伊藤啓太くんは鈴菱家で働く新人メイドです。仕事はわからないことだらけですが、持ち前の明るさと一所懸命さとでみんなから好かれている、ごくごく普通のメイドさんです。 ―― そう。ただひとつ。猫耳だということを除いては。 さいしょのおはなし 鈴菱家の次期当主である和希さんは、毎日、とても忙しい日を送っています。お仕事がもう、ハンパじゃないってくらい忙しいのに、社交界のお付き合いもあるので尚更です。若くて見目よい和希さんはマダムたちからひっぱりだこなのです。本当はこんな集まりなど大嫌いなのですが、彼女たちのご主人が政財界の重鎮だったりするので、断る訳にもいかないのでした。 「今宵はお招きに与かりまして、有難うございます」 「あら、和希さま。ようこそ。いらっしゃい。今夜は無理かと思ってましたのよ」 「とんでもない」 口元には感じのいい微笑を。そして目元には「心外な」とでも言いたげな困惑を。内心はどうあれ、完璧な表情を造り上げた和希さんは、その形のいいくちびるを、ふやけたヒルのごとき指先に押しあてながら言いました。 「奥様のお誘いを断るくらいなら、山にこもって僧侶にでもなりますよ」 「あらあら、お上手ですこと」 おほほほほ、と笑うマダムのところに、カクテルが届けられました。トレイの上に載った何種類ものグラスの中から和希さんは迷わずシャンボール・アンド・シャンパーニュを取り上げると、マダムに手渡しました。 「あら。うれしいこと。覚えていてくださったのね」 「紫は奥様によくお似合いですから」 自分の好みをちゃんと覚えてくれている和希さんに、マダムはとても満足そうでした。 「わたしの敬愛する女性に」 シャンボール・アンド・シャンパーニュとギブソンと。ふたつのグラスが小さな音をたてました。 ふたりがグラスに口をつけたのを見て頃合いと思ったのでしょう。他の出席者たちが和希さんとマダムを取り囲みました。 「聞きましたわよ、和希さま」 今日、みんなが聞きたくて仕方のなかったことを聞いたのは、とある放送局の社長夫人でした。 「猫耳のメイドさんが入ったんですって?」 「まあ、羨ましいこと。和希さまのところには、すでに猫耳の執事さんがいらっしゃるのに」 この情報にはさすがの和希さんも、作り物でない苦笑いを浮かべました。猫耳である啓太くんのことなど、ただの一言も喋ったことがなかったからです。それなのに周りを見渡すと、みんな知っている顔をしていました。 「皆様、さすがに耳がお早い」 「では本当ですのね?」 「はい。先日」 ほう……っというため息がさざ波のように広がっていきました。ただでさえ稀少価値の高い猫耳族は、その容姿の愛らしさからモデルやアイドルになるケースが多く、メイドのようなきつい仕事にはなかなかつこうとしてくれないのです。それが執事に続いてメイドさんまでとは。 「和希さまのところばかりなんて……。なんだか羨ましいというより、ずるい感じがしてしまいそう」 「あら嫌だ。奥様ったら」 誰もが笑っていましたが、意外と本音かもしれないと和希さんは思ったのでした。 「それで、お披露目はいつですの?」 「なるべく早くにとは考えているのですが、なにぶん田舎育ちなもので、毛づやもなかなか……」 「あら。だったら執事さんに教えさせればよろしいのに。わたくし、あの方ほど素敵に手入れされたしっぽを見たことがありませんもの」 「恐れ入ります。奥様にそう言って頂いたと知れば、とても喜ぶと思いますよ」 そう言って和希さんは、その場にいない執事に代わって、とても優雅に頭を下げたのでした。 啓太くんを表に出すつもりなどまったくなかった和希さんでしたが、どうやらそうも言ってられなくなったようです。自宅に戻った和希さんは、仕方がないとため息をつきながらメイド長の篠宮さんを呼びました。 「お呼びでございますか」 「遅くにすまないね。啓太のことなんだが」 「伊藤が何か」 「うん。