Sweet,Sweet,
Honey Moon

〜 9.再会 〜




 キィを預けに行って、フロント係から二つ折りにされたメモを渡された。その場で開いてメッセージを読んだ中嶋はほんの少し表情を緩めると、フロント係に礼を言った。
「どうかしたんですか?」
「いや……。篠宮が到着時間を知らせてきたんだ」
「篠宮さんが?」
 篠宮らしい心配りに、啓太は一瞬、表情を輝かせた。が、すぐにそれは消し去られてしまい、どちらかといえば悲しげに見える顔を、向こうへ向けて隠そうとする。その頭をつかんで、中嶋は啓太を自分の方に向かせた。
「こら。どうした。連中が来るのが不満か?」
「そんなことないです !! キィのお礼も言いたいし、早く会いたいです」
 啓太は慌てて言った。
「じゃあ何故そんな顔をする」
「だって、王様たちが来ちゃったら、この街にいるのもあと一晩っていうことじゃないですか……。俺、ここが本当に好きになったから」
「寂しいか?」
 小さく頷いた啓太の肩を、中嶋がそっと抱いた。
「また来るさ。何度でも、な」
「……はい」
「昨夜、話しただろう。俺はハーバードに行く。もちろんおまえも連れて行く。ボストンはこの海を渡った対岸だ。来ようと思えば休みのたびにだって来れる」
「……はい」
「なくなる時間は数えるな。ある時間を使い切ることだけ考えろ」
「……はい」
 促されて啓太は歩きはじめた。そうだ。この街にいるのは、あと24時間しかないのではなく、あと24時間あるのだ。もう一度見ておきたいところ、行ってみたい店、そしてまだ見ていないところがいくつも残されていた。使い切っても余ることだけは絶対にない。

 メモにあった時間より少し早めに出かけたつもりだったが、バスはすでに着いていたらしい。ホテルの場所でも確認しているのか、ターミナルの隅で地図を広げている丹羽と篠宮の姿が見えた。
「おうさまーぁ、しのみやさぁーん」
 彼らの姿を見つけるなり駆け寄っていった啓太は、その声に振り向こうとした篠宮の胸に飛びこんだ。
「おいおい啓太。んなことしてたらヒデの野郎がむくれるぞ?」
「え? どうしてですか?」
 不思議そうに顔をあげた啓太には、もうひとつそのあたりの自覚が足りないようだ。丹羽たちの方にゆっくり歩を進めてくる中嶋は、丹羽ならともかく篠宮相手に腹を立てるわけにもいかず、ただ苦笑を浮かべていた。
「それより伊藤。元気そうだな」
「そうそう。ヒデに壊されてるかと思ったぜ」
 篠宮も丹羽も、実は啓太の様子を見てほっとしていたのだった。ヒースローで出迎えてからというもの、楽しそうにしていても、啓太にはどこかぴりぴりしたところが見え隠れしていた。チェスターで中嶋とふたりきりにしたものの、もし中嶋とうまくいっていなかったら、とりなす人間がいないということになる。だがその心配も杞憂に終わったようだ。それは啓太の溢れるような笑顔を見ればすぐにわかることだった。篠宮と丹羽は、ふたりを置いて出かけたことが正解だったのを知ったのだった。
「それより。あのっ、車のキィ、有難うございましたっ」
「ああ、どこかへ連れていってもらったか?」
「はいっ。北ウェールズぐるっと回って、リバプールで港の夜景見せてもらいました」
「おーお。大盤振る舞いじゃねぇか。大変だねぇ、花嫁連れは」
「……誰が大変だって?」
 すぐうしろに来ていた中嶋は、まだ篠宮にしがみついたままの啓太をさりげなく引き離した。啓太も逆らわずに中嶋の腕に抱き取られた。
「別に。誰とも言ってないさ。ただ、花嫁を連れてると大変だな、と」
「ふふん。まあいい。そういうことにしておくさ。それより早くホテルに入ろう。ゆっくり城壁を回りたい」
 あと少しでチェック・イン・タイムが始まる頃だった。ホテルに行けばすぐに部屋が使えるだろう。案内するために先に立った中嶋と啓太は、夕食はどこへ行こうか相談を始めていた。丹羽から車のキィと引き換えに頼まれていたにもかかわらず、美味しい食事のできる店というのを探していなかったのだ。うしろからついて行きながら、しばらくその様子を見ていた篠宮が丹羽に声をかけた。
「おい、丹羽」
「あ?」
「見てみろ、あのふたりを」
「どうかしたか?」
「いや……。伊藤が中嶋と並んで歩いている」
「ああ……。そうか。そうだな」
 いつもいつも、啓太はまるで遠慮しているかのようにうしろを歩いていた。彼らの方で足をゆるめても、並びかけたと思ったらすぐにうしろに下がってしまうのだ。空港でのように、中嶋に肩を抱かれでもしていない限り、並んで歩くことは絶対になかったといっていい。そんな啓太が中嶋と肩を並べて歩いている。この街で彼らの間に何があったのか、丹羽や篠宮には想像もつかなかった。だがそれがふたりにとってどれほど大きなことだったかは容易に想像がついた。
「そうか……。啓太のやつ、ヒデと並んで歩けるようになったんだな」
「ああ。中嶋ほどの男があれだけベタ惚れしているんだ。伝わらないはずはない」
「正月に相談されたろ? 啓太を連れてきていいかって。いいって言っといてよかったぜ」
「まったくだ」
 うしろでそんな会話が交わされていることも知らず、啓太は中嶋の隣を歩いていた。

