約束〜もう一度あの場所で〜(19〜24)



2006/03/30(木) 約束〜もう一度あの場所で〜‥19

「すみません。」
 ケイタは素直に頭を下げた。だが、今になって思えば、電話して迎えに来てもらえば‥と思いもするが、あの時は、本庄への恐怖と、早く帰らなくては、兎に角走らなくては‥という気持ちが先走って他に何も考えられなかったのだ。
「‥それで転んだのか?ずっと走ってきたんだな?全く無茶をする。」
 呆れたように言いながら、中嶋はため息をついた。
「はい。俊介に途中で逢って、自転車に乗せて貰ったんです。だから間に合ったんです。そうじゃなきゃ今頃‥。」
 ブルリとケイタの体が震えた。俊介に偶然逢わなければ、今頃‥それを思うたび、体が震えてしまう。
「俊介?ああ、あの新聞配達の‥。」
「あいつが偶然ねえ?」
 偶然、何かひっかかるものを感じながら、中嶋は俊介の顔を思い出していた。
 新聞の勧誘に来たのが、知り合うきっかけだったのだが、あの時俊介は、最初から妙にケイタにだけ馴々しく、媚を売るように接していた。それが中嶋には気に入らなかった。
「はい。俺半分諦めてたんです。走ってももう無理だって‥和希さん優しかったけど‥でもやっぱり体はだるかったし、痛かったし‥足に力が入らなくて‥だから‥転んで‥。」
「和希?今日相手は和希だったのか?」
 丹羽が驚いて声をあげた。
「え?はい‥あ、そういえば、本庄さんが、王様の紹介だって‥知り合いですか?お友達?」
「ちょっとした知り合いだ。‥だいた‥いや、知り合いだよ昔のな。」
 友達なんて思ったことなんか無い。そう言おうとして丹羽は言葉を濁した。
 自分の感情をケイタに押しつけるつもりはなかった。今、和希はケイタの客なのだ。マイナスの情報を悪戯に与えるのは良くない。−−−そう判断しながら、納得のいかない感情が、丹羽の中にはあった。
「そうですか‥」
「あいつ‥そうか‥それで。」
 丹羽の言葉にケイタはきょとんと首を傾げた。
「王様?」
「ケイタ?和希と何かあったのか?」
「何か?‥あの?」
 急に話を変えられ、戸惑いながら、ケイタは俯いた。和希の顔を思い出すだけで、胸が苦しくなる。
「あったのか?」
「‥たぶん‥あの、あったのかも。」
 話すのも辛い。けれどケイタは、聞かれたことをうやむやに誤魔化す事が出来る性格では無かった。
「なんだ?」
「俺、怒らせたと思う。凄く怖い顔してたから。」
 悲しくて仕方ない。怒らせたくて言った言葉では無かった。なのに、和希は突然大声になって、ケイタを睨んだのだ。それが悲しかった。
「怖い?」
「はい。それまでは、あの‥凄く優しくて、笑ってくれて‥でも、俺が駄目って言っちゃったから、それで‥。」
「駄目?」
「はい。」
 ケイタは俯きながら、状況を説明した。
 以前に和希と逢ったことがあり、また逢えたら‥と思っていたこと。今日、和希が自分を気に入ってくれたこと、そしてまた逢いたいと言ってくれたのに、「駄目」と思わず言ってしまったこと、本庄へ電話を掛けさせられた事‥などを話した。
「そうか、そんな事でねえ、あいつ案外餓鬼なんだな。」
「え?」
 ため息混じりの丹羽の言葉が、ケイタには理解できなかった。
「で?ケイタはなんで駄目って?お前、あいつのことそんなに気に入らなかったのか?」
「違うんです。本庄さんに『いいカモになるから、絶対気に入られて来い。』って言われてて、だから俺、駄目なんて本当は言っちゃいけなかったんです。でもなんか‥。
 自分でもよく分からないんです。なんで駄目なんて言っちゃったのか‥だからうまく説明出来なくて。それで、和希さんを怒らせちゃったんです。」
 駄目‥と自分が言った理由をケイタ自身が見つけられないままだったのだから、説明できる訳がなかった。ただ嫌だったのだ、また和希に買われる‥と言うことが、たまらなく嫌だったのだ。
「怒りたい奴は怒らせておけばいい。放っておけ。」
 中嶋の言葉にケイタは頷くことが出来なかった。
「‥でも‥。」 
「でも?」
「いいえ、次に逢ったときに謝ります。許してくれないかもしれないけど。」
「そうだな。じゃ、この話はこれで終わりだ。ケイタ、寝るぞ。」
「はい。あの、でもまだ眠くないです。」
 眠るのが怖かった。悪い夢を見そうで、怖かった。
「駄目だ。疲れてるんだろう?顔色が良くない。」
「でも‥。」
「兎に角ベッドに入る。いいな?」
「そうだな、その方が良いと俺も思うぞ。じゃ俺は風呂に入ってくる。」 
「はい‥。」
 二人に言われ、ケイタが仕方なく頷くと、中嶋はケイタの体を抱き上げ、ベッドルームに運んだ。
「いい子に寝たら、明日ホットケーキ焼いてやるから。」
「本当?」
 ケイタに着替えを渡し、中嶋も服を脱いだ。ケイタを拾った時から、(一人では眠る事が出来ない)ケイタを寝かし付けるのは、中嶋の役目となっていた。
「俺に食えと強要しないならな。」
「おいしいって海野先生言ってましたよ。」
 パジャマに着替え、ベッドに入りながら、ケイタは言った。
「俺はいらん。海野先生も余計な事を教えてくれるもんだな。あそこに行くたび、変な知識が増えてないか?」
 ケイタの隣に体を滑り込ませながら、中嶋は呆れた様に言うから、ケイタはくすくすと笑ってしまう。
 中嶋は甘いものが嫌いなのだ。
「だって甘いもの好きだから、話が合うんです。へへへ。おいしいケーキのお店とか、よく知ってるんですよ。」

