KOI-GOKORO〜夏の日の出逢い〜 4.葛藤と自虐と 「あ、こんにちは。」 「どーも。」 顔見知りのインストラクターに挨拶しながら、プールに入る。 50メートルプールをクロールで泳ぐ。ゆっくりと、ターンして再び泳ぐ。 元はスイミングスクールを専門にやっていたという、このフィットネスクラブの良いところは、プールが2つある、というところだった。 初心者や、アクアビクス、水中ウォーキング。それらをする為だけのプールと、泳ぐのが目的の50メートルプール。 平日の午前中。50メートルプールは閑散としていて、のんびりと泳ぐ事が出来る。 「はあ、はあ。」 ターンを6回繰り返して、休憩を取ろうと、プールサイドのプラスチックのベンチに腰掛けると、スポーツドリンクをゴクリと飲む。 朝、目覚めると朝食もそこそこに此処に来て泳ぐ。疲れてへとへとになって、身体が思う様に動かなくなるまで泳ぐ。そして、部屋に戻って仮眠を取り、夕方店の仕込をして部屋を出る。店が終わって部屋に戻るのが2時過ぎ、パソコンで帳簿をつけ、シャワーを浴びて眠る。それが最近のパターンだった。 「はあ。」 店で浴びるように酒を飲んでいても、このプール通いのお陰で、体重は2キロ減り、そしてもともと筋肉質だった身体は、さらに鍛えられていた。 「今日は、成島のところのパーティーか。」 2丁目のバー。オーナーの成島は、学生時代の遊び友達だった。 成島は2丁目で人をやとって店をはじめ、俺はそこから少し離れたところで軽く食事を楽しみながら、飲める・・が売りのパブのマスターとなった。 ちなみに、成島と俺が寝たことが無いのは、ひとえにお互いの好みじゃなかったっていうそれだけだ。 「今日はこの辺でやめておくか。」 差し入れに何か作っていく約束だった。 まだ何も用意していないから、急がなきゃならない。 「可愛い子いるのかね。」 気が合えば、持ち帰りOK。それは暗黙の了解だった。 毎回そのパターンで、皆相手を増やしていくのだ。 「気が乗らないな。」 7月も下旬に入っていた。あの後守也にあったのは、たった一回。その後守也からの連絡は途絶えていた。逢いたいと云う気持ちはあった。自分でも莫迦みたいだと呆れたくなる程、その気持ちは日増しに強くなっていった。 逢いたいなら、自分から連絡をとればいい。守也は携帯は持っていなかったけれど、守屋の部屋に引いてあるという専用電話の番号も、パソコンのメールアドレスも知っているのだから、でも、連絡をとる事が出来なかった。長谷に遠慮しているわけじゃない。 ただ、恐かったのだ。どんどん守也にのめり込んでいく自分が恐かった。 例えば夜中の一人の部屋で、今守也の隣に居るのは誰だろうと思い始める。あの白い身体を抱いて、甘えた声を聞いている奴がいる。俺以外の誰か。 顔も知らない人間に、嫉妬する。その事に俺はすでに疲れていた。 「あと100メートルだけ泳いで帰ろう。」 今晩パーティーに出ても、守也以上にそそる人間なんて居るわけがない。 もう考えるのは止めよう。朝になるたびに思う。 二度目に逢った守也は、やっぱり可愛くて、甘えん坊で、だけどどこか壁があることに俺は気が付いた。見えない壁。透明なフィルターを掛けたように、本当の守也には触れることが出来ない。 考えても、気が狂いそうになるほど嫉妬しても、守也は俺のものにはならない。 考えたってしょうがない。朝日を浴びて、いつもそう思う。 夜中、眠りながら、頭の隅で守也のことを思うだけで疲れてしまうから。思って、考えて、嫉妬して。へとへとになって、朝日を浴びて、そうして思う。 もう考えるのはやめよう。 なのに、気が付くと守也の事ばかりを考えてしまう。そんな事しても仕方ない、わかっているくせに。考えてしまう・・・・。 ++++++++++ 『僕ね、束縛されるのは大嫌いだから、だから、長谷さんにそう言ったんだ。恋人にはなれないから。特定の恋人を作る気はないから。一人だけっていうなら、他をあたってよってさ。ふふふ。ひどいかなあ?長谷さん泣きそうだった。』 綺麗な顔で、酷い事をいうものだ。