 イーストゲート・クロックの傍から階段を上がった。啓太にとってはようやく上がれた城壁だった。本当は午前中に1周するつもりだったのだが、篠宮が到着時間を知らせてきたので、一緒に回ることにしたのだった。篠宮は今までと同じように、地図とガイドブックをしっかり持っていた。
 城壁の上は思ったより幅が広かった。お世辞にも小さいとはいえない丹羽と篠宮が並んで歩いたとしても、余裕を持って歩けるくらいだろう。外側は啓太の胸のあたりまで綺麗に石を積み上げてあり、厚みもかなりあるのに、内側で建物のないところは鉄の棒でできた簡単な柵がついているだけだ。この城壁ができた頃、この街はイングランドとウェールズの最前線だったのだ。ここから外へ向けて石を投げたり弓を射たりしたのだろう。だから外側は高くて分厚いのに、内側はおざなりの手すりだけなのだ。上からの風景に眼を奪われながらも啓太は、一昨日、中嶋に話してもらったこの街の歴史をちゃんと思い出していた。
 歩きやすく作られた石畳を時計と逆廻りに、右へ右へと歩いていく。歩き始めてすぐにある鐘楼を過ぎれば、左手は忘れられない場所。大聖堂だ。行き過ぎてなお、何度も何度も振り返って見る啓太に、丹羽が軽口を飛ばした。
「どうした? あそこで式でも挙げたか?」
「えーっ? そんなことしませんよ」
 苦笑して見せながら啓太は、誓いのキスをしただけです、と心の中でそっとつけ加えた。
 またゲートをひとつ越え、北のキング・チャールズ・タワーに着く。篠宮が「王権神授説の資料がある」と説明したが、それよりも「退却していく自分の軍隊をチャールズ1世がここから見ていた」という逸話の方が聞いていて楽しかった。ガイドブックを見ながら、しかもいたってまじめに解説しているのに、篠宮のガイドぶりは何故かとてもおもしろいのだ。
 そこから西の端までは運河と壁が平行している。チャールズ1世になったつもりで外をのぞくと、先刻、丹羽や篠宮を迎えに行ったバス・ターミナルがあった。
 待たされた気持ちがあるからか、城壁の上は本当に楽しかった。建物の間を縫うように歩いたかと思うと、いきなり視界が開けたりするのだ。そんなときはまともに冷たい風が吹きつけてきて、思わず首をすくめてしまう。びっくり箱の中を歩くとこんな感じなのかもしれない。樹に囲まれたようになっている場所で立ち止まった中嶋が、このあたりにはリスがいるんだが、と啓太に言った。