※※※※※※※※※※

4月の仕事の予定が恐ろしいことになってて泣いているみのりです。皆様お元気ですかー?
Web拍手御礼!
26日 拍手をありがとうございました。

28日 0時の方へ
日記更新を楽しみにしている!と書いてくださってありがとうございます!嬉しいですー。
ご質問頂いたところは、お答えするとネタばれになってしまうので‥イライラすると思うのですが‥申し訳ありません。
この話、和希さんがずっと可哀相なんですが、最後は幸せになるように頑張って書いてますので、最後まで(かなり長いですが)読んで頂けたら嬉しいです。



                    ◆          ◇          ◆



2006/03/31(金) 約束〜もう一度あの場所で〜‥20

「そうか。よかったな。先生と気が合うんだなケイタは。」
 中嶋が苦笑いしながら自分の髪をくしゃりとなぜるから、ケイタは目を瞑り中嶋の胸に擦り寄った。
「中嶋さん。」
 煙草と消毒薬の匂いを吸い込みながら、中嶋の指の動きを感じているだけで、ケイタは不安が少しだけ消えそうな気がした。−−−けれど‥。
「ごめんなさい。」
「ケイタ?」
「迷惑かけて、いつもいつも、心配かけて、ごめんなさい。」
 甘えて守られているだけの自分が悲しくて、ケイタはぎゅっと目を閉じたまま言葉を吐き出した。
「謝るな。莫迦だな。」
「俺、強くなったと思ってた‥‥もう平気だと思ってた。なのに‥ごめんなさい。」
「ケイタ。謝らなくていい。お前は‥なにも悪くない。」
「やっぱり駄目なんです。本庄さんが恐い。恐くて恐くて‥俺、俺‥。ごめんなさい。俺、いつまでも弱いままで、迷惑ばかり掛けて、強くならなきゃいけないのに、分かってるのに、なのに‥。」
 ケイタはそれ以上言葉を続ける事が出来なかった。
 中嶋の腕の中で、声を殺して泣くことしか、今のケイタには出来なかった。