それが素直な感想だった。 『いいんじゃないか。別に。ふうん?じゃあ、束縛しない相手が好きなんだ。』 『そ、だから相手が俺だけを好きじゃないくていい。気が向いた時に、僕を甘やかしてくれれば、それでいいんだ。僕の相手は皆そう。』 皆?子供のくせに、一体何人相手がいるって? その疑問は顔に出ていたのだろう。守也は素直に数字を吐いた。 『5人』 『え?』 『今のところ、定期的に逢ってる人はね、それだけ居る。』 『へえ?じゃあ、俺は6人目って事か。』 ショックでぐらりとなりながら、それでも平静を装い笑ってみると、 『せんぱい、僕と付き合うつもりあるんだ。』 探るような視線で、守也が言う。 『守也は抱いてて気持ちがいいからね。』 だから俺は、本心を隠し笑う。 『ふふふ、僕も気持ちが良い。せんぱいに甘やかされるの一番好きかも。』 にっこりと、守也は目を細めてそう言うと、首筋に頬を摺り寄せてきた。 『部屋の電話、教えたのはせんぱいが始めてだよ。』 『どうして?』 『気まぐれ。・・・・ふふ。嘘。なんでかなあ?顔が好みだったからかな?わかんないや。そうだね、せんぱいだったら、夜電話掛けてきても嫌じゃないって思ったのかも?』 『ふうん。』 それはどういう意味にとればいいのだろう。 『ね、せんぱいしよ。』 『え?』 『くだらない話は止めて、しようよ。さっきのじゃ足りない。もっと甘やかして。』 とたんに守也の顔が変わる。ゾクゾクするくらいな妖艶さで誘い始める。俺の好きな顔で。 『せんぱい。好き。』 クスクスと笑いながら、口先だけで好きという。甘い声をあげ、細い腰を揺らし何度もせがむ。くだらない話じゃなかった。少なくとも俺にとっては。だけど、守也の機嫌を損ねたくなくて、俺は頷いた。 『で?長谷とはしないの?』 『さあ?どうしようっか。』 他人事のように、守也はあっさりとそんな事をいう。 『泣いてるぞ?』 『関係ない。そんなのどうでも良いから.』 『長谷のこと嫌いなのか?』 『・・・・話しながらするの好きじゃない。』 『そうだな.』 長谷のことを話しながらするのは、俺自身本意じゃなかった。 『せんぱい、俺と付き合っても良いことは何も無いよ。』 『え?』 『せんぱいは良い人だから、忠告。一回だけ。』 『守也?』 『僕は、見かけより善人じゃない、冷たいし、自分勝手。可愛いアクセサリーが欲しいなら、他の人間を選んだほうがいいよ。もっと従順で、可愛い子をね。』 驚くほど冷たい瞳で見つめながら、守也が言う。 『俺じゃ嫌なのか?』 死刑の宣告でも受けた様な気持ちで俺は尋ねる。 守也ともう逢う事が出来ないなんて、そんな事・・・・。 『逆。気に入ってるから、せんぱいに甘やかされるのが気に入ったから、忠告。僕はせんぱいの望むようには多分いられないから。』 『守也?』 『忠告したよ?せんぱい。これから先、僕を求めるのも、遠ざけるのもせんぱいの自由だけど、でも僕は忠告したからね。僕が傍にいて、せんぱいの幸せに繋がる事は決してないから、だから逃げるなら今のうち。』 『逃げる?冗談じゃない。』 『じゃあ、僕にとっての、都合のいい人になってくれるの?せんぱい。』 『ああ。』 『莫迦だね。・・・・・僕を甘やかすだけの人間になってくれるんだ。僕は自分の都合の良いときにしか、せんぱいを求めない。それでもいいんだ。』 『くすくす。いいさそれで。俺にとってもそれはきっと都合が良い。』 どうでもいい、そんな事。守也のそばにいられるなら。なんだってする。 『ふうん?じゃあ、交渉成立・・だね?せんぱい。』 にっこりと笑い、そして口付ける。 どんなに不利な条件でも良い、守也を抱けるなら、一時でも傍にいられるなら。どんな条件を飲んだって良い。 愛してる。守也。 『せんぱい、後悔しても知らないからね。』 後悔なんかしない。決してしない。 たとえ愚かだと周囲から呆れられたとしても、それでも俺はかまわない。 守也の居ない世界なんて、考えることすら出来なくなっていた。 ++++++++++ シーフードのマリネにサーモンパイ、ミートローフに中華風のサラダに春巻きにアップルパイ。