もういちど、この腕に 第 2 部 後 編 |
深夜の巡回に出た島田美影ナースは、最後に啓太の部屋を訪れた。ファミリールームのドアが全開になっているのは、もしも異変があったときに気づくよう、向こうで寝ている母親が開け放しているのだろう。この部屋を使う家族は大抵そうやって眠っているので彼女も心得たものである。そちらに手元の灯りが入らないよう気をつけながら、島田ナースは啓太の傍らに腰を下ろした。 啓太の母親と中嶋との出来事は、内密な引継ぎ事項として駿河ナースから聞いていた。聞かされたのは彼女とこのフロアを統括する看護師長、そして櫻井医師の3人だけである。 息子に男の恋人がいると知った母親の気持ちは分らないでもない、と思う。だが。 島田ナースはファミリールームに眼を向けずにはいられなかった。そこのベッドの中で母親は眠っているが、いつ巡回しても中嶋は必ずこの場所。今、自分が座っているこの場所にいた。ここで、この椅子に座って、啓太の手を握り締めて眠っていたのだ。その肩から滑り落ちていた毛布を、何度かけなおしたことだろう。 啓太と中嶋との関係など、このフロアの担当ナースなら誰でも気づいていることだった。そしてそれと同じだけ、中嶋の思いの深さも知っていた。男と愛し合う男は彼女たちの理解の範囲の外にある。しかし中嶋と啓太との間には不自然さなど微塵も感じられなかった。 島田ナースは仕事柄、今まで何組ものカップルを見てきた。ああなりたいと羨ましく思うカップルにも何度か出会った。それでも中嶋と啓太ほど共感でき、憧れといっていいほどの思いを抱かせるふたりをほかに知らない。早く啓太が目覚めて、またふたりの生活ができるように祈らずにいられなかった。 「ぅ……ん……」 啓太が不安そうな声を出して身じろいだ。中嶋の手がないのを感じ取っているのだろう。島田ナースは啓太の手をそっと握った。VIPフロアは他の倍のナースが配置されていて、その比率は夜であっても変らない。それでなくても患者数の少ないフロアであるのに、今は和希の意向で受け入れを減らしているのだ。少しくらいここに長居をしても許されるだろう。だからもうしばらく。せめて啓太が不安そうな声を出さなくなるまで。こうして座っていようと思った。 啓太の母や中嶋など、個々人の胸のうちはいろいろあったろうが、表面的には何も変らない数日が過ぎた。今日も啓太は眠り、中嶋は影のように離れることなく付き添っている。 晩秋の早い日が暮れ、夜の闇があたりを支配しはじめた頃。その日の勤務を終えた櫻井美和子医師は自分のオフィスで、きっちりと編みこんでから結い上げた髪をほぐしながら、啓太のカルテを読みなおしていた。 美和子は櫻井財閥の跡取り娘であると同時に、世界の医療空白地帯に入って活動する医療ボランティア団体の主要メンバーでもある。そのため、本来の専門である循環器内科だけでなく、どの診療科目にも深く精通していた。これが和希をして彼女を「総合力で日本一」と評価させ、啓太の主治医になったと知ったときに「助かった……」と思わず洩らさせた所以でもあった。 いつもなら日本に戻ってくると、ひと月ばかり夫に任せきれない仕事を処理して、また新たな赴任地に向けて出発するのが常である。その間の籍を置いてあるベルリバティ総合病院では特に担当患者を持たず、主に外来の診察にあたっていた。啓太の主治医になったのは、和希が直接、搬送してきた患者だったからだった。それから2か月。所属団体の事務局には出発の無期限延期を連絡し、今日に至っている。 「…………」 カルテの全部に眼を通し終えて、美和子はほうっと大きな息をついた。南米でもアフリカでも、ろくな設備や薬もない中で、ほんの少しの手助けだけで症状が軽快していく患者がいる。そして啓太のように、これ以上望むべくもない環境の中で、尚も目覚めることができずに眠りつづけている患者もいる。 この仕事をつづけていていつも思うのは、医者は病気を治すことなどできない、ということである。病気を治すのは患者本人。医者も薬も医療設備も、それを手助けしているだけに過ぎないのだ。であれば、どう手を貸せば啓太は目覚めるのだろう? 彼の巻き込まれた事件については、初診を担当した医師から概略を、そして和希たち見舞い客から詳細を聞いた。啓太を拉致した久我沼啓二とは、何度か商工会議所の集まりで顔を合わせたことがある。が、まるで印象に残っていない。要するにその程度の男であったということだ。啓太はそんな中途半端な男の中途半端な野心の犠牲になってしまったのだろう。 眼鏡をはずした美和子はゆったりと椅子の背に身体を預けると、眼を閉じて彼女の知り得たかぎりの情報を思い起こし、拉致されてから救出されるまでの啓太の心の動きをトレースしはじめた。 