 城壁と密着させて建てられた建物には、城壁から直接出入できるようになっているものもあった。一時間くらい歩いたところで啓太たちは、そんな建物にあるティールームに入って休憩した。
「やれやれ。なんか今日は疲れたよな」
 珍しく紅茶を注文した丹羽と篠宮が、揃って紅茶に砂糖とミルクを入れた。
「そう言えばメッセージの受信時間がずいぶん早かったな」
「ああ。少々辺鄙なところにいたんだ。ここへ来るのにマンチェスターを経由しなければならなかったんだが、午前中のバスが朝しかなくてな」
「でもよ、朝が早いだけなら別にかまわねぇんだって。疲れたのは、乗り継ぎが悪くてマンチェスターで2時間ちょい時間をつぶさなきゃならなかったことさ」
「なるほど。バス・ターミナルに戻って待ってなきゃならん時間を除けば、観光できるほどの時間もないな」
「そういうこと。ま、昼メシ食うには十分な時間だったけどな」
 片手で頬杖をつきながら、丹羽が甘ったるそうな紅茶をすすった。そういえば一部の隙もないはずの篠宮も、よく見れば髪が少し乱れているところもある。いったいどこから来たんだろうと啓太は思った。
「あのぉ……。そんな辺鄙なとこってどこだったんですか?」
「カーライルだ」
 意外だったのか、ほおっとばかりに中嶋が片眉を跳ね上げた。
「こっからマンチェスターに行っただろ? 次の朝の便でダンディーに飛んで……。3日目がエジンバラで昨日がカーライルだ」
「それはまた……。ずいぶんマニアックなコースを選んだものだ」
「まあな。エジンバラ以外は、ツアーではぜってー行かねーって」
 そのことばの通り、啓太にはちんぷんかんぷんな地名ばかりだった。マンチェスターはサッカーチームがあるし、エジンバラもとりあえず名前くらいは知っている。だが他のふたつははじめて聞いた名前だったし、それぞれの位置関係にいたっては見当さえつかなかった。思わずうなってしまった啓太に、篠宮がガイドブックの最初に載っている地図のページを広げて見せた。篠宮の指を眼でたどってみると、彼らがずいぶん北の方まで足を伸ばしたことが分った。
「こういう機会でもないと行けない所ばかりを選んだんだ。しかも観光シーズンではないからな。とても興味深い旅になったと思う」
「どんなトコだったとかは、明日の晩にでも話してやるよ。なにしろ明日は、おまえらと一緒の4人部屋だからな」
「えっ!? そうなんですか?」
 驚いた啓太が確認するように中嶋を見た。
「明日の夜は船だ。二段ベッドがふたつ入った船室なんだが……。さっさと寝ないと丹羽のいびきで寝そびれるぞ」
「……そうなんですか。じゃあまた篠宮さんに睡眠薬もらった方がいいのかな」
 小首をかしげて考えこむ啓太の頭を、テーブル越しに伸びてきた丹羽の手ががしがしと撫でた。
「おい……。真面目に受け取るな、って」
「そうだ。丹羽のいびきは確かにうるさいが、ひばりちゃんの鼻歌を大声で聞かされているよりはうんと静かだ」
「あ、なるほど」
「だから真面目に受け取るな、ってるだろっ!!」
 丹羽の手がまたがしがしと啓太を撫でた。荒っぽくて痛かったが、啓太は心の底から笑っていた。中嶋とふたりきりの時間はこれ以上ないくらい幸せだったが、4人には4人の楽しさがあった。彼らと合流したとたんに、空気が静から動に変わった感じさえするのだ。そして啓太は、自分がそうやって笑っているのを、ほかの3人が喜んでくれているのに、ちゃんと気がついていた。
 さらに1時間近く歩いて、全体の4分の3を過ぎた頃、城壁がどんどん下がっていった。一部分だが途切れているところがあるのだ。ここで丹羽と篠宮は、そのまま旧市街の観光に行くことになった。啓太は最後まで城壁を回りたかったので、2時間後に落ち合うことを決めて丹羽たちと別れた。
「あとで王様たちとディー河の方に行っていいですか?」
「ああ。かまわない」
「この街はどこも綺麗だけど、ディー河とオールド・ディー橋の眺めは最高だと思うんです。さっきもちょっと見えたけど、下から見るのもいいでしょう? だから王様や篠宮さんにも、と思って」
「そうだな。あの景色は俺も好きだ」
「……よかった」
 安心したように小さく微笑った啓太の耳元に、中嶋がそっとキスを落とした。