7、雷の夜
「ケイタは寝たのか?」
「ん?ああ。やっとな。」
 泣き付かれてケイタがようやく眠った頃、丹羽が足音を忍ばせ部屋に入ってきた。
「なあ、さっきのあれなんだったんだ?」
 ベッドの端に座り、眠るケイタの顔を覗き込みながら聞いてくるから、少し考えて中嶋は小声で話し始めた。
「‥‥ああ、たぶん過呼吸だ。」
「たぶん?」
「ああ、精神科は俺の範囲外だから詳しくは知らんがな。聞いてた症状にそっくりだったから、試してみた。」
 たぶん‥という言葉しか使えないのが情けなかったが、専門外なのだから仕方がない。実際あの方法が上手くいったから、そうなんだろう‥というだけで、中嶋も自信をもって行っていたわけでは無かった。
「試したって?あのビニール袋か?」
「そうだ。過呼吸っていうのは、文字通り酸素を吸いすぎるんだ。
呼吸がうまく出来ていない様な錯覚を起こしてな。無理矢理に酸素を吸い込み続ける。
 なんでも、陸にいるのに溺れたような気分になるらしい。
 だからビニールの中に息を吐き出させて何度も吸わせる。そうすると、自然に自分が吐き出した二酸化炭素を吸い込んで行くことになる、それで体の中の酸素と二酸化炭素のバランスが保たれてきて、おまけに袋が膨らんだりしぼんだりするから、呼吸してるってのが、目で分かる。それで気持ちが落ち着くということらしいんだが、詳しいことは知らん。
 まあ、上手く行って良かった。と言うわけだ。」
 自信を持って、大丈夫だと安心させる。それが一番の治療法だと聞いたことがあった。だから中嶋はそれを試したに過ぎなかった。
 ポーカーフェイスは、中嶋の特技と言っても良いくらいだから、ケイタを騙す自信はあった。
「上手く行ってって‥お前あんなに自信たっぷりにやってたくせに‥行き当たりばったりだったのかよ。」
「そう言うことだ。鈴菱の莫迦を怒らせて、動揺しているところに、本庄に相当脅されたんだからな。ストレスが体に掛かり過ぎたんじゃないかと思う。」
「信じらんね−。当たってたから良かったものの、本当になにかの病気だったらどうするつもりだったんだよ。」
「どうもこうも、特に目立った外傷も無く、ケイタに持病が無いことは俺が一番良く知ってる。なら思いついた治療からしていくべきだろう?」
 外科的な要素が無い以上、中嶋が出来る治療は限られてしまう。だが、過去の体験から薬を殆ど飲めず、注射針を見ただけでパニックを起こすケイタを、不用意に他の病院に連れていくことなど出来ない。だから、中嶋がなんとかするしか無かったのだ。だがそれを今、丹羽に説明するだけの気力が、中嶋には無かった。
「それにしても、騙されたぜ。てっきり確信持ってやってやってるんだとばっか思ってた。」
「そんなもの、自信なさそうに治療する医者なんか居るわけ無かろうが?オドオド診察して、オロオロ悩まれてたら、患者は不安になるだけだろう。
 医者っていうのはな、この世で一番嘘が上手いんだよ。」
 にやりと笑いながら、中嶋は思う。その特技さえ、さっきの自分は上手く使えなかった。
 ごめんなさいと謝りながら泣くケイタを前に、きっと途方にくれた顔をしていたに違いないのだ。
 笑って、大丈夫だ‥と言ってやることが出来なかったのだ。
「‥へ−へ−わかりました。お前にぴったりの仕事だよな、本当に。」
「で?」
 丹羽の軽口を聞き流しながら、中嶋は煙草に火をつけた。
「ん?なんだよ。」
「あいつから何を言われた?」
 本庄からの電話。あの時の丹羽の顔は、最悪を絵に描いたようだった。だから、中嶋には本庄が無理なことを言いだしたのだとすぐに分かった。
「ああ、特例だとさ。」
「特例?なんだそれは。」
「和希がケイタを部屋に呼ぶ‥んじゃなく、あいつがここにくる。」
「なんだと?」
「勿論抱くわけじゃない。ただ逢うだけ。条件は俺かヒデがかならず傍にいること。」
「‥なんなんだそれは。」
「その代わり、他の客を減らすと言ってきた。」
「減らす?」
「ああ、週に3人。そして昼間、あいつが望む日は、必ず逢うこと‥だそうだ。」
「どういうことだ?」
 訳が分からなかった。
 今までケイタの客が無理を言ってくる事はあっても、本庄は相手にもしていなかったのだ、ケイタがその度に客に文句を言われ困っていたのだから、それは確かだ、なのになぜ突然、和希にだけ「特例」などと言いだしたのだろう。
「俺が知るか。和希がそれだけいい客だって事なのかもな。」
「それだけで?何かあるんじゃないのか?」



                    ◆         ◇          ◆



2006/04/01(土) 約束〜もう一度あの場所で〜‥21

「そうだな、なにかあるんだろうな‥ケイタを苦しめるためならなんでもやる奴だからな‥。
あいつはケイタを憎んでる。ケイタが怯えて自分に従うのを楽しんでやがる。だから今日も‥。」
 丹羽が顔を顰め拳を握る。
 ケイタを苦しませる事が何よりの娯楽だと言って、ケイタの怯える姿を笑う本庄に、為す術が無く。ケイタは本庄の言葉の通りに客をとり続けた。
「‥くそっ。」
「ヒデ?」
「今日の事でケイタがどれだけ本庄に怯えているか、思い知らされた。
俺達は、ケイタが元気になってきていると思い込んでいただけなんだ。何も変わっちゃいない。ケイタはあの頃のままだ。」
「ヒデ。」
「あの頃の怯えた子供のままなんだよ‥。」
 煙草をもみ消し、中嶋は眠るケイタを見つめながら、ケイタと始めてあった夜の事を思い出していた。