表面的には変わらないように見えても、変わったところはやはりある。中嶋はもともと交代時間中にうろうろと出歩くタイプではなかったが、啓太の母親との一件以降、ほとんど病室から出なくなってしまっていた。たまにはスーパーで買い物をし、キッチンで簡単な食事を作ることもあったのがまったくなくなり、3食とも職員用食堂から届けてもらった食事で済ませるようになっていたし、わずかな息抜きであったはずの書店へ出かけることもなくなってしまった。今では土日以外の交代時間中は、ファミリー・ルームにこもって勉強をするか仮眠を取るかしかしていない。それが良くない傾向であるのは分かっているものの、ほんの1秒たりとも啓太の傍から離れたくないという意思が明確に伝わってくるので、誰もやめろとは言えなかったのである。 そんな毎日が何日かつづいたある日のこと。人の声が聞こえた気がして、ファミリールームのソファで横になっていた中嶋はがばっとばかりに飛び起きた。丹羽から届いた講義ノートを読んでいるうちに、いつの間にか眠っていたものらしい。 啓太に聞かせるために、病室にいる人間は声を出していることが多い。本や新聞を読んでやったり啓太自身に話しかけたり、部屋に入ってきた誰かと会話をしたりするのだ。しかもちゃんと啓太に聞こえるよう大きめの声ではっきりと。だから声がしていること自体には何の不思議もなかったのだが、そこに美和子の声が混じっているのに気がついて、啓太に何かあったのではと思ったのだ。飛び起きた拍子に胸の上にのっていたらしい講義ノートが転がり落ちたが、一瞥もくれずに踏み越えて病室との境のドアを一気に引き開ける。と、そこでは中嶋と交替した和希が美和子と愉しげに話しこんでいた。啓太も一緒に聞いているつもりなのか、少し甘えたような顔をして眠っている。 「やあ、起きたのかい? 時間の余裕はあるから、もう少しくらいは眠っていても構わないよ」 「……いや。いい」 ドアを開けたときの余裕のない緊張しきった表情から露骨に力が抜けていくのを見遣りながら、和希はソファの背に投げていた上着をとりあげた。中嶋が何をどう勘違いして緊張したのかおぼろげながら分った気がしたのだ。気づかないふりをしてこの場を辞するのも、大人の思いやりというものだろう。 「そうかい? じゃあ美和さん。俺はこれで」 「ええ。今日はご馳走さま。お父さまにもよろしくおっしゃってね」 もちろん、と返しながら啓太の上にかがみこんだ和希は、髪をくしゃくしゃと撫でた。 「けーたぁ。お兄ちゃん、また明日も来ちゃうからなあ」 それ以上やると中嶋の逆鱗センサに触れる直前で手を離した和希は、わざとらしく中嶋ににっこりと笑いかけると病室をあとにした。ドアが閉められた瞬間に、それを目だけで見送った中嶋の口から憮然としたため息が漏れ、美和子のくすくす笑いが重なった。 「さて。今日はね、いろいろと計画があるのよ」 中嶋の方に向き直った美和子が言った。 「計画、ですか?」 問い返した中嶋には片手をあげて「あとで」と言いつつ、美和子は白衣の胸ポケットに入れていた院内用携帯電話で島田ナースを呼んだ。すでに打ち合わせがされていたらしく、短い会話をかわしただけで島田ナースは病室に現れた。 「今日はとてもお天気がいいの。啓太くんを連れて外へ行きましょう」 「……はい……?」 「和希さんがね、おじさまからの差し入れのケーキを届けてくださったのよ。お茶にしましょう。島田さんたちもお相伴させてあげてね」 頷きはしたもののもうひとつ事態が飲み込めていない中嶋を他所に、島田ナースはてきぱきと啓太の身体に取り付けられている点滴やカニューレの類をはずしていく。素早く的確な指の動きは、まるで無造作に引き抜いているようにも見え、かすかな笑みを浮かべたシャープな顔立ちと相俟ってどこかS系の女王様を思わせた。 「全部、はずしてしまうんですか?」 「啓太くんはもともとどこも悪くないのよ。おなかがすいたり喉が渇いたりしたら、自分から欲しいと言うでしょう」 そう言って美和子は小さく肩をすくめた。 今年はいつまでも残暑が尾を引いた所為か、11月になったというのにそれほどの寒さを感じない日が多い。その中でも今日は10月中旬くらいの暖かさがあった。毛布で包んだ啓太を抱いた中嶋は、導かれるままに中庭の一角へ足を運んだ。山の中で抱き上げたときも軽くなったと感じていたが、使っていない筋肉が痩せてしまっている所為か、そのときよりもさらに啓太は軽くなってしまっている。それが啓太の眠っている時間の長さを、改めて中嶋に思い知らせていた。 あちこちにテーブルとベンチが配置された中庭は、それを取り囲むように植え込みがなされていた。