どんな具合かと思ってね」 もう間もなく日付が変わろうかという時間に呼び出され、何か粗相でもあったのかと心配してしまった篠宮さんでしたが、どうやらそうではないようです。ちょっとほっとしながらも慎重にことばを選んで答えました。 「メイドは初めてということですが、その割にはよくやっていると思います。ただ……」 「ただ? なんだい?」 「毛づやをうまく出せないようです。一応メイドの仕事を減らして、日中に最低1時間、手入れをさせてはいるのですが。身だしなみや仕事のことですと私どもで見てやれますが、グルーミングとなるとさっぱりお手上げというのが正直なところです」 「なるほど」 どんなに容姿が可愛らしくても、どんなに完璧にメイドの仕事がこなせても、やはり猫耳である以上、毛づやはとても大切なのです。人間だってつやのないボサボサ頭をしていては、どんな美人も台無しですよね? 猫耳だって同じことです。 やはりネックは毛づやか。 和希さんが思わず考えこんでしまっていると、シャワーを浴びてきたパートナーの成瀬さんがバスタオルで髪を拭きながら隣に座りました。 「啓太がどうかしたの? 毛づやがどうこうって聞こえたけど」 「サロンに顔を出したら、どういう訳か皆さん啓太のことをご存知なんですよ。お披露目はいつかと攻めたてられた」 「ああ……。なるほどね。でも君、啓太は表に出さないって言ってなかったっけ」 「言いましたよ。今でも出したくはないです。でも……」 「そうは言ってられなくなった?」 「一応、明言は避けてきましたけどね。あれではこのまま逃げきるのは無理だ」 そう頻繁でなないものの、和希さんも自宅でパーティーをすることがあります。会長宅のパーティーを手伝いに行ったりもします。メイド長である篠宮さんはもちろん成瀬さんもそのときの奥様集団の迫力を知っているので、和希さんのことばを実感として受け止めることができました。 「啓太はまだ中嶋を怖がっているようか?」 あのご婦人の無邪気なことばを待つまでもなく、同じ猫耳である執事の中嶋さんに聞くのがいちばんいいことくらい、和希さんにも篠宮さんにもわかっています。特に中嶋さんのしっぽときたら、それはそれは素晴らしく手入れされているのです。長さ・太さ・形のバランスもトップモデル並なのですが、一糸乱れぬ毛並が、まるでナイロンで出来ているのではないかと思うくらい艶やかな毛づやを、更に引き立てているのです。世界中の王室から年に何度も引き抜きのオファーがあるというだけでも、中嶋さんのしっぽの見事さがわかろうというものではありませんか。まあ和希さんにとって有難いことに、中嶋さんの「興味無い」の一言で、すべて断られているのですが。 ところが、なのです。 そんなにいいお手本が近くにいるというのに、どういう訳か啓太くんが怖がって、中嶋さんに近づこうとしないのです。それどころか、中嶋さんが同じ部屋に入ってきたとたん、それまで背中のあたりで楽しげに揺れていたしっぽがうなだれてしまうのです。そしてそそくさと部屋を出て行ってしまうのでした。 「いえ、それがまだ……」 啓太くんだって最初から中嶋さんを怖がっていた訳ではありません。和希さんが啓太くんにお仕事の話をしたとき。啓太くんは大きなお屋敷で働くことを不安に思っていました。それでも和希さんと一緒にきたのは、執事さんが同じ猫耳だと聞いたからでした。それでなくてもまだ若い猫耳が都会に働きに出ようとしているのです。同じ猫耳の、それも執事が同じお屋敷にいるというのは、とても心強かったのです。 「なんであんなに怖がるようになったのかな」 不思議そうに成瀬さんが言いました。 「確かに中嶋さんは無愛想だし辛辣だし、気にいらないとなると容赦がないけど、あの人なつっこい啓太があんなに怖がるっていうのが、よくわからない」 「さしでがましいようですが、新入りのメイドにとって執事というのは、ある意味、主人より怖い存在かもしれません」 「そのあたりのことは僕にはわからないけど……。