××××××

 その夜中嶋は、最近手伝うようになった御苑近くの病院の診察室で、イライラとコーヒーを飲んでいた。
「すごい雨だな。」
 稲光とともに激しく降りだした雨は容赦なく窓ガラスを叩き、雷が鳴り響いていた。
「ったく、あの爺さんいつになったら帰ってくるつもりなんだ?」
 大学時代世話になった教授が、息子と経営している小さな病院だった。
 一ヵ月程前、息子が留学している間の手伝い‥として頼まれ、「近くに住んでいるし、病院の勤務と平行してでもいいなら‥」と軽い気持ちで引き受けたのだ。
 大病院の流れ作業の様な診察とは異なり、町の小さな病院は、大きな手術こそないものの、それなりに刺激があって面白かった。
 なにより煩い人間関係が無い。色気に狂う看護婦達が居ないのも楽でいい。学生の頃ならともかく、今更近場の相手で遊ぶ、などという事は面倒すぎてしたくなかった。だが‥。
「俺は休みだっていうのに‥あの爺さん、惚けた振りしてこき使う気だな?」
 教授と上辺だけの付き合いしかしていなかった学生の頃には気が付かなかった事なのだが、この先生、なかなかの狸だった。
 中嶋相手にのらりくらりと話を誤魔化し、気が付くとどこかに消えている。
 看護婦達は、いつもの事と笑いながら中嶋に患者を押しつけてくるから、いつも予定より長く仕事をするはめになる‥というなんだか、昔どこぞの学生会室でやっていたような事をしているのだった。
「心配な患者がいるからとかなんとか言ってた癖に、あの狸。」
 イライラとコーヒーを飲み干し、窓の外を見る。雨はまだやみそうに無かった。激しく降り続け、時折窓の外が明るく光り雷鳴が轟いた。
「ん?なんだ?」
 突然、何かが破裂した様な音が響いて、中嶋が慌ててドアを開けたとたん、争うような声と悲鳴が聞こえて、中嶋は思わず叫んでいた。
「おまえらそこで何をしている!警察を呼ぶぞ!」
「まずい!人がいる。」
 一人が叫んで中嶋の方を振り返った。
「早く乗れ!」
 近くに停車していた白いセダンから声がした。
「で、でも!」
「あいつはいい。早く!こいつだけで十分だ。」
「ちっ!!」
 一人を無理矢理後部座席に押し込んで、助手席にもう一人が乗り込むと走りだす。
「なんなんだ?」
 走り去る車を茫然と見送った後、人の気配を感じて中嶋は植え込みの陰を覗いた。
 蹲る白い影に、中嶋はハッとして駆け寄った。白いシャツが血で真っ赤に染まっていた。
「どうした?その怪我?今の奴らにやられたのか?」
 どう見ても小学生位にしか見えない。ガリガリに痩せた体にシャツ一枚だけを羽織って震えている少年は、一瞬中嶋の顔を見上げた後、怯えたように後退った。
「大丈夫。俺は医者だ。あいつらはもう居ない。」
 声を掛けしゃがみこむ。雨が中嶋と少年を濡らした。近くで雷の落ちる音がして、振動が伝わってきた。
「助けて、殺さないで。お兄ちゃんを助けて!!」
「お兄ちゃん?」
 くびを傾げ、車の走り去った方を振り返り思い出す。
「そうか‥。あれは拳銃の音か‥。」
 雨と雷の音とで、そうはっきりと聞こえた訳じゃないから、なんの音なのか分からなかったのだ。
「連れ去られたのか‥。」
 後部座席に押し込まれた人間が居たのを思い出し、中嶋は舌打ちし、少年に手を伸ばした。
 ただの喧嘩では無いと思っていたが‥状況は中嶋の常識の範囲を軽く超えていた。
「とにかく、君の手当てをしよう。」
「‥殺さないで。嫌。嫌だ!!」
 くびを小さく振りながら、少年は尚も後退る。
「大丈夫だから。」
 手を伸ばし触れると、少年は声にならない悲鳴をあげた。恐怖で、目の前にいる人間が敵かどうかの判断さえついていない様子に中嶋は戸惑いながら、そろりと近づいた。
「ひっ!!っ!!」
 ビクッと震え、少年が後退る。大きな瞳を、見開いて中嶋を凝視している。
「俺はお前の味方だ。逃げるな。」
「嫌っ!殺さないで!嫌−−−っ!!」
 叫び声をあげながら、少年は立ち上がり中嶋から逃げようとした。
「おい!」
 中嶋の脇を擦り抜け逃げようとする背中に、腕を伸ばした。
「いやぁっ−−−!!助けて!!」
 叫び声とともに、空が光り、雷鳴が轟いた。
「ひっ!!い、いや‥。」
「恐がるな。助けてやる。俺を信じろ。」
 細い体を抱き締めた瞬間。少年の体から力が抜けた。
「おに‥ちゃ‥ん。」
 ガクリと中嶋の腕に倒れこみ、少年は意識を手放した。

××××××

「やっと気が付いたか?」
「あの‥?」
 戸惑う瞳に中嶋は営業用の笑顔を張りつけたまま近づいた。
「昨日気を失ったままだったから。心配していたんだが、大したことなくて良かったな。」
「昨日?」
 中嶋の言葉に少年はきょとんと首を傾げた。
「昨日って?あの‥ここはどこですか?」

※※※※※※※※※※

ああ、明日は(と言っても、これを読んで頂く頃には終わってるんですが)なんでなのかしらないけれど、研修の終了式で挨拶しないといけないんです−!
ああ、どうしましょう。
とりあえず、暴言を吐かないように気を付けたいと思います(;^_^A