花粉が出るのを嫌うのか、花をつける草や木は1本もない。だが無機質な病室に閉じ込められている者にとって、そこが十分すぎるくらい癒される空間であることは間違いないようだ。あちこちのテーブルで談笑している患者たちは、誰もがとても穏やかな表情をしていた。 その一番奥。少し大きめのテーブルにクロスをかけ、駿河ナースがお茶の用意をして待っていた。中嶋たちが近づいてくるのを見てからポットにお湯を注ぐ。ふわりと立ち上った香りで、それがアップルティーであると中嶋は知った。 「このテーブルだけがね、どの椅子に座っても病院が見えないの。私にはそれがいいんだけど、患者さんたちは逆に不安を感じてしまうみたいね。ここに来て先客がいたことはないから」 席を選んだわけではなく、無造作に手近なベンチに座っただけの中嶋だったが、そう言われてあたりを見回してみると、なるほど、どこにも建物は見えない。植え込みといってもさほど背の高いものではないので、おそらくはベンチや植え込みの配置の角度が、微妙な死角を作り出しているのだろう。 島田ナースが箱からケーキを出して切り分け、綺麗に紙ナプキンを敷いた皿の上にのせた。駿河も島田もとても慣れているようで、美和子と何度もこうしてお茶をした様子が見て取れた。 「さあ。ケーキをどうぞ。銀座のLってお店の……。ああ、今日は洋ナシのムースみたいね」 「いえ、俺は結構です」 「そう? 啓太くんを抱いていたら頂きにくい?」 「いえ。そういうわけではなく」 小さく首を傾げる美和子に、中嶋は思わず苦笑を洩らした。単に甘いものが苦手なだけなのだが、美和子にはよく分らないようだ。彼女の周囲にはケーキの嫌いな人間がいないか、あるいは嫌いであっても断わったりなどしない、礼儀正しい人間ばかりなのかのどちらかなのだろう。そしてどちらでもない中嶋は美和子にケーキを返し、入れ替わりに駿河ナースがアップルティーを差し出した。ピュア・アッサムやトップ・ウバならともかく、本当はアップルティーも好きではない中嶋だったが、こうして出てきておいてケーキもお茶も断わるわけにはいかない。左手は膝の上の啓太を抱いたまま、中嶋は右手でカップを引き寄せた。 「甘いものが苦手なので……。お茶だけ頂きます」 「中嶋さんはコーヒー派なんでしょう? いつも病室にいい香りをさせてるものね。でも今日は申し訳ないけれど、これに付き合って頂くわ」 そう言ってアップルティーを口にする美和子の姿に、会計室で紅茶を楽しむ西園寺の姿が重なった。顔かたちや雰囲気はまるで違うのに、佇まいのようなものが似ているのである。似たような環境で育てば紅茶を飲む姿まで似てくるものなのだろうか。甘ったるい香りをもてあましながら、中嶋はふとそんなことを考えた。 西園寺たちには啓太捜索にずいぶん世話になってしまった。啓太の今の状態を知ったら、彼らはなんと言うだろうか ―― ? 「赴任地ではね、お茶が唯一の楽しみなのよ。そして帰国したときの楽しみは、こうして鈴菱のおじさまから届いた差し入れのケーキを頂くこと」 「……櫻井先生には再赴任を遅らせて頂いていると伺いました」 「ああ……。そんなのはどうでもいいの。いくらでも優秀なドクターはいるし、本当に行かなければならないのならとっくに出かけてるわ。だって啓太くんは高度な治療を必要としている訳じゃないしね。すぐに結果が出なくても焦れたりしないドクターなら、誰が診ても同じだと思うもの。だけど私には啓太くんのケースが他人事は思えない事情があって……。それでここに残っているの。言ってみれば自己満足みたいなものだから、その件は気にしないで頂戴」 「事情、ですか。それはもしかしたら……」 「たぶん違うと思う」 啓太が鈴菱の関係者だからかと言いかけた中嶋のことばをぴしゃりと遮っておいて、美和子は悪戯っぽい笑顔を中嶋に向けた。 「じつは私にはね、啓太くんとほとんど歳の変わらない男の子がいるのよ。それもふたり」 「……は?」 それはあまりにも意外だったのだろう。中嶋はらしくもなくことばを失った。それはいろんな意味で中嶋の予想を裏切っていたのだ。その中でもいちばん驚いたのが美和子の年齢だった。目の前にいる櫻井美和子という女医は、とてもそんな歳の子供がいるようには見えなかったのだ。どれほど多めにみたところで、30代半ばくらいにしか思えなかった。 思わずまじまじと顔を見てしまった中嶋だったが、美和子にとってその程度のリアクションは想定済みだったのだろう。気がついて慌てて失礼を詫びる中嶋に、小さく微笑み返しただけだった。元気印系の駿河ナースだけでなく島田ナースまでもが笑いを噛み殺したような表情をしているのは、中嶋のリアクションがお決まりのものだったからなのに違いない。 「中嶋さんは? 