「なーんかさ、騙されたみてーな気がするんだけどよ」
 夕食の後、啓太たちの部屋に引き上げてきた丹羽が、啓太の淹れた日本茶をすすりながら不満そうな声を出した。日本からティーバッグとせんべいを持ってきていた啓太が、部屋に備え付けてあったポットで淹れたのだった。久しぶりだったからか、中嶋や篠宮までがせんべいに手を出していた。
「えっ!? 王様、詐欺にあったんですか?」
「ああ。ここにいる詐欺師ふたり組みにな」
「えっ? えっ?」
 それは自分のことかと、啓太は目を白黒させた。救いを求めるように中嶋を見たものの、中嶋は知らん顔をして地図を読んでいる。しかたなく啓太は丹羽の方に向きなおった。
「俺ら、美味い料理を食わせてくれる店を探しとく、って条件でクルマのキィ預けたんだぜ?」
「はい」
「それが何でホテルのレストランなんだ?」
「あのお店、美味しくなかったですか?」
 不安そうに丹羽をのぞきこむ啓太に、篠宮が思わず苦笑をもらした。
「丹羽。いいかげんにしろ。このふたりの間に首をつっこんだら、自分が馬鹿に見えるだけだ」
「んなことは分かってる。分ってるけどよ。なーんか腹たたねぇか?」
「立つ」
「って、んなクソ真面目な顔でさらっと言うか?」
「さらっと言わなくてどうする。変な言い方をすると、伊藤のことだ。何故あの店を選んだか理由を言い始めるだろう。そうなったら自分が世界一の大馬鹿者に見えるぞ」
 そう言うと篠宮は啓太の淹れた日本茶を一口すすった。丹羽が噛み砕くせんべいの音がバリバリと響いた。
「安心しろ、伊藤。料理はとても美味かった。ただちょっと丹羽は……、というか俺たちは、拗ねているだけだ」
「拗ねるんですか? 篠宮さんと王様が?」
「いや……。ヤキモチを焼いている。あるいは……そうだな。うらやましがっているのかもしれんな」
「???」
「つまりだな、おまえたちが美味いと思ったレストランが、何故ホテル内の店でなければならなかったのか。理由はすぐに想像つくだろう?」
「それは俺が……。………………ああ、そうですね。はい」
 消え入るような声で「すみません」とつけ加えた啓太に、ふて腐れた顔をしていた丹羽がとうとう噴出した。
「おまえのその真面目さは、篠宮と張るなあ」
「俺が? 篠宮さんと、ですか?」
「ああ、そうだ。笑っちまうくらい生真面目だ。だからその真面目な啓太にお願いがある」
 そうい言う丹羽の顔はもう笑っていなかった。目元や口元に暖かさを残した、それでいて真剣なまなざしが、啓太をまっすぐに見ていた。そのあまりの真剣さに、啓太はごくりと生唾を飲みこんだ。
「……はい。なんでしょう……?」
「ヒデをよろしく頼む。こいつはこんな男で、これからもおまえにつらい思いをさせるかもしれない。泣かせることだってあるに違いない。だがな、おまえに対する思いだけは本物だ。おまえはヒデが惚れて惚れて惚れぬいて、ようやく手に入れた宝物なんだ。おまえにとっちゃあ有難迷惑かもしれないが、この通りだ。ヒデのことをよろしく頼む」
「伊藤。俺からもだ。頼んだぞ」
「王様……。篠宮さん……」
 ふたりに頭を下げられて、啓太は驚いたように眼を見開いた。中嶋も思わず地図をおろしていた。が、啓太は視線を落としたものの、いつものように中嶋の方を見ようとはしなかった。
 数瞬ののち、啓太は自分自身の意思で顔をあげると、しっかりとした声で「はい」と言った。その顔には中嶋でさえ見たことのないくらい穏やかな、それでいて静かな決意に満ちた微笑が浮かべられていた。

