなことないですっ」
「ふうん? 嘘つきな子はお仕置きだな」
「少なくとも俺は『ヘタレ』なんて単語は思いつきませんでしたっ!」
「くっ……」
 赤信号でブレーキを踏んだ中嶋がとても楽しそうな顔を啓太に向けた。この場合、『とても楽しそう』 と 『とても意地悪そう』とは限りなく同義語である。「それで?」と続けられて啓太は思わず逃げ出したくなったが、車の中では後ずさりさえできなかった。
「何て思ったんだ?」
「いえ、あの」
「うん?」
「その……。女の人を誘うのがはじめてだったからかな、って……」
「……今頃になってようやく筆おろしか? さりげなく暴言だな。丹羽が聞いたらショックで山にこもるかもしれない」
「えええーっ!」
 遊ばれているのは分かっていても、啓太は焦らずにいられなかった。中嶋が車を発進させなかったら、腕にしがみついていたかもしれない。何の疑問もなく丹羽はこれが初体験だと思い込んでいたからである。これはけっして悪い意味ではなく、遊びでそういうことをするタイプには見えないという、いわば信頼からくる思い込みだった。
「なっ、ナイショにしててくださいっっっ!」
「さあ。どうするかな。おまえの今夜のがんばり次第だが」
「何でもします。だからナイショに……」
「そうか。なら図形と代数を10問ずつ追加で手を打とう」
「………………へっ?」
「全部できるまで寝られると思うなよ」
「……はい」
 意外な要求にきょとんとした顔を返した啓太に、中嶋はわざと不思議そうな声を作った。
「何だ、その顔は。今夜『何を』がんばるつもりだったんだ?」
 気がついた啓太の顔がみるみる赤く染まった。またしてもこの類の落とし穴に落ちてしまったのだ。進歩がないと、自分で自分が情けなくなった。だが中嶋はそれ以上、追及したりするつもりはなかったようだ。
「まあいいさ。それに俺もおまえと同意見だしな」
「同じ、って……」
「ヤツが俺の目を盗んで女と遊んでこれるはずがない。ということだ」
「? ちょっと分かりにくいんですけど。今まで気がつかなかった。つまりはじめてなのに違いない、ってことですか」
「同意見だろう?」
 それはずいぶんとひねくれた言い方で、意味を理解するには少々の時間を要したが。翻訳ができたとたん、啓太は思わず叫んでいた。
「えーっ!」
「うるさい。車の中で叫ぶな」
「だって中嶋さんも、王様がはじめてだって思ってた、ってことですよね? なのになんで俺だけ数学20問も追加なんですかぁっ!」
「俺じゃない。おまえが言ったんだ。『何でもするから黙っててくれ』とな」
 中嶋相手に勝とうと思ったことは一度もない。勝てると思ったこともない。悔しいかな中嶋は肉じゃがでさえ啓太よりはるかに上手く作ってしまうのだ。だから最初から白旗をあげている。
 だがせめて遊ばれないようになるのに、いったいどのくらいの時間が必要なのだろう? いつもの課題にプラスして数学が20問。招いてしまったのは自分自身だが出発点は丹羽である。回りまわって丹羽を思わせる太陽までが憎らしく、陽も差し込んでいないのに啓太はサンバイザーをおろした。
「そのつもりなら、あと腐れなく数年は遊べた相手だ。それをあれだけできっちり終わらせてきたんだ。じつにあいつらしいさ」
「それに由貴さんらしくもありますよね? って、よく知らないですけど」
 話を変えた中嶋に、啓太はすんなりと乗ってきた。今まで考えもしていなかったが、それはとてもまっすぐに啓太の心に届いたのだ。啓太はあの日、差しだされた手を思い出して自分の右手を広げてみた。由貴の手はとても硬かった。銃を取り国を守る手だからなのだろう。家庭を守る手ではなかったのだ。丹羽にはもっと柔らかくてかわいらしい手の方が似合っている。
「王様のためにも、俺、おいしい肉じゃが覚えます」
「ふん。丹羽に女ができるまでには覚えろよ」
「う゛ー。……努力はします……」

 恋人たちにとって、クルマはとても便利なツールだ。何を話していようと外にもれる心配はないし、相手は常に手の届く場所にいてくれる。いちゃいちゃいちゃいちゃふたりの時間を楽しんでいるうちに、目的地にさえ着いてしまうのだ。そこに無責任に盛り上がれる話題があればなおさらだ。啓太は真剣に丹羽のことを思っているのかもしれないが、当事者にとってみれば
『余計なお世話』以外の何ものでもない。丹羽が聞けば「人をダシにして盛り上がるな!」と怒鳴るところだ。
 だが。馬鹿ップルの手にかかれば犬からだってダシはとれる。しかもとびきり美味いダシが。質の悪いことに馬鹿ップルの自覚のかけらもない中嶋と啓太は、こうして今日も買い物帰りのクルマの中で、いちゃいちゃらぶらぶな時間を楽しんでいるのだった。







いずみんから一言。

人をダシにするの「出し」も、かつおダシの「出し」も、同じ「出し」であることを辞書を
ひいていて見つけました。かつおダシが@で人をダシにするのがAの順番でした。
B+HOUSEのむめヒメさまのご本「ユメイロクッキング」を読ませていただいていて
無性に「肉じゃが作ってる中嶋氏が見たーーい!」と思ってしまいました。
が、お忙しそうなむめヒメさまにおねだりも出来ず、んじゃ自分で……となったのです。
最初は王様がとっても、というか、ただただ不憫(爆)なだけのお話でした。
ところがそこに、ぺかっ! と光を当ててくださった方が!
180000打を踏んだSNOWさまが、王様の恋人役を引き受けてくださったのです!
こりゃてーへんだっ! ってな訳で、せっせと書き直しをした、という次第。
おかげで肉じゃがは読めなくなってしまったけれど、それはやっぱりむめヒメさまに
おねだりすることに致しましょう(笑)。
えっと。由貴さんの所属は海軍調査軍(NISC)で、陸軍のMPにあたります。
伊住お気に入りの坂下冬樹氏が所属しております(笑)。

最後になりましたが、タイトルまでぱくってしまったむめヒメさまと、お名前を貸して
くださったSNOWさまに、心よりお礼を申し上げます。


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