今、おいくつなのかしら」 「19です。もうすぐ二十歳になりますが」 「私が祖父から自分の夫となる人と引き会わされたのは16の誕生日だったの。うちのような家では結婚なんてそんなものだから、『ああ、そう』くらいにしか思わなかった。だからそのままだったら、きっとどこかの女子大にでも進学して、卒業と同時に結婚したのだと思う。でもね、私には小学生の頃からの夢があったの。医者になって世界の無医村に行きたかった。自分のように、生活のために働かなくていい人間こそが、そんな仕事に向いていると思っていたから。それで……。現実と夢を両立させるために考えたのが、すぐに結婚してしまうことだった」 何故、美和子が突然のように身の上話をはじめたのか、もうひとつ中嶋には理解ができなかった。そんな子供の頃からの夢であった赴任地へ出かけるのを遅らせてくれている、というのは分った。だがそれが「遅らせている事情」とどうつながるのかがよく分らなかったのだ。分らないまま中嶋は腕の中の啓太を抱きなおし、再び耳を傾けた。 「どうせしないといけない結婚だったら、今すぐにでもしてさっさと跡取りの子供を産んで、それからゆっくりと医学部に行けばいい。そう思ったのね。だって自分で子供を育てる訳じゃないし。家庭教師に来てもらえば時間も内容も無駄にならなくていいしね。それでね、ある日、学校の帰りに会社の近くまで行って主人を呼び出したの。協力をお願いしたくって。あの人ったら、転げるみたいにして飛び出してきたわ」 そのときのことを思い出したのか、美和子が空を見上げてくすっと笑った。会長の孫娘に呼び出されて慌てる男の姿と、そして目的のためなら突っ走ってしまう若い日の自分自身とは、たしかに当人にとってはノスタルジックな笑いがこみあげてくる場面であったろう。 「主人という人間は、27の若さで会長の孫娘の婿養子に見込まれるだけの実力と、それを受ける野心を持った人だった。そしてその野心を満たすために何をしなければいけないか。何をしてはいけないか。そのあたりをきちんと理解していた。おかげで私は今、こんなことができている」 「では……。それからすぐに結婚を?」 「今、高1の息子が生まれたのは、18の誕生日の3週間前よ。つづけて次男ができてしまったのはちょっと計算外だったけどね」 18になる直前にできた子供が高1ということは、美和子の年齢は33か4ということになる。美和子は若く見えたのではなく、実際にまだ若いのだった。 ことばを切った美和子は空になっていたカップにおかわりを注いだ。だが口はつけず、香りだけを楽しんでテーブルに戻すと、まっすぐに中嶋を見つめた。 「有難いことに私の夫はきちんとした計算のできる人だった。久我沼さんとの違いは、おそらくこの1点だけだと思う。きちんとした計算ができないから重要なポストを回してもらえないのに、それが自分の計算ミスからきているなんて思いもしてないんでしょうね、あの人は」 「だからといって……」 「そう。同情の余地はまったくないわ。でも思ってしまうのよ。あの人は養子じゃないけど、でも主人と同じ立場にいる。一歩間違えたら、犯人は主人だった可能性だってある……。啓太くんと年の違わない息子に、犯人と同じような立場の夫。私にとって、これはもう他人事なんかじゃないのよ」 一度言葉を切った美和子は、ほんのわずかな沈黙のあと「さて」と言ってまとっていた空気を一変させた。和希ほどの落差はないが、彼女と話していると時々あることだった。和希といい彼女といい、オンとオフの使い分けはいっそ見事なほどである。セレブと呼ばれる地位にいながらそれに甘えることなく、世界の第一線で人並み以上の仕事をこなす人種というのは、多重人格者でなければ務まらないのだろうかと、結構本気で中嶋は思った。 「昔話はこのくらいにしましょう。こんな話をするために、わざわざ啓太くんを連れてきた訳じゃないから」 「はい」 「今回の件、いろんな人から話を聞きました。和希さんや貴方たちローテーション組だけじゃなく、お見舞いに来てくれた刑事さんや鈴菱の社員さんなんかにもね。それでまず思ったのが、啓太くんを無事に発見できたのは、もう本当に奇跡だった、っていうこと。山の中で3日も放置されて助かる人はまずいません。啓太くんは必要以上に運がいいということだったけれど、それでもそれはあくまで結果でしかない。実際に山の中で置き捨てられた啓太くんにとって、救出されるまでの時間は絶望との闘いだったはず。夜は当然真っ暗だし、木に遮られて星明かりさえ見えなかったかもしれない。都会育ちの人間にとってそれがどれだけ怖かったことか。ペットボトルのお茶を持っていたと言うけれど、それだっていいことばかりじゃない。