でもあの怖がり方は、上司が怖いっていうのとは違う気がするよ?」 「まあ今日はもう遅いから、その話はまたにしましょう」 和希さんがストップをかけたのは、それがすでに何度か持ち出された話題だったからです。 メイドと執事の間がぎくしゃくしていては、よい仕事などできません。ですから篠宮さんもただ見ていた訳ではなく、あれこれと言い聞かせたり、また相談にのってやったりしていました。それでも啓太くんは中嶋さんになつこうとしなかったのです。仕事をサボったり、いじめられたりしているのならともかく、感情の問題は言って聞かせてどうにかなるものではありません。それに下手につついて耳まで垂れてしまっては元も子もなくなってしまいます。耳が垂れた猫耳など、同じ猫耳の仲間からでさえ見下げられる存在なのですから。いい方法が見つけられないまま、そんな状態が今日まで続いているのでした。 「できないものをどうこう言っても仕方ない。できることを探しましょう。とりあえずは毛づやさえ出れば、中嶋との関係などどうでもいいのだし」 「かしこまりました。伊藤にはより厳しく指導を致します」 「僕も。以前、猫耳アイドルのグラビアを撮ってたカメラマンを知ってるから、何か参考にできることがないかきいておくよ」 「有難う。よろしく頼みます」 何日かたったある日のことです。啓太くんはお屋敷の長い廊下にモップをかけていました。動きが軽快な猫耳がモップをかける姿は、見ていてとても楽しいものです。それが長い廊下ともなれば尚更です。隅の隅まで丁寧に。篠宮さんに教えられた通りくるくるとかけていきます。でもしっぽの毛並はぴんぴんと好き勝手な方向に跳ね、毛づやは相変わらずの状態でした。啓太くんより数秒遅れで歩いていた和希さんは、その様子を見て、少し複雑な気持ちになりました。なぜならそれは、啓太くんが元気な証拠でもあるからです。確かに田舎育ちで毛づやの出し方もろくに知らない啓太くんですが、元気よく跳ねた毛並や表情豊かなしっぽの動きは、見ているだけで人の心を癒してくれるのです。現在の啓太くんを知っている人は皆、飾らない今のままでいて欲しいと思っています。身を飾ることを覚えていくにつれ、とりすました、まるで作り物のようになってしまう猫耳は本当に多いのです。本人と周囲が望んでいるのならそれもいいでしょう。でも和希さんをはじめとして、鈴菱のお屋敷にいる人でそれを望んでいる人はひとりもいません。どこかの奥様方のために啓太くんの最大の良さを失ってしまっていいものだろうか。そう考えると、和希さんはいつも複雑な気持ちになるのでした。 突然、啓太くんの様子が変わりました。モップを止め、足を止め、しっぽの動きも止まりました。耳だけがぴくぴくと何かを拾っているようです。最初は自分が後ろを歩いているのに気がついたかと思った和希さんでしたが、どうやら違うようです。それならと自分も足を止めて、啓太くんの様子を見ることにしました。 和希さんがそうしようと思ったのには理由があります。ここまで警戒するからには近くに中嶋さんがいるに違いないと思ったのです。今の和希さんの位置は、ふたりの様子を観察するのに絶好の場所でもありました。 思った通り、少し先のドアが開き、中から中嶋さんが出てきました。気づいているのかいないのか、少し後ろにいる啓太くんのことなどまるで知らぬふうに歩き去っていきます。その後ろ姿に揺れるしっぽは、難癖さえつけようがないくらい、それはそれは見事な手入れがされていました。中嶋さんのしっぽと啓太くんのしっぽとでは、名称こそ同じ「しっぽ」ですが、何か全然違うものに見えるくらいでした。啓太くんは今のままでいいと思う和希さんですが、ここまで美しく手入れされたしっぽを見てしまうと考えも揺らいでしまいます。