成島の好物ばかりを大量に作り終えると俺は店を出た。 「やべ、遅刻だ。」 荷物が多いから、走るわけにも行かずトロトロと歩く。[NARUSHIMA]は二丁目の入り口にある。 「お〜。派手だな。」 ドアにはチカチカ光る電球でデコレーションされたウエルカムボードが掛けられている。 「どうも〜。」 「あ!!司遅いって。」 「悪い、めかし込んでたら遅くなった。」 にやりと笑い、サングラスを外す。 「ま、いいよ。入って入って。皆司が来たよ!」 ご機嫌の成島に導かれ、店の奥へと入る。 「あ、司だ〜。久しぶり。」 「司、最近大人しくないか?どうした〜?」 「あ、それ差し入れだろ?俺腹へってんだよ。早く食わせろ!!」 「はいはい、5分待ちな。良。キッチン借りる。」 「OK。はいはい、皆は大人しく司ママを待っててよ。」 「誰がママだよ。ったく。良これレンジで温めて。2分かな?」 「へ〜い。」 慌しく厨房で動きながら、指図していると成島が入ってきた。 「うわ、うまそ〜。」 「美味いに決まってんだろ?俺を誰だと思ってるんだ?」 「俺の心友。」 「けっ。よし、OK。良これ運んで。昌一これガラスボールに移してくれ。」 どんどん皿に盛り付け出して行きながら、厨房にあった他の食材も料理し始める。 「すっげ〜うまそう!!」 歓声があがる。 「美味そうじゃなくて、美味いから。」 カウンター越しに笑う。 「司、ビール?」 「そうだな。」 グラスを受け取り、乾杯すると、一気に飲み干す。 「さてと、さっさと作って飲むか。」 「司、これ美味い〜。」 「当然だ。」 楽な空間だ。同類しかいない楽な空間。意味の無い話をして、酒を飲んで笑う。 楽だ。素直にそう思う。一人の部屋で悶々と守也の事を思って嫉妬に明け暮れているより、余程建設的な行為にすら思えてしまう。 たぶん俺はそれほど疲れていたのだと思う。 「司〜。アップルパイ出してよ。食べたい!」 「成島?酒飲みながら甘いもん食うのやめろって。」 「え?美味いじゃん。な、ラルク。」 天然呆けの心友が、見慣れない奴に声を掛ける。 「ラルク?」 「そ、可愛いだろ?最近うちに遊びに来てくれてるんだぜ。」 「ラルクです。どうぞよろしく。」 「ふうん?俺は司よろしくな。」 どうやら、今日のお持ち帰りは、この子になるらしい。直感でそう思った。 ++++++++++ 「司さん、今度お店に行っていい?」 「ああ、いいよ。」 にこりと笑うと、ラルクは嬉しそうに頷いた。 白い肌、薄い色素の髪。父親がロシア人だという彼は両親の離婚で、半年前母親について日本に帰ってきたのだと、あまり上手くない日本語で、少しだけ哀しそうに言った。 日本語は母親の祖母にならったのだという。知り合いの居ない国で、夜遊びを覚えるまで、母親以外の話し相手はその人だけだったとラルクは言った。 「ラルクって綺麗な瞳をしてるね。グレーなんだ。」 他人の生い立ちなんてどうでもいいから、適当に頷きながら聞き流してしまう。 「うん。」 「綺麗な色だね。」 瞳を覗き込みながら笑う。 酔っ払った成島が、周りの人間と王様ゲームなんてくだらないものを始めたのを横目で見ながら、どうやって遊ぼうかと算段する。 「キレイ?でも、僕は黒い瞳の方がいい。」 「そう?でも綺麗だよ。俺は好きだな。」 シャンパンを飲みながら、適当な事を言う。 グレーだろうが、黒だろうが、灯りを消してしまえば同じ事だ。 相手が想い人でないなら、同じ。誰だって同じだ。 そう、こいつは守也じゃない。 「司さんが好きって言ってくれるなら、グレーでもいいかな。」 「そうだよ。綺麗だよ。ラルク。」 にっこりと偽りの笑顔。そうして腰に手をまわし囁くのは、甘い誘惑。 「そろそろ抜け出さないか?二人っきりになれるところに行こう。」 ++++++++++ 「はあん、司・・・。」 四つん這いになった白い身体が震える。 「ああ・・・いい、そこ・・。はぁぁん。」 守也としてから、他の奴を抱く気になれず、スポーツで身体を騙してきたせいか、最初からかなり激しくしてしまう。