そんなこんなで、中嶋さんの回想はもう少し続きます。



                    ◆         ◇          ◆



2006/04/02(日) 約束〜もう一度あの場所で〜‥22

 戸惑いは怯えに変化し、少年は、少しでも中嶋から離れようとベッドの反対側へジリジリと後退った。
「恐がらなくていい、ここは俺の家だ。
 昨日、君をここに連れてきて怪我の手当てをしたんだよ。君は気を失っていたから覚えていないだろう?」
 訳がありそうな少年を、病院に置き去りにする訳にも行かず、仕方なく家に連れてきたのだった。
「手当て?」
「ああ、怪我は大したことなかったがな。一応。」
 本来なら、警察に通報して少年を引き渡せばそれで中嶋の仕事は終わる筈だった。調書を作るのに協力すれば、それで終わり。それ以上の面倒に巻き込まれる事もなく平穏な生活に戻る‥‥筈だったのに、中嶋は少年を部屋へと連れ帰り、手当てをし、ベッドに休ませたのだ。
 この行為が正しくない事は分かっていたが、「殺さないで」と怯える瞳を放っておけなかったのだ。
 そして、通報できない理由も一つあった。
「怪我‥。」
 中嶋の言葉に少年はぼんやりと自分の両手を眺めた。
「そうだよ。酷い怪我は無いけれどね。今、痛むところはないかな?」
 言いながら昨日の事を思い出して、中嶋は無意識に眉をしかめた。
 羽織っていただけのシャツに付いていた大量の血は少年のものではなかった。恐らく連れ去られた「お兄ちゃん」のものなのだろう。あの銃声が出血の原因なのか、それともその他の理由なのか、中嶋には知る術がなかった。勿論今、生きているのか死んでいるのかも分かりはしなかった。
 少年の体にあったのは、無数の傷と痣。手首の擦り傷。そして腕と足に残る注射針の跡だった。
「ところで、君の名前はなんというのかな?」
 少年の動揺を感じ、中嶋は口調を変えて尋ねた。
 注射針の跡、それが警察に通報できない理由だった。これさえなければ、面倒な事をわざわざしようとは中嶋も思わなかった。
 今頃はのんびりと、久しぶりの長期休暇を満喫するための準備でもしている筈だった。それなのに予定を大幅に変えて自分はなにをしているのだろう?
 そう考えながら、中嶋はゆっくりとした口調で、これ以上少年を怯えさせない様に尋ねた。
「君の名前は?お父さんとお母さんの名前は言えるかな?」
 中嶋は、子供の相手は得意なほうではなかったが、それでも仕事を始めてからは、その場に応じて笑顔を作り、声音を変えるようにはなっていた。
 患者の機嫌を取るつもりは毛頭無かったが、怪我や病気で不安をもっている人間に心理的な負担を与えるのが嫌だったのだ。
 それは、威圧的な態度で患者を診る上の人間への、軽い反発でもあった。
「あの、ええと‥。」
 少年の視線が泳ぐ。唇に手を当て、しばらく考え込んだ後、困ったように中嶋を見て言った。
「あの‥知らない‥わからない。」
 泣きそうに眉を寄せ、消えそうな声で答える。
「分からない?」
 少年の答えに、今度は中嶋が眉を寄せる事となった。
「‥分からない、あなたは知らないんですか?‥知らない?」
「君とは昨日の夜、始めて逢ったんだよ。」
 ため息をつきそうになるのを堪えて、中嶋は煙草に火をつけた。
「‥昨日?」
「そうだよ。これも分からない?君の持ち物だけど。」
 中嶋は少年の様子を伺いながら、革のベルトと、四つ葉のクローバ−のモチーフが一つだけ付いたブレスレットを見せた。
「これは昨日君が身につけていたものだ。」
「あ‥。」
「これは覚えているのか?」
 少年が、ブレスレットを手に取って見つめるのを、中嶋は興味深く観察した。
「分からないけど、これは俺のもの‥大切なものだと‥分からないけど、そう思って。」
「そうか‥じゃあ、これは?Keitaと入っている。これは君の名前じゃないのかな?」
 革のベルトは少年が首に付けていた物だった。犬の首輪の様に、首にベルトを巻き付けていた。そしてそのベルトに「Keita」の刻印があったのだ。
「分からない。分からないです。」
 途方にくれた顔で、少年は首を振った。「分からない」今、それ以上の答えを望むのは無理そうだ。そう判断して中嶋は質問を中断することにした。
 日本語は理解している、会話も成り立っている。なのに、自分の名前を覚えていない。昨日の事も。持ち物さえも覚えてはいない。
 身体的には特に体の痛みは無く、呼吸も安定している。−−−−
 問診の結果を、頭の中のカルテに記入し、中嶋は心の中でため息をついた。
 事態は思っていたよりも厄介だ。予想をはるかに越えて、厄介だ。
「とりあえず、君の名前はケイタなんだと思う。これを君がもっていたのだし。だからこれからそう呼ぶよ?いいかな?」
 ケイタがこくりと頷くのを確認して、中嶋は言葉を続けた。
「じゃあとりあえず、朝飯にしよう。簡単なものしかないが、いいな?」
「‥あの、はい。」 