残りが減っていくのが目に見えるのは、たまらない恐ろしさがあったはずでしょう? それにね、熊までは考えなかったかもしれないけれど、蛇は出るかもしれないって思っていたと思う。実際、啓太くんのあの化膿はすべて、蟻や毒虫に噛まれた傷だったしね。しかも原因が分からず、気がついたら山の中にいた訳でしょう。ヤワな子だったら絶対に見つからなかったと思う。そんな極限といっていい状態の中で啓太くんは、おそらくもう一度貴方に会いたい、ただそれだけで足を動かしていたのに違いない。そしてその思いがあったから、冷静な判断が下せていたのだとも思う」 中嶋は黙って頷いた。頷くことしかできなかった、と言ってもいい。 中嶋にしても、啓太のたどった道を考えないでもなかった。啓太が実際に通った経路も見ているので、あそこまで下りてくるのがどれだけ大変だったか、想像するまでもなくわかる。そもそも「道」というものがないのだから、ヘタをすると奥へ奥へと進んでしまう可能性だってあったのだ。それを啓太は啓太なりに必死になって状況を見、より正しいと思われる方向を見定めていったのだろう。だが中嶋の想像はそこまででしかなかった。乗り越えてきた道のりの困難さや、救出されるまで耐え抜いた頑張りは察してやれても、星明かりさえ見えない闇の中で啓太がどんなに心細い思いをしたことか。ペットボトルの烏龍茶の最後の一口を飲み干したときに何を思ったか。そして空になったボトルをどんな気持ちで投げ捨てたか。そんなところにまでは思いが及んでいなかったのである。 「……正直、そこまでは考えていませんでした」 中嶋は啓太の顔をのぞきこみ、額に垂れている髪をそっと払った。 「ただ……。啓太を見つけたとき、汗や汚れがひどかったので、水をかけてやったんです。俺がこいつをこう抱いていて……。篠宮がジーンズを脱がせたら、腹のあたりから俺が貸してやったペーパーバックが落ちました。そのときは気にも止めませんでしたが」 「ああ。それはきっと貴方の代わりだったのね。それを抱いて夜を乗り切ったんだわ。ぎりぎりの状態にいたはずの啓太くんが、どうやって精神のバランスを取ったんだろうと思っていたのだけど。そう……。そんなお守りを持っていたのね」 それは強いはずだわ……。そう付け加えて、美和子は納得したように頷いた。 「せっかく『お守り』があるんだから、それを使いましょう」 何に使うのかといった説明をしないまま、美和子は中嶋の分のケーキを口に運んでいた駿河ナースに声をかけた。 「駿河さん。途中なのにごめんなさい。私のオフィスに行って本をとってきてくれるかしら? 今、中嶋さんの言っていたペーパーパックなんだけれど」 「は、はい。すぐに」 「その本はどのくらいの厚みがあったか覚えてます?」 「はい。ペーパーバックによくある2センチくらいのものでした」 「なるほど。駿河さん。私のデスクの足元に移動式のキャビネットがあるの。それのいちばん下を開けるとペーパーバックが何冊か入ってるから、そのくらいの厚さのものを探して」 「はいっ」 「急いでね」 「はいっ。行ってきまーすっ」 駿河ナースはたちあがると、いかにもナースらしく足音をあまりさせずに走っていった。美和子が中嶋と会話を交わしたわずかな時間の間に、テーブルの上のケーキ皿はしっかり空になっていた。 「駿河さんが帰ってくるまで、貴方にはしなければならないことがあります」 まるで女子高生のように軽く手を振って駿河ナースを見送っていた美和子は、その仕草に似合わない、真剣な眼差しで中嶋に向き合った。中嶋は思わず啓太を抱く腕に力を入れた。 「はい」 「この空気を感じて。陽の光を。暖かさを。そして、あの日に帰りましょう」 美和子のことばが聞こえたかのように、風が吹いて彼らを囲っている樹木を揺らした。さほど強い風ではなかったが、かすかに枝や葉の触れ合う音が耳に届く。現代の都会に暮らす中嶋にとって、それは確かに意識しなければ感じ取れないものであった。 美和子は啓太をあの日に戻そうとしている。あの日に戻すことで、目覚めるきっかけを与えようとしている。美和子の意図を正確に汲み取った中嶋は、そっと目を閉じると、全身で風や陽の明るさを感じ取ろうとした。自分がここに留まったままで啓太をあの山の中に連れ戻すことはできない。啓太を眠らせたのが自分の腕ならば、目覚めさせられるのもまた自分の腕なのだろう。武道家である中嶋は呼吸を整えることで、いくらもしないうちに空気の中に溶け込んでいった。 「すぐに」と言ったことばのとおり、駿河ナースは10分もしないうちに戻ってきた。迷ったのか、手には2冊のペーパーバックを持っていた。 「どっちが似ているかしらね」 両方を差し出された中嶋は、厚みは多少違うものの、自分の本と同じペンギン社のものを選んだ。