 どのくらい眠った頃だろう。傍らに啓太がいないことに気づいて、中嶋は反射的に身体を起こした。昨夜、一睡もせずに語り明かした啓太と中嶋は、荷物の整理もそこそこに、いつもより早くベッドに入っていた。眠りに落ちるのにもさほどの時間はかからなかったはずだ。そして無意識のうちに啓太を求めていた左手が何度かシーツを探ったところで、中嶋は啓太がいないことに気がついたのだった。
 啓太がベッドから抜け出したとも知らずに眠っていたのは初めてだった。いつもなら啓太の出入りはちゃんと把握している。わざわざ眼を開けたりしていないだけだ。つまり今夜はよほどよく眠ってしまっていたのだろう。
 月の光で、部屋の中は意外なくらい明るかった。トイレにでも行ったのかと思いながら、ゆっくりとあたりを見回した中嶋は、カーテンを開け放した窓辺に座る啓太を見つけて、我にもなく息をのんだ。時代がかった椅子に腰かけた啓太は、うっとりとした横顔で背景に溶けこんでいたのだった。ありきたりの表現をすれば、それはとても綺麗な光景だった。
 邪魔をしたくない、と中嶋は思った。啓太が見たいものを見たいだけ見せてやりたかったし、そんな啓太をただ見守っていたくもあったからだ。だが明日は移動だった。いくら小さな島とはいえ、今いる西海岸から、東海岸にある港まで行かなければならない。さらには船に14時間も乗船する。睡眠不足では体調を崩してしまうのが眼に見えていた。それではとてもフランクフルトまで行き着けない。中嶋はベッドから降りると静かに声をかけた。
「……眠れないのか?」
「すごく綺麗で……。寝てるのがもったいないんです……」
 啓太が窓の向こうに眼をやったまま答えた。窓枠に手をついた中嶋は、腰をかがめて啓太の眼の高さから外を眺めた。啓太が気に入ったというオールド・ディー橋は見えなかったが、ディー河の流れが月の光をはじいて煌いていた。
「人魚姫が泳いでいるみたいでしょう?」
「ああ。そうだな」
「こんな綺麗な世界があるなんて、俺は知らなかった……」
 口元に微笑を湛えながら、啓太はどこか泣きそうな目をしていた。邪魔をしたくないともう一度思ったが、中嶋はそっと啓太の両肩を抱いた。
「もう寝ろ。昨夜も寝てないんだ。睡眠不足で体調を崩したら、あとがつらいぞ?」
「……はい」
「明日の朝、少し早めに起こしてやる。出発をぎりぎりまで遅らせたら、もう一度、河沿いに歩く時間も取れるだろう」
「……はい」
「さあ」
 促そうとした中嶋の首に、啓太が振り向きざまに抱きついてきた。無言でねだるキスに応えてやりながら中嶋は啓太を抱き上げた。そして啓太が寝息をたてはじめても、しっかりと腕の中に閉じこめたままでいた。それはまるで、人魚姫に魅入られた啓太が連れ去られるのを恐れているかのようだった。



いずみんから一言

すみません、遅くなりました〃
実はチェスターを離れるまで書く予定だったのです。が、このあと、どーしてもつなげることができませんでした。ということで結局、次回に回しに。だったら早く up しろよ、って。
ま、それはさておき。
ようやく啓太くんを城壁一周ツアーに行かせてやれました。やれやれです。
それとディー河なんですが、この時季の写真を見ると、木の葉が落ちてしまってとても寒々しい光景だったので、思わず書くのをやめてしまいました(汗)。
夏はすごく綺麗んだけどなあ……。




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