あの半分、せめて5分の1でもいいから、啓太くんにも手入れをさせなければと思ってしまうのでした。 廊下の角を曲がり、中嶋さんの姿が見えなくなってしまってからようやく、啓太くんの全身から緊張が抜けました。やれやれといった感じにしっぽも下がり、緊張をほぐすようにゆらゆらと揺れはじめました。そして握り直したモップで掃除を再開しようとして、和希さんと目が合ってしまいました。こうなってしまっては観察を続けることなどできません。慌てて廊下の端に寄って頭をさげる啓太くんを、和希さんが何くわぬ顔で追い越して行きます。でもそのとき。啓太くんの顔がほんのりと赤くなっているのに、和希さんは気がついてしまったのでした。 ![]() 書斎に戻って仕事をしようと思った和希さんでしたが、先刻の啓太くんの顔が目の前から離れようとしませんでした。あれは和希さんを見て赤くなったのではないでしょう。だとしたら啓太くんが顔を赤らめた相手は、中嶋さんさんしかいないことになります。でも啓太くんは中嶋さんを怖がっていたのではないでしょうか。考えてもわからないとわかっていることを考えるのは時間の無駄です。和希さんは仕事を後回しにして中嶋さんを呼びました。 「何か用か。俺は忙しいんだ。手短にしてくれ」 執事のくせに主人を主人とも思わない物言いですが、これもまた「身を飾ることを覚えた猫耳」の、ひとつの姿かもしれません。ですが、見た目だけでなく仕事も完璧な猫耳に、言葉遣いまで云々する主人がいないこともまた事実です。相変わらずだと思っただけで、和希さんは話を続けました。 「じゃあ短刀直入に聞こう。君、啓太に何かしたかい?」 「啓太?」 常に数瞬先の未来を予測しながら動いているような中嶋さんにも、その質問は予想外だったのでしょう。不思議そうに眉を寄せて問い返してきました。 「啓太がどうかしたのか」 「君に近づくのを極端に警戒している。怖がっているようにも見えるんだが」 先刻の、あの顔を赤らめた姿のことは敢えて言いませんでした。正確には「聞けなかった」のですが、そのことには和希さん自身も気がついていませんでした。気がつく前に中嶋さんが失笑をもらしたからです。中嶋さんは皮肉なかたちにくちびるの端をつり上げながら言いました。 「ご主人様も大変だな。新入りのメイドのことまでご心配とは」 「使用人の人間関係がぎくしゃくしていると仕事が円滑に進まない。それはわたし達の生活に支障をもたらすと思うんだが。どうだい?」 「ふん。じゃあまあ、そういうことにしておくさ」 「お互いの意見に合意が得られたのを、大変喜ばしく思うよ」 中嶋さんがそこで言葉を切ったのは、話題を打ち切りたかったからなのかもしれません。でも今日の和希さんに引き下がるつもりはなく、それはまた中嶋さんにも伝わったようです。ひとつ露骨な溜息をついた中嶋さんはこう言いました。 「そこまで言うなら教えてやらんでもないが」 「どうぞ。続けてくれたまえ」 「あれにはお仕置きをした。いけないことをした子に、それがいけないことだと教えるのも俺の仕事だからな」 「……は?」 さすがの和希さんもこの答えには驚いたようです。切れ者で通っている彼には珍しくぽかんとした間抜け面をさらしていましたが、中嶋さんはほんの一瞬、薄笑いを浮かべただけで何も言いませんでした。これはきっと主人に対する礼儀から言わなかったのではなく、単に言っても何のメリットにもならないからなのでしょう。 「お仕置きとはこれはまた……。いったい、何をしたって言うんだ」 「その『何を』というのはどこへかかる? 啓太のしたことか。それともお仕置きの内容か」 「そういえばそうだな。じゃあ両方頼む」 「いいだろう。まず、だ。啓太は嘘をついた。先輩のメイドがさぼって遊びに行ったのを『お使いに行った』と嘘をついた。いくら頼まれたからと言って、上司である俺についていい嘘ではない」 「それで? どんなお仕置きをしたんだ?」 