ろくに身体に触りもせずに、ローションを使って。 「・・・んっ。はあん。もうだめぇ・・。」 白い喉を仰け反らせ、ラルクが叫ぶ。 「まだいっちゃだめだろ?ラルク。早いのは嫌いなんだ。つまらないし、淋しいだろ?」 「でも。」 「くくく。ほら、ラルクあそこを見てごらん?鏡・・・見えるだろ?ラルク凄くエッチな顔してるよ。ほら。」 くすくすと笑いながら、目隠しを外し、そうやってからかうと、ラルクはそれだけで羞恥に震え感じ出す。 「意地悪・・司・・。僕を苛めるの楽しい?」 「楽しいよ。苛めるたびにラルクの此処がよくなっていくのが分かるからね。ラルク苛められるの好きなんだろ?目隠しされて、身体を好き勝手に弄られるのも、こうやって意地悪を言れるのも、好きなんだろ?」 笑いながら、両手でラルクの細い身体をゆすると、ラルクは切ない声をあげ、背中を仰け反らせながら、身体をピクピクを震わせる。 「い、いいよ。司が・・そういうのが好きなら、苛めて・・。もっといじめ・・んん。」 健気な事をいうものだ。 だけど、身体は物理的に熱くなっていくのに、心がどんどん冷めて行く。 経験が少ないのだろう。ラルクの身体はあまり楽しめなかった。 「ああん、司。」 いいや、ラルクのせいじゃなかった。俺のせいだ。 欲しい相手が違うのに、ただの欲求不満の解消にラルクを抱いているせい。 甘い声、細い腰、絡みついて離さない・・・あの・・・守也の代わりなんて誰にも出来やしない。 萎える気持ちを騙すように、ラルクの腕を後ろで縛りあげ、身体を鏡に向け足を開かせ、耳元に淫靡な言葉を囁く。 「司・・・司・・・い・・・ん・・。」 ラルクだけが夢中になり、そして先に果ててしまうから、仕方なく俺も、中途半端な気分のまま終え、そして身体を離してごろりと横になる。 「司・・・・さん。」 「ん?」 「・・・・。」 潤んだ瞳に、罪悪感を感じ、煙草を探すふりをしながら立ち上がる。 「凄く恥ずかしかった。」 「そう。」 バスローブを羽織り、ベッドの端に腰掛けると、煙草に火をつける。 心が冷めていた。ラルクが見つめる瞳にも何も感じない。 それよりも早く部屋に帰ってゆっくり眠りたい。そんな気持ちになっていた。 「ねえ、司さんの事、好きになっちゃった。」 「どうして?」 意外な事を言うものだ。そうとしか感想の言い様がなかった。 「どうしてって・・。あんなに優しくしてもらったの始めてだし・・。」 「優しい?」 優しくなんかしてはいない。むしろ手を抜いて、どうでもいい感じで抱いたのだ。キスすらせずに、ほとんど身体に触れもせずに、守也とは違いすぎるラルクの瞳を見るのが嫌で、目隠しまでした。 「優しかったよ。」 うっとりと返事をするラルクに呆れてしまう。 「お前、いままでどんな奴としてたんだ?」 手首を縛っていた紐をほどきながら、首をかしげる。 コレが優しい?どの辺りが? 「・・・・。」 困った顔で無言になってしまうから、なんとなく見当がついた。 左手の傷・・はそういう事なのか? ホテルに入ってからすぐに気が付いた。細い手首に付いた何本かの傷跡。でも、問いただす必要も感じずに無視した。 「好きな奴としたことがない?」 こくりと頷いたから、思わず溜息をついてしまう。 「ごめんなさい。嫌な事言った?僕、ごめんなさい。司さん怒らないで。」 「怒ってるわけじゃない。なあ、ラルク?お前の今までの相手って・・。」 「僕・・・日本に来て、学校で知らない人たちに無理矢理されて・・・だから、だから。それ以来学校にも行ってなくて・・その後も同じ様な・・あの・・・怒らないで・・。」 「・・・・ラル・・ちょっとごめん。」 携帯が鳴った。 「はい。」 見慣れない番号に首をかしげ、出る。 『ふふ、せ〜んぱい。』 「え?あれ?これ携帯?」 『うん、買ったんだ。取説みてね、やっと登録とか覚えたから、掛けてみた。』 くすくすと笑う甘い声。低く流れる音楽。 「へえ。」 声を聞くだけで、身体の中が熱くなってくる。久しぶりの守也の声。 逢いたくてたまらなくなる。 もし、今すぐ逢いたいと言われたら、ラルクなんか放り出して、すぐに守也の元に向っていただろう。