手触りを重視して、紙質が同じ方がいいと思ったからである。偽札に気づく理由の第一が手触りであるように、人間の手というのは意外なくらい手触りを覚えているものなのだ。中嶋はそれを小脇に挟むと、啓太を抱いたまま立ち上がった。 「少し歩いてきます」 「どうぞ。時間は気にしないで」 「はい」 駿河ナースの明るい「いってらっしゃ〜い」という声に送られて美和子たちと別れた中嶋は、日の当たる場所を選んで歩きはじめた。暖かいとはいえ晩秋の今である。真夏と変わらない暑さだったあの日と同じにできるはずもないが、それでも少しでも近づけるようにと思わずにいられなかったからだった。それに日差しを感じる方が、啓太も自分が今、中嶋に抱かれて外を歩いているのだと、思いやすいだろう。 だが歩きはじめてすぐ、中嶋はその考えを改めた。如何にしたところでこの気温の差は取り繕えるものではないと悟ったからである。ならばとばかりに中嶋は、今度は見事に整備された植え込みの中に足を踏み入れた。日差しが駄目ならせめて、葉の感触や枝が風に揺れる音を感じさせてやろうと思ったのだ。これなら先刻、自分が感じたように啓太も「外」を感じ取りやすいに違いない。マナー違反なのは承知していたが、啓太を目覚めさせるためであればそんなこと、知ったことではない。 「啓太。さあ、山を降りるぞ。しっかりつかまっていろ」 片膝をついた中嶋は、毛布で包み直してやりながら啓太に語りかけた。腹の上にペーパーバックを置き、右手をその上に乗せてやる。大事な「お守り」だと分かったのか、啓太の手が撫でるように小さく動いた。 「降りたら起こしてやるからな。それまでは寝てていい」 そのかわり、降りたら起きるんだ。言外に含めた中嶋の思いに、啓太はちゃんと気がついただろうか ―― 。 毛布の合わせ目から啓太の左手を出た中嶋は、あの日、啓太がやっていたように自分のカーディガンの端を握らせてから、少々荒っぽく立ち上がった。ときどき、わざと乱暴に揺すりあげては抱きなおしながら、何度も植え込みの中を往復する。一歩歩くごとにあの日の光景が鮮明によみがえってきた。 あの日。ようやく見つけてやれた啓太を腕に抱けて、中嶋は心の底から安堵し、そしてそれまで感じたことがないくらい幸福も感じていた。啓太がいるから人生がある。留学だの弁護士だのいかに将来設計をしようと、啓太がいなければ意味のないことに今更のように気づいたのだ。あたりまえのように啓太がそこにいる幸せを、中嶋は噛みしめながら歩いたのである。たとえほんの少しでも啓太がそれを感じ取っていたのだとしたら、今日の思いも伝わらないはずがない。 ―― ……なあ、啓太。もうすぐ俺の誕生日なんだよ。おまえ、いつもプレゼントに何が欲しいか聞いていただろう? だからリクエストさせてくれ。俺はおまえの瞳が欲しい。おまえの瞳に映った俺の顔が見たい。他には何もいらない。これからずっと、プレゼントはそれでいい ―― 悪魔に魂を売っておまえの笑顔を取り戻せるなら、今、この瞬間にでも売り渡してみせるのに。 眠ったままの啓太を連れて戻っても、美和子は変わらぬ微笑で中嶋たちを迎えた。一度くらい試したところでどうなるものでもないと分っていたからである。何度か繰り返すうちにいい結果が得られたら、それで十分。焦って得られるものなど、何ひとつないのだ。 美和子には軽く会釈を返しておいて、中嶋は啓太に「ほら、下に着いたぞ。起きろ」と促した。さらに、それまでのように膝に抱かず、ベンチに座らせようとする。と、姿勢が変わった所為か毛布の下からペーパーバックが転がり落ち、美和子は「あ……!」と小さく声をあげた。 「貸してやった本を落とすなんていけない子だ。お仕置きだな」 本を拾いながら、中嶋は啓太を軽く睨みつけた。 それは中嶋の決まり文句のようなものであり、ふたりの間の睦言でもあったのだが、そうとは知らない美和子は思わず眉をひそめてしまった。 落とした本ががたとえ美和子の貸したものだったとしても、啓太は眠っているのである。本を落としたかもしれないが、それは啓太が悪いわけではないのだ。もっていられるはずがないことくらい、中嶋の方が良く分かっているはずなのに。それなのに「お仕置きだ」と言って啓太を睨んでみせた中嶋を思わずたしなめかけて、美和子は、その目がひどく優しいことに気がついた。 いつ気を抜いているのかと思うくらい、中嶋の眼はいつも鋭い光を湛えている。 それがどうだろう。睨んでいるはずの中嶋の眼は、まるで飴細工でできているかのように甘く、そして温かかった。美和子は夫からも両親からもあんな眼で見つめられたことはない。