 混乱する気持ちを押さえて笑うと、中嶋は立ち上がり、ケイタを残し、キッチンへと移動した。

××××××

「ヒデ−!いい酒が手には‥は?」
 機嫌良く酒瓶を抱えて部屋に現われた丹羽は、ソファーにぼんやり座るケイタを見つめ、固まった。
「ヒデ?」
「質問には答えんぞ。」
 静かに答え、煙草を吹かす中嶋と、ケイタを交互に見ながら、丹羽は「うむむ‥」と唸り声を上げながら、ぽりぽりと顎の辺りを掻いた。
「お前の子供か?」
「お前の冗談に付き合う心の余裕はない。ケイタこいつは丹羽哲也。声はデカイが悪人じゃない。」
「丹羽‥さん?」
 中嶋の声に、ケイタはきょとりと目を見開き、丹羽を見た。
「あ、ああ、丹羽だ。よろしくな‥ええと?」
「ケイタだ。」
「そうか、よろしく、ケイタ。俺の事は丹羽でも、王様でも好きなように呼んでくれていいぜ。」
「王様?」
「そ、王様。」
 丹羽が笑う。この日から、三人の共同生活が始まったのだった。

××××××

「ヒデ?どうしたぼんやりして。」
「ん?ああ、ケイタと逢った日の夜のことを思い出していた。ずいぶん昔みたいな気がするが、たった3年前の話なんだな‥。」



                    ◆         ◇          ◆



2006/04/03(月) 約束〜もう一度あの場所で〜‥23

 ため息をつき、中嶋は眠るケイタの前髪に触れた。
 ケイタと出会ったあの夜から、中嶋の生活は一変した。
「そういえば、あの頃のケイタって、お前の後をいつも付いて歩いてさ、なんか可愛かったよな。」
 ふっと笑いながら、丹羽もケイタを見つめる。

 目を覚ました時、ケイタは自分の事をすべてを忘れてしまっていて、中嶋はそのままケイタを引き取ることにした。
 丹羽を介して、竜也に家出人捜索のリストや事件、事故を含む捜索リスト等を調べてもらってもケイタらしい人物は見当たらず、当の本人が中嶋と丹羽以外の人間を極度に恐がる事から施設や病院に預けることすら出来なかったのだ。
「そうだったな。」
「ヒデの事、親だと思ってんだよ。ほら、生まれたばかりのひよこが卵から出て、最初に見たものを親だって認識するあれと同じだな。」
 記憶を失って、ケイタが始めに見たもの、それはケイタを助けてくれた中嶋だった。
 助けられた時の記憶は無くとも、中嶋は自分を保護してくれる人間だと、ケイタの体が覚えたのか、中嶋の後を付いて回るようになり、顔が見えないのを不安がるようになった。
「おい、ひよこの刷り込みと一緒にするな。」
「やってることは同じだろ?ケイタに飯を食わせて、腕に抱いて眠って、いろんな事教えて。」
「‥‥。」
 記憶を失っているせいからか、ケイタは外に出ることも、一人になることも極端に嫌がった。暗い部屋には入る事も出来ず、一人で眠る事も当然出来ず、中嶋が傍に居ても悪夢に魘され目を覚ます。
「よくやったよお前。」
 訳も分からず様々なものに怯えるケイタの傍に24時間付き添って、中嶋は暮らした。
 大学病院に休みの延長を申し出て、断られるとそのまま退職届けを出してしまった。ケイタを拾った経緯を知る、御苑の老医師には、事情を話し、休職と治療の手伝いを頼んだ。 
 親から貰い受けた、不動産や株等がかなりあったから、収入の面で困ることは無かったが、それでも大手病院の医師というポジションに全く未練が無いと言えば嘘だった。外科医として、何より経験と実績が欲しい時期でもあったし、最先端の医療技術を学ぶ為、渡米する話も出ていた。今現場を離れるということは、同期の人間から何歩も遅れるという事だった、腕はあってもチャンスに恵まれずにいる人間も多いというのに、安易にその立場を捨てようとする中嶋を笑う人間は多かった。
 だがそれよりもケイタを守ることに必死だった。自分のプライドや医師としての未来より、ケイタを守りたかった。
 本人の意志なのか、無理矢理なのか判断することは出来なかったが、針跡から予想した通り、ケイタの体は薬に犯されていて、それを体から抜くためには、四六時中傍にいる他なかったのだ。
 禁断症状と幻覚に苦しむケイタの傍にいて、症状を和らげる薬を飲ませ、手を握る。幻覚に怯え、悪夢に震えるケイタを励まし、抱き締める。食べ物や飲み物を、一口づつ辛抱強く与え、見守る。
 そんな暮らしを続け、禁断症状の山を越えた頃、ケイタはやっと中嶋にだけ笑うようになった。
「俺だって同じ時間そばに居たのに、ケイタは最初の頃ヒデ以外駄目だったもんな。」 
「そうだな。」
「それを考えれば、元気になったよ。こいつ。」
「そうだな‥でも。」
 それは表面だけだったのだと、中嶋は今日はっきりと分かったのだ。ケイタの中身は、あの頃と同じ、怯えて中嶋の後を付いて回る3年前のケイタと何も変わってはいないのだと、やっと分かったのだ。
「なあ、このままずっと本庄に怯えて、言いなりになるしかないのか?ずっと?俺達はなんでこんなに無力なんだ。どうしたらこいつを救ってやれるんだ!どうしたら。」
 怯えるケイタを救ってやれる日が、いつかくるのだと、あの日まで中嶋は信じていた。
 いつか記憶を取り戻し、恐怖からも解放され、両親の元に笑顔で帰っていく。そしていつかはケイタにも恋人が出来て、幸せな、平凡だけれど、人並みの幸せな暮らしをいつか手に入れるのだ。いつか、いつかきっと。−−−−そんな甘い希望を中嶋は柄にも無く抱いていたのだ。
 中嶋の膝に座り、甘えて笑うケイタの顔には、そんな未来が似合うのだと、夢みたいな事を考えていたのだ。なのに‥そんな未来は永久に来ないと、あの時、中嶋は思い知らされてしまったのだ。本庄の手によって‥。