「何。大したことじゃない。ちょっとしっぽをひねってやっただけだ」 しっぽをひねった、だと? 和希さんは文字どおり頭を抱えてしまいました。なにしろ今の今まで猫耳のしっぽをひねるなんて考えたこともなかったのですから。 いやはや。同族ならではの発想というのは、時として想像を超えたものがあるようです。『1件だけではサンプルにならない』とはよく言いますが、ふたり目の猫耳である啓太がいなければ、そんなことなど知らないままだったのに違いありません。 「それで? その……。わたしにはしっぽがないのでよくわからないんだが、しっぽをひねるというのは、猫耳にとって効果があるのかい」 「それぞれだろう。少なくとも啓太には大変効果的だったようだ」 「なるほど。覚えておこう」 そうしてその場を辞した中嶋さんは、ドアのところで一度振り向きました。 「ああ、そうだ。一言忠告しておくが」 「何かな」 「今の話を聞いたからといって、むやみやたらとしっぽはひねらない方がいい」 「理由は?」 「テクのない奴がやると憎まれるだけだ。あるいはその日のうちに姿を消すか、どちらかだろう」 「分かった。ご忠告、痛み入るよ」 まるで何日も徹夜が続いたときのように疲れてしまった和希さんは、ドアが閉まったとたん、大きな大きなため息をついたのでした。 しっぽのことで驚いた和希さんでしたが、猫耳について新しく分かったことは他にもありました。それは「猫耳が基本的にとても意地悪だ」ということです。中嶋さんは傍若無人さの方が目立っているのであまり意地悪なようには見えないし、啓太くんは啓太くんで明るいいい子なので意地悪なところなどこれっぽっちもありません。このふたり以外の猫耳とあまり話したことのない鈴菱の人たちには思いもしないことでした。 それは毛づやの手入れ方法を相談するために、成瀬さんが猫耳アイドルのグラビアを撮っていたカメラマンを訪ねたときでした。話を聞いた彼は気の毒そうにこう言ったのです。「猫耳のお守りは大変だねぇ」と。 「こっちはそんなつもりがなかったのに、どこかの奥様の気まぐれでパーティに出さなきゃならなくなっただろう? 本人は毛づやのことなんてまるで構っちゃいないしさ。もうお手上げなんだよ」 「へぇ?猫耳からエステに行きたいって言ったんじゃないのか」 「うちは執事も猫耳だけど、エステなんて行ってないよ?」 カメラマンが言うには、猫耳はとてもわがままで、そして意地悪なのだそうです。もちろん彼が知っている猫耳はアイドルばかりなのですからそういう面があるのは否めません。エステに行きたいと思うのも当然でしょう。でも猫耳の意地悪はとびきりなのだと、そのカメラマンは言いました。 猫耳を使うグラビアなどの撮影は、すべて猫耳の希望するスケジュールで行われるのだそうです。気に入らないスケジュールでも組もうものなら黙って撮影をすっぽかし、二度とそのカメラマンや雑誌社の仕事には現れないのです。自分が決めたスケジュールでも土壇場で変更してほしいと言ってくるし、気に入らない相手にはその変更をわざと伝えない。そしていちばん多い意地悪が、ライバルの毛を切ってしまうことでした。しっぽの毛をほんのひとつまみ、ハサミでちょんとやるのです。そうすれば毛並が乱れて、元に戻るのに何ヶ月もかかってしまいます。そして当然のことながら、その間、猫耳としての魅力は半減してしまうのでした。 「猫耳って奴らはちょっとでも嫌な思いをすると、すぐに行方をくらましてしまうんだ。追い落としたい側にとっては、こんなに簡単で効果的な方法もないだろうね」 成瀬さんと、そして成瀬さんからその話を聞いた和希さんは、啓太くんがそんな嫌な猫耳でなかったことをとても喜んだのでした。 |
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