自分が愛されていないと思ったことなど一度もないが、だからこそ啓太がどれだけ愛されているか、改めて思い知らされた気がした。自分の中では「良識派」とカテゴライズされている和希や、融通の利かない堅物にしか見えない篠宮があっさりとこのふたりの関係を容認しているのは、こんな、啓太を見つめる中嶋の眼差しを知っているからに違いない。美和子ももう、何も言えなくなっていた。 本をもう一度持ち直させてから啓太の隣に腰を下ろした中嶋は、安定するよう肩を抱いて自分に寄りかからせた。 「なかなか思うようには行かないものですね」 「そうね。でも、お仕置きはいけないわ」 笑いを含んだ声に気がついたのだろう。中嶋が片眉だけを跳ね上げた。 「さっき。貴方たちが帰ってきたときね」 「はい」 「啓太くんは貴方のカーディガンの端を掴んでいたわ。本を落としてもカーディガンは離さなかったのよ。すごいでしょう?」 今までも啓太は、握ってやった手は握り返してきたし、和希が見舞いにもってきたクマのぬいぐるみなどを持たせてみるとちゃんと持つことはできた。ただ「持ちつづける」ことはできなかった。少し動いただけで啓太の手も離れてしまうのだ。お気に入りのおもちゃを抱いて寝たこどもが、寝息をたてはじめていくらもしないうちに放り出すのと同じである。だが中嶋に抱かれてここに戻ってきたとき、弱々しいながらも啓太の手は、持たせてもらったカーディガンを離してはいなかった。啓太の中に「離したくない」という意思が芽生え、ひとつ前進させたのだと思われた。 「だから。啓太くんにはお仕置きじゃなくて、ご褒美をあげないとね」 「ご褒美……ですか」 中嶋がほんの少し困った顔をした。 中嶋の中では「お仕置き」も「ご褒美」もたいして違いはなかった。啓太を焦らせ、懇願させてから与えるか、最初から与えるかの違いである。だがここでそんなご褒美をしてやれるはずもないし、それでなくても何かを買ったりというのでもないだろう。意図を量りかねた中嶋は美和子の次の言葉を待とうとした。 「差し出がましいようですが」 だがそう言って口を開いたのは、それまで沈黙を守っていた島田ナースであった。 「ご褒美でしたら、キスがよろしいんじゃないでしょうか」 「しっ……! 島田せんぱぁい!?」 駿河ナースが、思わず素っ頓狂な声を上げた。それはそうだろう。普段から「おっちょこちょいキャラ」で通っている彼女とは違い、勤務時間中の島田ナースは無駄口や冗談とは無縁の存在だった。今まで黙っていたのも、患者と医師が向き合っているところにナースが口を挟む余地はないと考えているからだ。そんな「プロ意識1万パーセント」とまで囁かれている島田ナースが、男子高校生へのご褒美は男からのキスがいいと、医師やら本人やらの前で堂々とのたまったのだから驚くのも無理はない。だが島田自身は表情らしい表情も変えず、いたって真面目な顔つきで美和子や中嶋たちを見返していた。 「…………島田さん?」 「啓太くんが助け出された日に帰っているなら尚更だと思います。山の中で3日も頑張ったご褒美は、やはりキスでないと」 突然の島田ナースの提案に、美和子はほんの少しだけ考えると小さく頷いた。 「それもいいわね」 「美和子先生まで〜っ」 「私はご褒美に外泊をさせてみようかと思っていたの。寮か中嶋さんのマンションかどちらかに。でもキスもいいわね。邪魔にならないし、ここですぐにできるし」 美和子や島田の言葉に、中嶋はじっと考えこんでしまった。それを見た駿河ナースが「ほらーっ。中嶋さん、困っちゃってるじゃないですかーっ」とぶつぶつ文句をたれた。 駿河ナースは面食らったようであったが、中嶋の反応はまた違ったものだった。中嶋が考えこんでしまったのは、何も彼女たちの目前でキスをしたくないのではない。落ちてくる啓太を抱きとめた瞬間から今にいたるまで、キスをしたか考えていたのだ。 口移しで水は飲ませたが、山でキスをしたかどうか、記憶は限りなく曖昧である。おそらくしていないのに違いない。入院してからはしていない。マッサージをするときに手にキスをすることはあっても、くちびるにはしていなかった。これは断言できる。 中嶋は肩に寄りかからせていた啓太を膝の上に引き上げた。左腕にしっかり抱いた啓太の顔をのぞきこみ、親指の腹でそっと頬を撫で、くちびるを撫でる。すっかり忘れてしまっていた柔らかな感触が、今も変わらずそこにはあった。同窓会に出席するという啓太を実家に送り届けてから2ヶ月あまり。どうしてこのくちびるに触れずに生きてこれたのだろう ―― ? そして中嶋は啓太のくちびるに自分のくちびるを押し当てた。最初はそっと。確かめるように。それを何度か繰り返してから、ゆっくりと啓太のくちびるを押し包む。くちびるも歯列も舌で割り開くのは簡単だった。