たとえそれでラルクが哀しい思いをしても関係ない。いいや、きっとそんな事考えもせずに守也に逢いたい一心で向っていただろう。 『とりあえず、ちゃんと繋がるみたいだね。ね、ね。後でメールも送ってみていい?』 「いいけど、ちゃんとって?」 『始めて掛けてみたんだ。本当機械弱くてさあ、全然意味わかんなかった。パソコンの方が簡単だよ。まったく。』 「そうか。」 始めて掛けた。それを言葉通り信じて良いのか分からないのに、なのに、顔がゆるんできてしまう。 『ふふふ。ねえ、せんぱい夏休みになったらどこか連れて行ってくれる?』 「いいよ。勿論。」 『やった。楽しみにしてるね。あ、じゃあ後でメールするね。おやすみなさい。』 「おやすみ。」 どうしよう、嬉しい。たかだか出かける約束しただけで・・・俺莫迦だ。 電話を切り、溜息をつく。 「司さん?」 「あ、ごめん。」 「ううん。今の人、恋人?」 「いいや。」 「でも・・・。」 「ん?」 何が言いたいんだ? 「あ。」 メールが届いた。 ≪デート楽しみにしてるね。美味しいものが食べたいなあ。≫ やばい、顔がにやける。 ≪OK.期待してて。勿論その後も。≫ ≪Hだなあ。でもそういう人結構好きなんだけどね。おやすみなさい。≫ ≪おやすみ。≫ 返事を送信して、電源を落とす。 「本当に違うの?恋人じゃないの?」 「違うよ。」 「好きな人なんでしょ?」 「どうしてそう思う?」 イライラと煙草をふかす。守也の事を、ラルクにとやかく言われたくはなかった。 「だって、司さん優しい顔してた。僕が今日一度も見てない位に優しい顔で・・・。」 「だからって・・・なんで泣くんだ?」 「だって、司さんにそんな顔をさせるくらい大切に思われてるなんて・・・ずるい。」 ずるいって言われてもなあ。 「司さん・・・僕を好きになって?」 「俺に好きな人間がいるって分かっててそんな事よく言えるな。」 「でも、恋人じゃないって言ったよ?」 「まあね。」 おまけに、こっちの思い通りには全然ならない。気まぐれな猫みたいな相手だ。 「じゃあ、代わりでいいから。だから、お願い。」 「お願いって。」 「何だってする。司さんの言う事なんだって聞く。苛めるのが好きならどんな酷い事したっていい。遊びでいいから。何も望んだりしないから。」 「ラルク。」 「お願い。司さんともう逢えないなんて耐えられない。だから。」 「・・・都合よく遊んでいいんだ?」 「うん。それでもいい。」 こくりと頷く。 「わかった。」 面倒くさい。鬱陶しい。そう思いながら、邪険に出来ずキスした。それが、あんな抱き方を優しいと言って泣くラルクに同情してだったのか、逢えるためならなんでもする・・という言葉に自分を重ねてしまったのか、分からなかった。 僕と居ても幸せには繋がらないよ?せんぱい。 守也の声が聞こえるような気がした。 ※※※※※※※※※※ 今回は、エッチです。(すみません、嘘です。) 司がどんどんへたれになってます。 次回は守也が大変な事に!!(たぶん本当です・・・) |
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「次回は守也が大変な事に!!(たぶん本当です・・・)」 などと書きつつ、この話はここで終っている。 嘘つきだなあ、みのりさま。なんてことを思ったりして。 (1)は6月10日。つまりオープンの日にUPされていて、7月16日には (4)までUPが終っている。なんで続きをUPしなかったのかなあ。 この(4)は生前のみのりさまを思い出すような記述にあふれている。 深夜勤務が基本だったみのりさまは、朝、人々と逆流するように 家に帰っていかれた。 スポーツジムで泳ぐのもお稽古事も午前中。 お料理が上手でお酒が好きで。 友人の店で飲む司の姿にみのりさまのイメージがダブる。 こんなの書いたら「お持ち帰りはしてないよ?」と拗ねちゃいますか? |
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