 それは、ケイタが中嶋がいつも傍に居なくても、平気でいられる位まで回復してきたのを切っ掛けに、中嶋が御苑の病院に復帰したその直後に起こった。
 中嶋と丹羽のほんの一瞬の油断をついて、ケイタは本庄に拉致されてしまったのだ。
 あの夜以来、ケイタの『お兄ちゃん』を連れ去った連中を警戒して、ケイタを一人にする事は決して無かった、最初の頃は中嶋がずっと傍にいたし、中嶋以外でもなんとかなる迄に回復してからは、中嶋か丹羽のどちらかが、常に傍にいた。
 それなのに、ほんの一瞬目を離した隙に、奪われてしまったのだ。
 二人がケイタを捜し、本庄の元に辿り着いたとき、ケイタは本庄に散々脅され、痛め付け、凌辱され、生死の境を彷徨っていた。
 そして二人は本庄の口からケイタの素性を知ることとなった。

 ケイタは、中国系マフィアの幹部の子供として生まれたが、妻の浮気相手の子供だと分かってからは、散々虐待され続けた挙げ句、本庄の元に「いつ死んでも構わない。死ぬほうがマシだと思うような暮らしを味あわせてやれ。」という言葉と共に預けられた事。それ以来、ある男色家のペットとして飼われていた事。その男が死に、本庄の元に戻されることになった夜、ずっとケイタの世話をしていた男が、ケイタと逃亡を計り、失敗した事などを知った。
 ケイタが「お兄ちゃん」と呼んだ男は、ケイタの恋人だったのだ。そしてその男は、ケイタが中嶋に拾われた夜に殺されたのだ。本庄の手によって。


※※※※※※※※※※

ケイタくんの扱いが酷すぎですね。痛い系が苦手な方。申し訳ありません。
そして中嶋さんがヘタレすぎですね。申し訳ありません−_| ̄|○



                    ◆         ◇          ◆



2006/04/04(火) 約束〜もう一度あの場所で〜‥24

 だが、その事をケイタには話していなかった。
 痛め付けられ心身共に傷ついているケイタに『恋人は、ケイタを救うために死んだ』と話すことなど、中嶋には出来なかった。
 いつかは、話さなければならない。そう思いながら、ケイタの記憶が戻らないのを良いことに、今日まできてしまったのだ。
「どうしたらいいんだ、これ以上。」
 ごめんなさい。と泣きながら謝るケイタに、中嶋は『お前のせいじゃない』と言う事しか出来なかった。
「ヒデ。自分を責めるなよ。冷静になれよ、そんな大声だしたらケイタが起きるだろ?」
「っ‥‥。悪い。」
「いいけどさ。
ったく、お前変わったよな。昔のお前からは想像つかねえよ。そんな顔。」
 丹羽が笑いながら中嶋の顔を覗き込んだ。
「そうだな格好悪い。最悪だな。」 
「逆だって。昔のお前なら、ケイタを助けようなんて思わねえだろ?お前、どっか壊れた感じあったもんな。他人はどうでもいいっていうかさ。いいや、自分もどうでもいいって感じだった。」
「そうかもな。」
「だけど今はそうじゃねえ。ケイタの為に、病院辞めて、町医者なんて始めてさ、そんな事までしてケイタの傍にいてやろうなんて。凄いよ。」
「別にケイタの為じゃない。」
 ただ悔しかったのだ。ケイタを奪われた事が悔しくて堪らなかったのだ。