いや。簡単だというよりはむしろ、啓太の方から迎え入れていると言った方が近い。 啓太も待っていたのだ。そう思った瞬間、中嶋はそれまでのゆっくりとした動作を振り払い、啓太の口中を激しく蹂躙しはじめた。角度を変えては舌を絡めとり、唾液を飲み下し、呼吸まで奪い尽くしていく。それにつれて啓太の体温がじわりと上がり、鼻からは甘えたような声が漏れた。 思い出せ。と、中嶋のくちびるは告げていた。 ここにいるのは俺だ。 おまえを抱いているのは俺の腕だ。 おまえの吐息を奪っているのも俺なのだ、と。 こんなにディープで、そして真剣なキスは、中嶋でさえ記憶にないものだった。それが啓太の中の何かを揺り起こしたのかもしれない。啓太の両腕がわずかに上がり、中嶋のシャツの胸元を掴んだ。 「……啓太?」 気づいた中嶋がシャツを掴む指を、そして啓太の顔を見つめる。 「啓太!」 再度の呼びかけに応えるようにくちびるは動くが声は出ない。だがのぞきこんだ中嶋の顔は、啓太の瞳に映っていた。 何が起きているのか分っていないのだろう。不思議そうな顔で見上げてくる啓太に、中嶋のくちびるがわずかに震えた。そんな中嶋の頬に、啓太がそっと触れる。握っている手は暖かかったのに、頬に触れる指はほんの少し冷たかった。 「啓太…………!」 中嶋の腕が啓太の身体を力の限り抱きしめる。 もうそこには美和子やナースたちはいなかった。 世界には啓太と中嶋のふたりだけしか存在しないのだ。 彼らを包む柔らかな光に、啓太の笑顔がふんわりと溶け込んだ。 誕生日なんて必要ない。 ふたりで共に歩けるのなら、 その毎日が特別な日 ―― |
いずみんから一言。 終ったーっ! 終りましたーーーっ! ずーっとずーっと暖めていたネタを、「そろそろ書けるかもしれない」と思って ためしに@を書いてみたのが去年の3月。 ああ、これならいけるかもと、季節ものを書きつつNシステム等の資料集めを のんびりぼちぼちやっていました。 ところがAの初稿ができたかできなかったかってときにみのりさまのことがあり……。 気がついたら、本格的に書きはじめてからでも1年以上が経っていました。 みのりさまが亡くなられた後、しばらく書く気力のなかった伊住に、温かい励ましや 叱咤激励のメールで続きを促してくださった皆様。 本当に有難うございました。おかげさまで最後まで書き続けることができました。 この場を借りてお礼を申し上げます。 書きはじめたときにあったストーリィは「夏休み明けに学園に戻る啓太を久我沼が 誘拐して山の中に捨てる。それを知った和希が中嶋より一瞬早く久我沼を殴り倒す。 山の中を彷徨った啓太はマックスの声に導かれて崖から落ち、中嶋の腕に抱き とめられる。あとは眠り続けてヒデ誕にキスで目が覚める」という、とても簡単な ものでした。 1年以上。しかも17話まで引っ張るとは、書いた本人さえ思っていません(苦笑)。 わずか30時間ほどの話をそれだけ引っ張ればいろんなことがあります。 真冬に書いていたあたりは「これは夏。外は暑い」と、自分に言い聞かせながら 書いていたのですが、「K点越え」なんていう表現が努力を裏切っていたりします。 きっとテレビでジャンプ競技でも見ながら書いていたのでしょう。 見つけられたら「ああ、ここかあ」と言って笑ってやって下さい。 面倒なので数えたりはしません(笑)が、400字詰め換算で、おそらく400枚前後 くらいはあるのではないかと思います。 ちょっと薄めの文庫本1冊くらいの分量になります。 これをweb上という見難い媒体で最後までお読みくださった方には、本当に感謝 以外の何もありません。有難うございました。 さらにキャラにお名前をお貸しくださった 本条要さま、貴腐人Sさま、美和さま、するがさま にもあらためてお礼を申し上げます。 ヘヴンのオリジナルキャラは、名前から性格付けをしていっているので、皆様の おかげで、キャラたちはとても魅力的な人物になりました。 どうも有難うございました。 第2部は重い話でごめんなさい。 ここまで読まれたら、「その年のはじめに」で啓太くんが実家と没交渉になって しまった理由がお分かりになったかと思います。 そのうち、お口直しの「お仕置き編」を「入門講座シリーズ」の番外編として書いて、 闇鍋に出したいなあとひそかな野望(笑)を抱いております。 そのときはまた、よろしくお願いします。 ああ、そうそう。大事なお願いをひとつ。 どれもこれもむちゃくちゃなご都合主義で書かれています。 各業界の方。ツッコミはナシということで。お願いしますね(笑)。 |
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