 それまでの生活をすべて変え、中嶋はケイタの為だけに時間を費やし、自分でも可笑しくなるくらいに、必死になってケイタの治療をし、世話をした。
 自分で食べることすら出来ない時は、一口づつパンやお握りを千切って、膝に抱いて食べさせた。
 そうして時を過ごして、やっとケイタは笑うようになった。大きな瞳が、中嶋を見るたびに輝く。自分が何者なのかも分からない不安さえ、中嶋が傍にいてくれたら消えて無くなるのだと言って、笑うようになった。
 そんなケイタの笑顔を、未来を、中嶋は自分の目の前で本庄に奪われたのだ。
 その事が悔しくて堪らなかった。自分の油断が招いた事態にいくら悔やんでも悔やみきれなかった。
『ケイタを殺したくねえなら、言う通りに客を取らせろ。逆らうなら容赦なくケイタを殺す。
お前達に勝ち目はねえんだ、諦めて従うんだな。
お前達がいくら用心したところで、所詮素人のやることだ、限度があるだろう?
 俺はいつだってケイタを殺せるんだぜ?お前らがあいつを守ろうと必死になったってよぉ。無駄なんだよ。
 俺はケイタを殺すことも、心を壊すことも簡単に出来るんだ。赤んぼ殺すみたいに簡単にな。
おっとそれから、俺をムショに‥なんて甘いこと考えても無駄だぜ?ケイタを管理する人間は俺だけじゃねえ。すぐに代わりがくるだけの話さ。
 もっとも、そんな事態になりゃ、代わりの人間が出てくる前に、ケイタが冷たくなってるだろうがよぉ。』
 本庄のその言葉に従うことしか、あの時の二人には出来なかった。不本意でもそうするしかなかった。
 本庄に死の恐怖を植え付けられたケイタが、逆らうことを拒絶したのだ。
 あの時、新宿から離れ、本庄の前から姿を消すことすら出来なかった。逃げ出そうとする度に、ケイタが怯えてしまうのだ。
 車に乗り込み、新宿の街を離れ、高速に乗る。東京を離れる頃には、ケイタの体の震えは止まらなくなる。怯えて、正気を保てなくなる。
 たった一晩で、ケイタは笑うことも食べることも出来なくなる。
 まるで、それさえ本庄の許可でもいるように、生きることをやめてしまうのだ。本庄の脅しは、恐怖はそれだけケイタの中に根強く残っていたのだ。
 何度も逃亡を企てては、二人は挫折と敗北感を味わいながら、新宿に戻った。
 ケイタを救うための逃亡が、逆にケイタの精神を壊すことになる。
 本庄に従うことなど、決してしたくは無いというのに、従うしかなかった。
「ケイタの為なんかじゃない。ケイタ一人を満足に守ることも出来ない自分が許せなかった。ただ、それだけだ。 」
 悪夢に怯えるケイタを見るたびに、本庄に組み敷かれ、いたぶられていたケイタを思い出すのだ。自分に力が足りなかったばかりに、ケイタをより苦しめる結果となった。大事なものを守れなかった、その事が忘れられず、中嶋の中で罪として残っていた。
「ふうん?」
「‥なんだよ。」
「いいや?別に。お前もそういう顔するんだな−と思ってさ。」
「何を笑ってるんだ?」
「いや、悪くないな‥と。ケイタを可愛がってるお前ってなんかいい感じだしな。」
「ふん。お前の軽口の相手をする気分じゃない。そんな場合じゃないだろう?」
 言いながら思う。こんな時に笑える奴だから、こいつは強いのだ。俺とは違う種類の強さ。
 逆風が吹けば吹くほど、こいつは強くなる。丹羽のその強さに、何度も救われた。−−−いつも丹羽が中嶋の傍に居た。だから投げ出さずにいられた。ケイタの未来に絶望を感じながら、それでも強気でいられたのは、丹羽が傍にいたからだと中嶋は思った。
 そんな事は死んでも口にしたくはないが、丹羽がいて良かった。そう思うことは多かった。
 生涯の好敵手。そんなクサイ言葉を吐くつもりは毛頭無いが、中嶋にとって丹羽はそういう相手だった。
 情けなく弱音を吐いて負ける訳にはいかない相手、共に競い合い、肩を並べて歩いていく。
 相棒であり恋人。それが中嶋と丹羽の関係だった。
 
※※※※※※※※※※

どうしたらいいんでしょう!中嶋さんがどんどん情けない感じになってきてます−!!
こんな弱っちい中嶋さんなんて、書いていいんでしょうか私‥?
『悩んだり、自己嫌悪なんてものに陥る中嶋さん』を書いてみたいと思っていたものの、限度がありますよね‥(;^_^A
いえ、もともと私の書く中嶋さんはヘタレなんで、今更といえばそうなんですが‥_| ̄|○
でもヘタレてばかりなのも困るので、これから先は少し軌道修正をしたいと思います。

★掲示板の方に拍手御礼と日記を書くことにしました。





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いずみんから一言

「4月の予定が恐ろしいことになって泣いています」
この類のことばを目にするたびに、腹を立てていいのか泣いていいのか分からなくなり、
泣きながら腹を立てる、ということを繰り返している。
みのりさまが亡くなられた後、いったい何度、労基へ訴え出てやろうと思ったか。
やめたのは、もうみのりさまは戻ってこないから。
ただこれだけの理由だったりする。

そして今日も腹を立てながら泣いている。


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